転生して美少女エルフとモコモコと異世界行き当たりばったりのチート旅~野菜を育てたり釣りをしたり時には失敗しても楽しんでます~
御峰。
第1話 神様との邂逅
目をつぶっていても真っ暗ではなく、どこか眩しさがあったはずなのに、それが一瞬で消え、どこまでも暗い……闇に飲まれるかのような感覚が俺の体を襲った。
いつかこうなることは知っていたから、前々から受け入れていたはずなのに……悔しいな…………もし来世があるのなら、そのときこそ自由に――――
「――――さん~」
どこからともなく女の人の声が聞こえる。
誰かを……呼んでいるのか?
「――――ジさん~」
「!?」
目をつぶっていて真っ暗だったはずの視界が一気に明るくなり、眩しさに思わず目を閉ざした。
でも嫌な気分はせず、とても晴れやかな気持ちで、どこからともなく吹いてくる優しい風が体に当たっている。
俺は……ずっと病院にいるはず……? 看護師さんが窓を開けたのか? いや、そもそも俺は…………。
「トウジさん~気が付きましたか?」
「なっ!?」
声に思わず反応してしまった。
初めて聞く声。でもどうしてか涙が溢れそうな懐かしい――――母さんに似た声だ。
目を開けると、病室だったはずの景色はなく、壁が全て消え開放的な景色が広がっていた。しかも俺が知っている自然とはまるで違う。
俺の視線が上を向いているのに気付いて正面を見ると――――そこには驚く程に美しい女性がニコッと笑っていた。
透き通る金色に輝く髪は滑らかで優しい風に揺られて、澄んだスカイブルー色の瞳は綺麗な空を思わせる程に美しい。
俺が知っている人やテレビで見た多くの人に、ここまで綺麗な人は見たことがない。
まるで――――アニメにでも出てきそうな綺麗な女性だ。
「初めまして。トウジさん」
「え……えっと…………日本語上手いですね?」
彼女は可愛らしい目を大きく見開いて、また笑みを浮かべた。
「ふふっ。驚くところがそこなんですね? どうやら
「……ええええ!? お、俺……やっぱり死んだのか……そっか…………となると、貴方は神様とかそういう存在ですか?」
「その認識でいいかと思います」
「えっと…………拝む?」
「しなくて大丈夫ですよ~」
神様に無礼を働くのもあれだから拝むべきかなと思ったけど、どうやら彼女はそこまでは必要としないようだ。
「さて、いろいろ話したいことはありますが、残念ながら普通の魂が神界に留まれる時間は短いので、こちらからの一方的なお伝えさせていただきますね?」
「は、はい」
「トウジさんは残念ながら現世で亡くなってしまったんですが……特例として別の世界に生まれ変われることになりました」
特例……? どういう意味なのかちょっと聞いてみたいけど、時間がないと言っていたし、今は聞き続けるしかないか。
「私からは二つの提案をさせていただきます。一つ目はこのまま全てを忘れて魂の輪廻に戻っていただく。文字通りに――――死ぬってことですね。二つ目は地球とはまた違う世界“アルテナ”に生まれ直すことです。この場合、二つ選択になりますが、赤ん坊から生まれ直すか、私がトウジさんのために作る器……と言っても人そのものなんですけど、それに転生することですね。さあ、どれを選びますか?」
まず一番目の選択肢はないな。だって、死は受け入れてはいたけど、できれば死にたくなかった。
まあ……痛いのは嫌だし、自由もなかったから仕方なかった部分も多いから、死を受け入れていたけど、もし自由が保証されるなら転生とやらを受け入れたい。
となると赤ん坊か器かを選ぶか……。
ふと、器という言葉が引っ掛かった。
「その器って、形は好きなように決められるんですか?」
「ええ。トウジさんがこういう姿になりたいと願うのなら」
「なら俺が若かった頃でもいいですか?」
「ええ。できますが……トウジさんのままでよろしいのでしょうか? 望めば、トウジさんが知っているアイドルの体を再現することもできますよ?」
「あはは……それはとても魅力的な提案ですが……俺はやっぱり自分の体がいいです。お願いします」
「わかりました。ではそれを鑑みてトウジさんの若い頃の体に致します。では次の件ですが、ここが一番大事です。今からトウジさんが転生する世界には地球とは違う魔法やスキルというものがあります」
「魔法!?」
「ふふっ。それらに転生ボーナスを与えることができるのですが、何か欲しい力はありますか? あまり時間がないので考える時間も少ないですが……」
「えっと……どうしよう…………それって何か魔王とかを倒さないといけないんですか?」
「いえ? もしそういうことがしたいのなら強くなる能力もいいと思いますよ~一応魔王とかもいるので、魔王討伐を目指してもいいと思います!」
「いや……そういうのがしたいわけじゃないので……」
「う~ん。なら生活に便利な魔法とかはどうですか?」
「それはちょっと欲しいんですけど……それってどんな力でもいいんですか?」
「どこまでも強くできるわけじゃないんですが、幅はかなり広いと思ってくれていいと思います」
「広い幅……なら! 俺……昔からやりたいことがありまして! 農業をしてみたいんです!」
「農業ですか~いいですね! 美味しい野菜とか育てて食べるとかもいいと思いますよ~」
「そうなんです! ……でも…………」
「でも?」
「……せっかく異世界に行くなら自由に回りたいなって思って。病気で数年を病院で過ごして……歩くのがあんなに楽しかったんだなって知ったんですよね。農業をするとなると同じ場所にいないといけないから……」
「確かにそれはそうですね。う~ん」
「自由に旅ができる体とか能力の方が……いいのかな……」
「それは簡単です。でもそれでいいんですか? 農業とかしてみたいんじゃないんですか?」
「し、したい……」
「ふふっ。こういうときはもっとわがままになっていいと思いますよ~でも難しいですね。世界を見て歩き回りたいと、作物を育てるは…………あ!」
何かを閃いたのは、人差し指を立てる神様。
「なら私にとってもいい提案があります~旅しながら農作業もしたい。できると思います!」
「ならぜひそれをお願いします!」
「わかりました。ただ、強すぎる力にはデメリットも付けないといけないルールでして。万能な力を与えますが何でもはできない、そんな感じの調整をさせていただきますね」
「はい。わかりました」
「では転生をさせる前に――――一つだけ聞いて良いですか?」
「はい」
「どうして赤ん坊からではなく人形を選んだのですか?」
「それは…………理由は二つあって……母さんが生んでくれた体で……もっと楽しく生きれば良かったなって後悔していたんです。母さんは幼い頃に行方不明になって……俺がいつもしかめっ面をしていたから愛想をつかしたのかなって。ですから常に笑って生きたかったな……って、病気になって思ってしまいました。あはは……」
「そんなことが……ではもう一つの理由は?」
「えっと……赤ん坊から生まれ直すと、元々生まれるはずだった赤ん坊の命を奪うことになりそうでしたから……」
「あら、それは心配せずとも、死産になってしまう赤ん坊に生まれることもできたんですが……」
「あはは……それにわがままかもしれませんが、今すぐ歩きたいなって。わがままが勝ってしまったんです」
「ふふっ。そういうことにしておきます。はい。トウジさん。貴方は新しい世界“アルテナ”で新しい人生を好きなように歩んでください。貴方がやりたいこと、誰に遠慮なんてせず、好きなように生きてください」
「はいっ! 神様。ありがとうございました!」
彼女のとびっきりの笑顔を最後に、意識が遠のいた。
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