第41話 アリバイ
だからまず太陽さんは私達と情報をまとめることにした。
被害者の私と結城君に、犯行を起こす理由のない太陽さん。
まだ犯人ではない確証がないふらみんさん、クロさん、青柳さんにはまだ事情を明かす事はできない。
「それならクロさんも犯人じゃないと思うんだけど。僕らと同時に帰省していたし」
「帰省したからといってクロがちゃんと家に帰って学校に登校したという証拠はないよ」
そうだった。つい結城君はクロさんを弁護したけど、学業は捨てているというクロさんが真面目に家に帰り登校日に登校するとは限らない。家に帰ったフリをして別荘に戻ってきて盗みを働くこともあり得る……けど、
「クロさんはあのクロッキー帳が結城君のものだと知ってますよ。実際に見て書き込んだので」
「あぁ。でもスタッフと組んでいた場合は? その可能性を疑ってればきりないよ」
太陽さんは冷静に指摘する。それもそうだ。なにせクリスタル探しで得られる報酬は大きい。スタッフと手を組んで山分けにしたほうが確実だ。
「とりあえずやらせで答えを知っていると思い込まれているhikariちゃんはこれからの行動に警戒して欲しい。最悪の展開になるかもしれないからなるべく3人で行動しよう」
最悪。それは私を脅してでもクリスタルの答えを知ろうとするものがいるかもしれないということ。改めてとんでもないことに巻き込まれてしまったんだと実感する。
信用できるのはすでにクリスタルを見つけ辞退した太陽さんと、とても犯人らしい器用さを持てそうにない結城君。共犯も考えたらこの二人だって犯人かもしれないけれど、さすがにこの二人だけは疑いたくない。
「念の為言っとくと、青柳さんはアリバイはあるよ。今日は俺からさりげなくクリスタルを聞き出そうとしてお酒飲ませようとしてきたから、hikariちゃんの部屋に盗みに入る時間はなかった」
「あ……」
「ふらみんちゃんはどうかな。でもあの人ならいつでもhikariちゃんの部屋に入り込めそうだし、帰省日を狙わなくたってもっとうまく盗めると思う」
青柳さんはアリバイがあるし、ふらみんさんは普段からよく私の部屋に遊びに来てたからあそこまで荒らす必要はない。だから二人も違うと思うけど、さっき言われたようにスタッフと組んでいる可能性もあるから簡単には判断できない。
「で、どうしよう。警察に通報する?」
「え?」
「泥棒と盗聴。これはもう立派な事件だと思う。安全安心のために通報してもいいよ。番組はしたがらないだろうけど、直接被害にあっているのは二人だし、二人が決めた事には俺も全力で賛成する」
冷静に太陽さんは尋ねる。
部屋に入られた私と、預けたクロッキー帳を盗まれた結城君。事件の被害者だ。そしてこれからもっとひどい目に合うかもしれない。
「だったら怖い目にあったhikariさんの意見を尊重すべきだと思う。僕は……何かあって後で後悔したくないから通報したいけど」
私を気遣うような結城君の答え。
ありがたいけど、私の答えは決まっている。
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