第7話 陸の孤島
普通、私達素人に対して『テレビに出させてやってるんだからありがたく思え!』と言うようなテレビ関係者も少なくない。とくにリアリティーショーだと物語を作るために悪役を決めて煽ったりする、なんて怖い話もあるほどなのに。まさか個人的な外出にも気を使ってくれてるとは。
このあたりは別荘地で人の気配はわりとある。バスに乗るか、かなり歩けば栄えた街もある。なのに絶対に送るというのは手厚すぎる。
「念の為、です。もちろんバスも利用できますが頻繁に来るわけではないし、その間迷ったり不審者に出くわす可能性があります。まず安全のため、スタッフに声をかけてから行動して下さい」
宇野さんはとても誠実に答えた。
……本当にこれはリアリティーショーかと思うくらいに手厚かった。まぁ、世界のリアリティーショーだとこれくらい普通らしいし、私達未成年もいる。送迎くらいはするだろう。
「プライバシーを切り売りするんだもん。トラブルは尽きないし、そういう時に一番に叩かれるのはスポンサーだしね。スポンサーのためにちゃんとしてるのかも」
ふらみんさんも私と同じ事を考えていたらしい。私以外には聞こえないよう小声でつぶやいた。
「なんつーか、これが推理小説なら殺人事件でも起きそうだな」
「ある意味陸の孤島で、スタッフの証言さえなんとかすれば……だものね」
クロさんが不吉な事を言って、青柳さんがさらに不吉な事を言う。
「俺はゾンビモノが好きー」
別の意味で不吉な事を太陽さんが言った。確かにこんな立派な別荘、ミステリーかゾンビ映画でしか見たことがない。そうなると思ってしまう。何か事件が起きるのでは、と。
■■■
今日の夕食はやたら広い庭で親睦会代わりにバーベキュー。
スタッフ出演者が入り混じり、お肉を焼いたり食べたりとしている。
太陽さんはアウトドアに強いのかテキパキコンロや火をつけたりするし、青柳さんは意外に料理が得意で下ごしらえを手伝っている。ふらみんさんはこの場にいる全員がちゃんと飲み食いできているかを気配りしながら会話し写真を撮っている。
私も色んな所でこまごましたことを手伝ったり、父と一緒に仕事をした事があるスタッフさんと話をしたりした。クロさんはやせてるからって山盛りにされた肉野菜と格闘している。
結城君は……よりにもよって庭の外れにある洋風の東屋で一人でぽつんとしていた。薄暗くなった山や楽しげな皆を眺めているといえば聞こえはいいけれど、つまりはぼっちだ。
「hikariちゃん。これ、結城君に持ってってくれる?」
そうなるとふらみんさんは絶対に気付くしなんとかする。ペットボトルのジュースを二本私に差し出した。私はそれを受け取る。
「お願い。彼、今みたいに孤立しちゃうと番組的にまずいの。同じ高校生ってかんじで話しかけてきてくれない?」
「いいですけど、一人なのってそんなまずいですか?」
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