第5話 佐藤と名乗る人物
「いやいやそんなはずないよ!だって昨日はずっと病院だし、リハビリして、少し検査してって日だったもん」
「あーあれ??そうなの?」
「でも昨日私の家の方の駅ビルで見かけたような・・・?」
「それ本当にわたしだったの?(笑)」
「いや〜話しかけてないから・・・だけど、友春さんと思ったんだけどな」
「・・・昨日は病院だし、まだ外出られないもん」
「まぁ遠くから見かけただけだったし、見間違いだったかも!変な事言ってごめんね!」
「あっ・・・うん、、、」
「それよりどうしたん!?」
「あー、、、えっとね・・・・・」
清乃としては不安解消の為連絡をしたのに一つ増えた気がする。
それでもさっきあった事を話した。
・・・
「うーん、、私は全然違う所に住んでいるってのが前提だけど、そんな部署は聞いた事ないし、もちろん無いよ」
「やっぱりそうだよね、、、」
「私も人生で一回も聞いた事ないし。。。」
「これってなんか詐欺かなんかなのかな」
「うーん、、そう思っちゃうよね・・」
「でも、わざわざ病室に来るって・・ね??」
「そうなの。。。」
「一応名刺にはxx市って書かれてるし、本物っぽい感じもするし」
「したらさ、実際に市役所に電話してみたら!?」
「その課で名刺に書かれている担当者と話したいからって」
「あ〜!そうね!!すごいシンプルに解決できるわ(笑)」
「そうそう(笑)それで本物かわかるじゃん!!」
「さすがあやのん!!!」
「ふふふ(笑)冷静に考えるとわかるけどさ!」
「まっそんなところもきよのんらしいよ(笑)」
「・・・はい(笑)昔からそうでした」
「あはは(笑)気にしない気にしない!」
昔から変わらないあやのとの会話。
こんなのがずっとある繋がりって嬉しいなって。
それからは全く関係ない話を電話しても大丈夫な時間目一杯まで話した。
高校生の時みたいに永遠話せるって思うし、実際に話せてしまう。
と、気がつけば夕食を迎える時間。
「あや!今日は本当にありがとうね!」
「やっぱりあやのんだなって」
「私こそだよ!またゆる〜く話そうね」
「うん!」
「その時、できれば、退院できてるといいね!!」
「だね〜!退院できるように頑張る!!」
「こらこら、頑張りすぎないように〜!(笑)」
「えっはーい(笑)」
「じゃまたね〜!」
「は〜い!!」
プツンっ……
電話が終わり病室に向かうと、すでに夕食が並べられていた。
心の中で、いなくてすいません。。。と。
そう思いながらもうこんな時間だし、市役所へは明日にと考え夕食を食べ眠りについた。
・・・
・・
・
とても寝苦しい….
夏でもないのに、苦しい・・・
「…うぅ」
ゆっくりと目を開けると、辺りは真っ暗。
また同じ夢の中のようだ。
「えっ、、、また・・・」
気がつくと清乃の前方、少し前に友春の後ろ姿が見える。
しかも友春だけでなく女性が真横に立っている。
前回見た時は、初め友春だけだったのに、今回は2人で立っている。
女性の顔は見えない。
でも、男性は確かに友春だ。
「トモくん!!」
呼びかけても声が出せていない。
体も動かない。
「ねぇトモくん!!」
なにも聞こえない2人は歩き始めた。
しかも、恋人繋ぎをして。
これも前回とは違った。
「なんで。。。なんでよ〜!!」
「トモくん!私はここだよ!!!」
虚しく叫び続けても、聞こえない。
2人はどんどん前に進み、そして消えてった・・・
・
・・
・・・
「清乃さん〜清乃さん〜!!」
再びゆっくりと目を開ける。
名前を呼んでいたのは看護婦さんだった。
「んっ,,,,,,」
「おはようございます〜朝の健診の時間ですよ〜!」
「あっ・・・おはようございます・・・」
「なんかうなされていましたけど、大丈夫ですか??」
「あっ・・・」
「多分??」
眠い目を擦ると、涙の後があった。
あくびのものではない。
「あっ・・・」
「もしかして、悪い夢を見たんですかね〜」
そう言いながら体温計を渡された。
ピピっ…
「そ、そうなんですかね・・・覚えてないです」
「夢って覚えてないですよね!!でもなんかすごい夢を見てた気がする感じもあったりで」
「はい・・・」
ピピピっ…ピピピっ…
「あっ終わりましたね〜」
「はい」
「あーと、、、37.7°・・・」
「熱ありますね」
「このところずっとなかったのに、もしかしたら悪夢は熱のせいかもですね」
「うーん・・・」
「この後、氷枕持ってきますから待っててくださいね」
それから高熱が続いてしまった。
風邪でもないはずだから、ストレス??って思ったけど原因は分からない。
そんなこともあって、体調が少し戻ったのち、市役所への電話したのは数日後。
プルルルル,,,,プルルルル,,,,ガチャ
「はい、こちらxx市役所の総合窓口の田口と申します」
「あっあの〜!」
「ちょっとお伺いしたいことがありましてお電話しました」
「はい、なんでしょうか?」
「実は先日、あっ今私病院に入院しているのですが、市役所の方がわざわざご挨拶にきてくださいまして」
「・・・はぁ」
「でその時、佐藤と名乗る方からお名刺をいただきまして、その件で聞きたいことがあります」
「…はい」
「そのお名刺にですね、女性を支援する課とありまして、その部署にいる佐藤さんとお話がしたいのですが、ご在席でしょうか?」
「・・・はい、少々お待ちくださいませ」
なんとも歯切れの悪い返答に、すごい接客態度の悪い人だなって。
でも、病室に来た人と話がしたくて、お願いした。
待つ事数分・・・
「あっもしもし〜」
「は、はい!」
「大変お待たせしました」
「一点確認ですが、女性を支援する課という部署名でお間違いないでしょうか?」
「えっ・・・ちょっと待ってください」
そう言うと、渡された名刺を取り出し確認した。
「あっはい!そうです!女性を支援する課の佐藤さんです」
「なるほど・・・」
「えっとですね、xx市役所に佐藤が苗字の者は3名おりますが、それぞれ部署が異なりました」
「また、お聞きした女性を支援する課ですが、xx市役所にそのような部署はないのですが、お間違いないでしょうか?」
歯切れの悪い対応も、これが原因だったようだ。
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