第37話 魔銃士、初めてのダンジョン踏破に挑む・1
各々が装備や道具などの準備を終え、冒険者ギルド前に集合した。
獅子王の瞳メンバーである
「よし、まずはお前さんたちに警告しておく。決して単独行動をするでない。あのダンジョンマスターは狡猾な罠を張り巡らせておる。複数行動をしていても分断される可能性は否定できん。だから弱点を補い合える相手と出来るだけ組んで行動するように」
俺はチラとメンバーを見遣る。何というか、圧倒的に前衛系が多くね? エドと俺くらいしか攻撃魔法を使える者がいない。ルチアは俺以外と行動するなどあり得ないし、マティアスとエドは不仲っぽいから結局、それぞれのパーティーごとに移動することになりそうだ。そのことに脳筋のダミアンも気付いたらしく、ヴィゴさんに食ってかかった。
「そんなこと言ったって俺たちに攻撃魔法を使える人間はいないぜ。あっちには魔法戦士に異世界渡りの
「だから準備をしっかりしておけと言ったはずじゃ。
「いや、そんなことはねぇけどよ……」
決まり悪そうに相棒のマティアスと顔を合わせている。カミラはつまらなそうに顔を背け、悲しそうな目でアガサを見つめる。だがアガサはその視線を黙殺し、もう袂は別ったのだという態度を崩さない。諦めたようにカミラは小さく息を吐き、毅然とした態度でヴィゴさんを見る。
「くれぐれも油断するでない。例え分断されたとしても己の力量以上の敵が現れたら迷わず逃げよ。恥じることではない、命あっての物種だからな」
ヴィゴさん以外は全員、ダンジョン踏破は初めてだ。何人生き残るかは判らないが、ケルアイユ辺境伯爵は地方領主として、とても立派な人物だった。わずかな日数しか一緒に過ごさなかったが、使用人にも決して尊大な態度を取らなかった。どことなく前の世界で俺を育て上げてくれた教官に雰囲気が似ていて、好感を持てたんだよな。
そんなことを考えながら俺たちは辻馬車に乗り、果樹園の入り口まで着いた。ダンジョンが誕生したことにより付近の住民はケルアイユ伯爵が用意した仮設住宅へ避難している。住民が一日でも早く元の生活に戻れるよう、俺たちが出来ることを迅速に確実にやらねば。命を賭けてでも。
ダンジョンの入り口は、果樹園の中央にそびえる太い立派な樹木の根元にあった。巨大な穴が開いていているわりには
「みんな覚えておけ。例外はあるがダンジョンの入り口付近には
そう言ってヴィゴさんはカミラに視線を送る。彼女は頷くと何か神聖魔法の呪文を唱えながら空中に指で描く。複雑に指を動かしていたと思ったら、大きく手を広げそのまま地面に何かを降ろすような仕草をした。
「おぉ、すげ」
ダミアンが思わず声をあげている。白金色に輝く魔法陣が地面に刻み込まれ、鼓動のように明滅している。
「みんな、手を出して。できたらパーティーの紋章が刻まれていない側の掌を」
カミラの台詞に皆が右手を出す。すると彼女はメンバー全員の掌に魔法陣のミニチュア版を描いた。
「脱出時は
真剣な面持ちに皆も頷く。
「では潜るぞ。みんな、生きて
ヴィゴさんを先頭に獅子王の瞳メンバーが続く。大型犬サイズに縮んだルチアと俺が
――ソー、低レベルの
――判ってるよ、ルチア。
俺とルチアは分断されても、主従契約特典で瞬時に俺の元にルチアが戻ってこれる。ルチアの
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