第25話 魔銃士、領主の暗殺未遂事件に巻き込まれる・5
俺はわざとエイミーから距離を置き、彼女が持つ
「そういえば初めまして、だよなエイミーとは。俺はソーだ、カミラと入れ違いに銀の翼メンバーになった」
ここで言葉を切ると、わざと見せつけるように魔銃をホルスターから抜く。くるくるとシリンダーを回すと、エイミーが短く息を呑む気配が伝わった。
「見ての通り、異世界からの転移者だ。あんたも冒険者ギルドに関わる者ならば、この魔銃を俺が持っている意味が判るよな?」
「この目で見るのは初めてですが、伝承通り転移者は魔銃を装備できるのですね」
「カミラさんが昨夜の泥棒騒ぎにはいっさい加担していないと断言できる。何故ならば昨夜俺は眠れなくてね、宿を抜け出して街を散歩してたんだ」
念話でルチアに準備を促しておく。そして俺は昨夜この目で見たことを全て偽りなく話す。俺が二回も見たカミラの姿。そしてその矛盾点を。
「カミラさんは帰り道でランタンを使用していた。暫くして戻ってきたら魔道灯の灯りが届かない闇夜の中を、灯りを手にせず歩いていた。これが意味するところは何か。カミラさんは二人いたということだ。しかも戻ってきたカミラさんそっくりに変装した人物は夜目が利く。そんな
俺の合図と共にルチアは麻痺の咆哮を上げる。もちろん無関係の人たちは俺の長口上の間に結界で包んである。得意の早撃ちで、エイミーに向かって闇魔法を放った。
「ぎゃあああっ!」
闇魔法は毒や腐食といった生物に害を為すものも含まれる。一般的な毒だと面白くないので、俺は塩酸をイメージしてエイミーの顔目がけて発砲した。異世界人しか扱えない魔銃の魔法は、イメージでその効果が変わる。ということは、この世界に存在しない化学物質も使い手のイメージ次第では具現出来る。
「エイミー、あんたが昨夜カミラさんに変装してアーサー氏だっけ? 金持ちの家に入って盗んだ犯人だ。違うか? 否定しても俺には証言者がいるんだよ。外見を誤魔化しても無駄な、動かしようのない証拠を持つ証人が」
『昨夜に嗅いだ女たちの匂いは明らかに違った。最初の匂いは鉄格子の中にいる少女と同じ、戻ってきた匂いはそこで苦しんでいる女と同じものだ』
「フェ、フェンリル!? あなたは神獣フェンリルと契約した転移者なのか!」
不可視の結界を解除し姿を現したルチアを見て、ギルドマスターのウォーレンが叫ぶ。その気高い姿に圧倒されたウォーレン、ブライアン、エイミーが身体を震わせている。特にエイミーは顔を灼く塩酸の痛みも相まって、今にも失神しそうなほど怯えきっている。
『我は昨夜、主とともに夜の街を歩いていた。その際にしっかりと匂いの違いを認識したぞ。いくら外見を他人に真似たところで、本来持っている匂いまでは変えられぬ』
そうなんだ。昨夜ルチアが俺に語りかけてきたのが「あの子違う別人だ」だった。ルチアは匂いで、俺は灯りの有無で別人と判断した。この地下牢に来てからずっと念話で答え合わせをしてきたからな。アーサー氏の家からランタンを持って帰ったのが本物のカミラ。灯りを持たずにやってきたのが、泥棒目的でカミラに変装したエイミー。
まだルチアの麻痺が効いているので、尋問といきますか。聖魔法を放てる白に合わせ、会話には困らない程度に治癒しておく。完治? しないよ。爛れた痕をしっかりと残し、二度と他人に変装できないようにしておく。エイミーは美人だから顔を破壊されて尊厳を傷つけられただろう。泥棒した挙げ句、その罪を他人になすりつけようとしたんだ。一生消えない罪科を背負って生きるがいい。
「ギルドマスター、副ギルドマスター。尋問はあんたたちの役目だ、仲間が多分いると思う。それに山賊たちといいこの泥棒騒ぎといい、妙にこのトレースの都がきな臭いな。何か繋がっているかもしれないから、その辺も厳しく調べてくれ」
「わ、判った」
俺は超大型犬サイズに縮んだルチアの頭を撫でる。褒めて、って念話が来たからな。あーもう可愛いなこの甘えっ子め、存分にもふもふするぞー。でへへ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます