第24話 魔銃士、領主の暗殺未遂事件に巻き込まれる・4
薄暗い地下室に二十代後半の女性が立っている。手には
「おや暗いですね、灯りくらい点けたら如何ですか」
ギルドマスターであるウォーレンが呆れたように呟くと、魔法で地下牢全体を明るく照らし出した。明るくなると地下牢の全貌が見える。薄汚い壁も床もこれぞ不衛生と言わんばかりに汚れており、元聖女候補のカミラには耐えがたいだろうな。いや彼女じゃなくても人間の尊厳を無視する環境に、反吐が出そうだ。
「エイミー、銀の翼メンバーを連れてきました」
「お疲れさまです。彼女、容疑は否定していますが」
「当たり前でしょう? わたくしは泥棒なんてしていませんわ! 昨夜あの場にいたのはアーサーさんの家に用事があったからですわ。用向きが終わって新しいパーティーメンバーの待つ宿屋へ向かうところを見られたに過ぎませんわ!」
やつれているように見えたが訂正だ。実に元気よく噛み付いてくる。これだけ元気があれば心配することはないかな。まぁまだ十代の女の子だ、嫌疑を掛けられて心細かったこともあるんだろう。
「第一、何で抜けた銀の翼メンバーが来るんですの? 今のわたくしは「獅子王の瞳」に所属しているのよ、呼ぶなら彼らじゃなくって?」
「付き合いの長い銀の翼メンバーの方が、あなたの性格や行動基準をよくご存知かと思いまして、わざわざご足労願った次第です。――みなさまはカミラさんがそんなことをする訳がないって主張されていますが」
「と、当然ですわ! わたくしは信仰に背くようなことに手を染めたりはしませんのよ!」
エドたちが主張するように、信仰心の篤さは本物のようだ。俺から見てもカミラが嘘を言っているようにはみえない。だとすると、目撃者の言い分とやらも聞かないと不公平だ。
「で、目撃者のアンタは何が根拠でカミラを泥棒と決めつけたんだ?」
偉そうに
「わたしがこのカミラを真夜中に目撃したからです。アーサー氏の家の前で佇む姿を。この特徴的なピンク髪は冒険者の中ではカミラだけですので、間違いありません」
「ふーん、さすが受付嬢だな。このトレースの都を訪れる幾人もの冒険者たちの特徴を全て覚えているのかい?」
「す、少なくともわたしが受付を担当してからは、ピンク髪の後衛職の方はカミラだけです」
「ちょっとあなた! さっきから黙って聞いていれば何ですの? わたくしのことを呼び捨てにして! わたくしを呼び捨てにして良いのは両親と気心の知れた銀の翼メンバーだけですのよ!」
「……あーちょっとカミラさん、申し訳ないけれど黙っていてくれないかな。俺が今から君の無実を証明するから」
ヒステリックに喚く声に耐えきれず、思わずこめかみを押さえながら低い声で牽制する。そこでようやく俺の存在をはっきりと認識したんだろうな、カミラは自分を助けてくれた恩人であると同時にパーティーから抜ける原因である
「結論から述べる。カミラさんは犯人じゃない――あぁ黙っていて。全部説明するからさ」
また喚きだそうとしたカミラを制し、俺はさりげなく右腰のホルスターに手を伸ばしいつでも魔銃を抜けるようにしておく。頼もしい相棒に念話で確認をすれば、思った通りの返答がきた。さて、昨夜の答え合わせをして真の犯罪者を炙り出すとするか。
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