オタクに優しいギャルなんて学校に存在しません！～だけど学校のギャルに勉強を教える先生に任命されました

第10話 黒髪の清楚の皮を被ったギャルなんて存在しない！

　俺は今修羅場というものを経験している。

　冬島が困惑した様子で、俺と桜ヶ丘のことを交互に見る。

「あれー？　ミーじゃんどしたんこんなところで」

「ちょ、ちょっとだるいってその感じ……」

「え、何がだるいんだし！　ミーおかしいよ」

「いや、桜ヶ丘この状況だと俺たち二人の方がおかしいから」

　俺は冬島と同じ意見だった。

　というか、もしこの状況になった場合、みんなそう答えるのではないかと考える。

「なんでだし」

「いや、放課後二人きりの教室ってなにかないといないでしょ、しかも相手が相手だし……」

「相手がって、オタのこと？」

「うん、ハッキリ言って、なんでこの二人が絡みあるのかわからない」

　冬島ははっきりとそしてバッサリと言った。

　それは遠回しに、釣り合っていない、絡む相手を間違えているそう言っているように思えた。

（うん、冬島、俺もそう思う、桜ヶ丘とかは俺みたいな陰キャとか絡む相手間違ってるだろとか普通に思ってる）

「あんさぁ、ミー？　アタシが好きで一緒にいるの、他の人に色々言われたくない」

「う、うちはサリーのことを思って」

「アタシのことを思ってるなら、そのまま見守っておいてよ」

「――――ッ」

　桜ヶ丘のその言葉に、冬島は動けなくなっていた。

　友達にも容赦ないなぁ……そう思った。

「それに変な事なんてしてないし、ただ勉強教えてもらってるだけだし」

「べ、勉強……、そっか、それで」

「サリーはアタシの親友だけど、オタも最近アタシの友達になったから、悪く言われるのはちょっと嫌」

「ごめん、サリー」

　軽く触発があると思ったが、あっさりと冬島が謝ってなんと場が収まった。

「嫌わないで」

「ミーはうちの親友なんだから嫌いになるわけないっしょ！　何言ってんの！」

「うん、ありがと……うちも嫌いならない」

「ありがとー」

　そんな会話を隣で聞かされる俺のこの気まずさを誰かわかってくれ。

　というか、冬島は桜ヶ丘のことが大好きなんだな。

　あれくらいのこと別に謝らなくてもいいんじゃないかと思うし、桜ヶ丘に嫌われるビジョンが見えない。

「あ、よかったらミーも勉強してったら？」

「え？　勉強？」

「うん、テスト前だし！」

「サリーと一緒にできるのはいいけど……」

　チラッと俺のことを見られる。

　すんません……勉強を教えているのが俺なんかで。

（先生役がこいつかよ……って目をしてるなぁ）

「オタの教え方めっちゃ上手なんだよ！」

「そうなの？」

「うん！　めちゃうまで激やばって感じ」

「そうなんだ……」

　桜ヶ丘からの話を聞いた冬島は俺のことを見て、顔をくしゃっとしている。

（めちゃくちゃ嫌そうな顔してるな）

「まぁいいよ、ミーがやらなくても二人でやるから」

「――――え」

「二人っきりで、お勉強会するから」

　わざと、桜ヶ丘は冬島を煽るような口調で話す。

　それを聞いて、ぷるぷると震えている冬島。

「ごめん、二人きりは聞き捨てならない」

　そういって、準備室の中へと入ってくる。

　ボスンっと勢いよく、バッグを置き、椅子に座る。

「あ、アタシトイレに行こうとしてたんだった！　ちょ、マジ漏れるっ」

　そう言って、桜ヶ丘は準備室から出て行く。

　ちょっと待て、なんでこの状況で俺と冬島を二人きりにさせたんだ……。

（ただただ、気まずいだろうが……！）

　しかも俺の勘違いじゃなければ、俺のことをめっちゃ見てくるし……。

　見てくるというよりも、睨まれているという表現のほうが正しい。

「一人増えてもいい？　勉強会」

「あ、別にそれはいいけど」

「ん、あっそ、あんがと」

「…………」

　せっかくのギャルグループには珍しい黒髪なのに……。

　黒髪ロングなのに、清楚キャラではない。

　端から見たら清楚な優等生って感じなのに……。

（これはアレだ、清楚の皮を被ったギャルだ……）

　なんで俺の二人目の生徒もギャルなんだよ。

　俺は心の中で叫びたかった。