はらぺこ天使はあなたの願いを叶えたい
小糸 こはく
第1話 天使にシュークリームを
あなたは仕事を終え、ひとり暮らしのワンルームアパートに帰宅
ガチャ(アパートのドアの鍵を開ける音)
次いでドアを開閉する音
右手にバスルーム、左手にトイレとキッチンが並ぶ短い廊下を進み、8帖の洋間に
そこには、肌の色が透けて見えるほど薄い素材のワンピースを着た、中学生ほどの見知らぬ少女が座っている
彼女は立ちあがって数歩の距離を詰めると、驚くあなたの前へ
「はじめまして、天使です。あっ、わかりますよね、天使のわがついていますから」
確かに少女の頭の上に、光の
天使は愛らしい容姿で、アニメの美少女キャラクターのような可愛らしい声をしていた
「勝手に家に上がったのはあやまります。ごめんなさい。でも天使なので許されます。
「
「そうですか、しっていますか。でしたらわかりますね、天使は人類の
「あっ、自己紹介が遅れました。3033ロット型天使第7117号、セイナともうします。あなたの願いを叶えるため、人界に
「あなたは、大天使さまの加護をえられた幸運な人類です。おめでとうございます、では願いをどうぞ!」
「………………ん? どうぞ?」
あなたの願いは、天使に叶えられない
あなたはそれを知っている
「はい? ない、ですか? 願いがないのですか!?」
「違う? 願いはあるけど、天使に叶えてもらえるような願いじゃない……ですか?」
「え? あ、はい。それはそうですけど、あなたくわしいですね。そうです、世界平和とか人類救済とかそういうのはなしですし、お金もダメです。それは働いて
「じゃあ、なにができるのか? ですか」
「……人界研修をしてきた同ロット型の天使は、スーパーのレジ打ち? を、がんばったと言っていました。なのでセイナにも、そういうのができます!」
「ちょっ、ため息なんて、あなた失礼ですね! それは失望を表す人類のジャスチャーです。しっています!」
ぐうぅ~(天使のお腹がなる音)
「あうぅ~……お、おなか、すきました。実はセイナ、人界にきてこの部屋であなたを待つこと7時間になるのですが、その
「はい、天使もお腹がすきます。天使は肉体構造的に、人類とあまりかわらないのです。天界でもご飯を食べています」
「家にお腹をすかせた天使がいるとは思わないから、ご飯は外で食べてきた?」
あなたは冷蔵庫の前に移動する
ガチャ(冷蔵庫を開ける音)
冷蔵庫から袋に入ったシュークリームを取り出し、冷蔵庫を閉める
「今はこれしかない?」
買い置きのシュークリームを、天使に手渡す
「なんですかこれ? シュークリーム? はぁ……お、お菓子ですか! それはなんと
「え? セレブじゃなくてもお菓子は買える? そ、それは……人界とはそういうシステムなのですか!?」
ガサ(シュークリームの袋を開ける音)
もぐっと、天使がシュークリームに口をつける
「はわっ! お、おいしいです!」
もしゃもしゃ(シュークリームを食べる音)
ガサガサ(包みのビニールの音)
「こ、これは、もぐもぐ……あま~い! 甘いですよこれ!? 大丈夫ですか!? 罪になりませんか? もぐもぐっ、こんな甘いもの、凶悪犯罪に当たりませんかあぁ~っ!?」
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