この惑星、生体反応あり。
加賀倉 創作
第1話『その惑星に期待あり』
——そう遠くない未来。
天文学者であり実業家の
「なんだ、あの美しい光沢を持った星は。近くにある恒星からの光の作用だろうか、半透明な乳白色を基調としているが、桃色や、緑色の干渉色も見られるな。まるで、シャボン玉のようだ。少々いびつなのが、気にはなるが」
堀田哲也は、瞬く間にその星に魅了された。
「そうだ、大気組成も見てみようか。分光観測モードに切り替えてっと。よし、これであの惑星のスペクトルデータが得られるぞ」
手元のディスプレイには、上下にジグザグとした折れ線グラフが、FX投資家がよく使うラインチャートのように、徐々に伸びていく。
「窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素。この吸収線のパターンは……」
惑星には、直ちに無人探査機が派遣された。探査機は、地表の土のサンプルを地球に持ち帰ることに成功した。堀田哲也は、子供のように目を輝かせながら、サンプルを分析した。
「これは炭酸カルシウム! なるほど、有機化合物ときたか。おまけに、窒素・リン・カリウムが豊富に含まれているな。どんな農学者に見せても、この土の故郷は、作物の育つ肥沃な土地だと断言するはず。そして
その分析結果は、その惑星には生物が存在する可能性が極めて高い、ということを意味した。
子煩悩な父親である堀田哲也は、つい先日成人を迎えた一人息子の
「で、哲夫よ、あの惑星を、どうするつもりなのか、聞かせてくれないか。もちろんお前は私の自慢の一人息子だが、あの惑星もまた私が見出した存在。我が子のように、愛しくてな」
「なんだい父さん、あの星を僕の妹にでもするつもりかい? でも、心配しないで。家族のように、とまでは言わないまでも、大切にはするつもりだよ」
「大切に、と言うと?」
「そうだなぁ、例えるなら、妹の身体検査だね。異常がないか、確認するんだ」
「つまりは……惑星探査に行きたい、ということか」
「さすが、察しがいいね。そうだ、ちょうどよかった。そういうわけで、惑星までの足が必要になるんだけど」
哲也は、息子の頼みを二つ返事で受け入れた。
かくして哲夫は、恒星間航行に耐えうる大型の宇宙船と、そこに積載可能な小型探査船を得た。
〈第2話『たからもの』へ続く〉
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