第21話 生徒会定例会(1)

 ***


「生徒会定例会を始めます」

 書記の笠取かさとりかえでが几帳面そうな声で会議の開始を告げる。

「部活動に関しては特記事項はありません。通常の運動部は秋の大会を目標に練習を強化、文化系の部活も学園際に向けた活性化が見られます。ただ、ダンジョン内の部活動につきましては全体に低調です。生徒のダンジョン利用数も夏休み明けから伸び悩んでおり、一学期の七割に届かない状況です」

「夏休み明けのダンジョン利用者減少は毎年の傾向だろう」

「だよねー。このままだとどんどん寂れて、そのうちお化け屋敷みたいになったりして」

「それは困る。我らの代で廃れたとあっては先達に申し開きが立たん。生徒会として、このまま座視するわけにはゆかぬな」

「何らかの、てこ入れ策を考える必要がありますね」

「はいはーい、お祭りがいいと思いまーす。学園祭とか体育祭みたいなイベントで盛り上がればここも賑わうでしょ?」

「だが、盛り上げるためには目標となる褒賞が必要だろう。名誉か宝か、いずれにしても今のダンジョンにはめぼしいものが見当たらないのが実情だ」

「そーなんだよねー。ない袖は振れないかー。会長、いっそ伝家の宝刀を景品にだすってのはどう?」

「何を馬鹿な。フレイムカリバーは生徒会の象徴であり、このダンジョンの存在意義ともいえる神器だぞっ」

「まあまあ、唐金からかねも本気で提案したわけではあるまい」

 肩を震わせて立ち上がった副会長を生徒会長がなだめる。

「それはそれとして、客引きパンダが必要だな。この件は引き続き検討としよう」

「それでは次の報告に移ります。

 第二階層のトラップに一部動作不良が認められるとの報告が上がっています」

「動作不良?」

「はい。詳しい検証はこれからになりますが、ここ数日、トラップがあるはずのブロックで何事もなく通過できたという噂がささやかれています」

「誰かが先に作動させて無効化したのではないのか?」

「いえ、その場合は仕掛けがむき出しになって残留します。今回の情報ではトラップそのものが存在しないかのように無反応になっているとのことです」

「罠が消えちゃったってこと?」

「だが、トラップ除去など前例がない。トラップ解除のアイテムすら記録にあるだけで現物を見た者はいないのだぞ?」

「ふむ、詳細が知りたい。調査班を編成して調べさせてくれるか」

「わかりました。例の件のほうはいかがいたしますか?」

「あちらはあちらで調査を継続してくれ。人手が足りないからと言って放置するわけにはいかないからな」

「承知いたしました。

 では次に、二学期の予算計画について……」


 ***

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