Ardito Step

斉藤 火花

プロローグ

 捨てたかった感情がある。

 なんで行動するのかと、誰のために行動するのかと。

 そのすべては幼馴染のため、あいつの笑顔が見られるのなら他はいらなかった。

 ただ隣にいて彼女が笑っていてくれるのであれば。

 その笑顔を自分が奪っていると知るまでは……。

 捨てようとした、自分がいなければ、この感情を表に出さなければと。

 しかし今目の前にいる少女によって、その考えが変わりそうになる。

 外の光が無い空間だが、暗いとは思わない。

 むしろ数千万色を放つ光やここ数年で爆発的な人気となったゲーム画面のおかげで明るいと思ってしまう。

 そんな色に照らされる小さな少女。

 画面が映し出すチャンピオンの文字に喜びを感じてか、こぶしを握り抑え込めない感情は笑顔となって表現される。

 そんな感情豊かな少女と幼馴染を重ねてしまった。

 だからだろうな、愚かにもまた隣にいたいと願ってしまうのは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る