大会-4 剣士といえば騎乗スキル

『2-2』


『ROUND 5 準備フェイズ』


『最終ラウンドです』


「なんか勝てたね」


 笑っちゃうほどに拍子抜けな勝利。私はなんとハットトリックマルチキル。大勝利だぜ、ぶいっ。


「さっすがぁシェリちゃんっ☆ウチァ褒めてやる〜!えらいえらい〜♪」


 レファぁぁ……ギャル行為スキンシップやめぃぃ…気が抜ける……ちょい、ちょい離れて。

 

「エリア縁なんて誰も見ない」


 ……とにかく。先のラウンド、私は"エリアギリギリ"を走り抜け、完璧に裏を取った。この作戦が成功した理由は大きく分けて二つ。まずはこのマップは荒野のど真ん中にある事。エリア端には建物がない上、中心からエリア外周までは割と遠い。そして二つ目は常に周囲には土煙が舞っていて視認性が悪い・・・・・事。そこに私の砂漠迷彩を合わせたら……


「拙のように感覚特化にしていないと見つけづらい事この上ありませんよね」


「そだねー、しかもみんなは"そういう"の積まないし」


 なんせボディの感覚カスタムは効果が地味。視界の倍率設定をはじめサーモに暗視とかをアームズのカスタムで行わなくてもいいという利点はあるけど逆に言えばカスタムでいい。しかも安上がり。自身の実力に自信がある奴ほど感覚器を選ぶと強い…かな。知らないけど。


「本当に走るなんてなー……」


「そりゃ走るのが私の得意分野なとこあるし」


 RTA走者が走らないでどうするの。止まったら死ぬよ。絶対。そんなわけで潤沢な資金を抱えた私は、ふむ…とアームズ購入一覧を眺める。


「ふふ、クィックドロウ……」


 ……横のバレっちがホルスターに古めかしいシングルアクションアーミーを入れているのを気にせず今の状況にあったアームズを探すと……よし、いいこと思いついた。


「アリサ」


「ん?」


「折角武士が相手なんだからさ――今から"騎馬戦"、しない?」


「いいぜ!」


「ノリが良くて助かるけど私まだ何も言ってない」


 ほんっと、アリサはこれだから……でもま、そういうところが特に気に入ってるんだけどさ。


──(視点変更シェリー→配信画面)



『さぁ、いよいよラウンド5です。お互いにここは引き下がれませんッ!音声は聞こえませんがお互い何か悪巧みをしていそうな雰囲気ですッ!』


>アリサ素振りしてるな

>(ブゥン!ブゥゥンッ!)

>やめろww


『先程はシェリーに見事な裏取りを決められ、フラグで爆死した武士道会。序盤の勢いを取り戻せるのでしょうかッ!』


『最後のラウンドですからね。お互い出し惜しみしていたコストも全て投入してくると考えていいでしょう』


>戦車とか!?

>このゲームにあるのか?

>アームズってビークル出るのか?


『ビークルですか。えー……確かこの辺に……ああ、ありました。余程のコストの貯蔵を必要としますが巨大人形兵器……いえ、記述にのっとり"アトラス級戦略兵器"が購入が可能です』


>……マ?

>ひぇっ


『マジですかロゼッタさん』


『マジですよカタリアさん』


 ほらこれ、と見せられたページを見て、カタリアは天を仰ぐ。ひとしきり現実逃避を済ませた後。


『……えー、詳細は是非皆さんの目で確かめてもらいたいですが性能だけ簡単に言いますと』


 カタリアは一つ咳払い。


>ごくり

>……

>待機


『出せたら勝ちます』


>草

>身も蓋もねぇww

>こんなご無体な…


『もしこの大会中に出ましたら本解説しますが、とにかく……あの"アトラス"が最強兵器として君臨している、ということだけ公式リークさせてもらいますね。あとはナイショ、です』


 ロゼッタがウインク混じりに人差し指を口元に。あざといが、見た目が美少女なので許される。


>くっ……知的美少女のナイショには勝てん…

>中身どっちもおっさんなのに……

>くそう……


『さて、間も無く開始される最終ラウンド、第一試合の結末を皆様と迎えたいと思います。よろしくお願いします』


>おうよ!

>ここまできたら最後まで視聴するぞ

>カウントダウンスタートっ!


『ROUND5 開始まで』


5


4


3


2


1

  

──(視点変更実況画面→シェリー)


『GAME START』


「「フルスロットルッッッ!!!」」


 クラッチキメてエンジン全開!


 アリサがいれば勇気100倍火力は万倍ッ!


「カッ飛ばすぜ『ナイトスター』!」


 見慣れた船の入り口から飛び出す、最高速度180km/hオーバーの二輪の星。その上に乗るのは二人の機人。即ち──


「私らだぁぁぁぁぁ!!!!」


「てめぇらのドタマ貰いうけてやらぁぁぁ!!!」


 私は全力でエンジンを吹かしアリサは肩にブレードをトントンと。これは騎馬戦……ってよりただの暴走族じゃない?


「まぁいっか!覚悟はいいかあーりーさ!」


「たりめぇよシェリー! スターシャ、今の敵の状況は!」


『聞き慣れない内燃式エンジンの音に想定以上に怯えています。固まって動いていますから今ならホームランが狙えるかもしれません』


『私達も追いつくから……的、残しておいて』

 

『次ぁウチも乗せてぇなっ!』


「あーあー通信不良っ!土煙と速度で聞こえないかな!」


「目指すはグレイトキルだッ!」


『……では、ご武運を』


 あ、スターシャさんちょっとキレ気味だ……っと前方に五人の目標を発見、ギアを入れ替えて速度を上げる!


「いたよアリサ!」


「了解──すぅぅ……『たのもぉぉぉぉぉ!!!!!』」


「うるせぇぇぇぇぇ!!!!」


 なんだ、なんだよあれ、クソ女と陰キャじゃねえか……好きに言いやがってってコラ


「誰が陰キャだゴラァぁぁぁぁ!!!!アリサァ!やっちまえェ!」


「あいよっ!火器管制ロックオン、ファイア!」


 パカっという小気味いい音と共にアリサの身体から撒き散らされるミサイル達。バイクで走る私たちを追い抜いて、固まるヤツらに飛んでいく。


「数が多──っ!?」


「だめだ捌ききれねぇ」


「諦めるんじゃねえよ金時!」


「オレがこんな奴らに…!」


「ぐっ……動け…ね……」


 奴らは手持ちの刀でミサイルを捌こうとするけど、無駄。銃器の数は限られてるし、そもそもこのバイクは完全な"内燃機関アンティーク"の乗り物。アリサに乗せられるだけ載せたチャフミサイルがどれだけ近くで撃墜されようが、この速度には関係ない!


「バッター、準備はいい!?」


「当然!」


 見なくてもわかる。アリサは後部座席の上に立って、その手には巨大ブレードを握ってる。その雰囲気は、まるで背に四番を背負った切り札の打者。


「チャンスは一度、失敗したら放り出すからね!」


 飛んできたクロスボウを片手で出したアーミーナイフで弾く。奴らの一人が驚いた顔でこっちを見る。


「んなっ!?」


「絶好調のアタシがミスるわきゃねェ!」


 ただいま時速は時速120km!交錯まであと──


「ゼロ!」


 牽制ついでに両手に握ったコンバラリアを掃射、この速度ならハンドル握らなくたってちょっとくらいは大丈夫!


「オッラァァァァ!!!!」


 そして、アリサの振るった暴力ブレードで、金色のやつが盾にしたレールガンは呆気なくへし折れる。


[A-RI-SA]Blake[金時]


 赤い奴は回避しようとしたんだろうけど私の弾幕にビビってヘッドにドストライク。


[A-RI-SA]Blake[信長]


 クロスボウをぶち込んできた気概のある地味キャも同じく腹をブチ抜かれて。


[A-RI-SA]Blake[藤太]


 刀で迎え撃とうとした奴は、勢いの差で吹き飛んでジ・エンド。


[A-RI-SA]Blake[村正]


 そして最後、アリサを爆殺した憎き青いヤツは。


「やめ、やめ──」


「Good Gaaaaaaame!!!!」


「──ぁぁぁ……」


[A-RI-SA]Blake[時宗]


 脚のすくんだ隙にアリサがカチあげて、落下死。なんとか制御しなおしたナイトスターをアリサのブレードブレーキでなんとか止めて、これでパーフェクトゲーム達成。


『ROUND5 勝者:産業革命』


『Perfect』


『3-2』


『貴方達の 勝利です』


「よっし一回戦は勝利だな!」


「よくやったアリサ!」


『……本当に貴方達二人で終わらせてしまいましたね』


『ウチぁ信じてたぜっ!』


『……ちょっと、妬く』


『もー、パレピぃ、そんなムスッとした顔してちゃダーメ、もっと明るくいこうぜぇぃ♪』


『…ん』


 ……撫でられて満更でもないバレっちの顔が浮かぶ。


『間も無くマッチが終了します』


「それじゃ続きはリアルで話そ、休憩しつつ次の作戦考えようぜ!」


 そう言って私は、浮かぶログアウトボタンを笑いながらぶっ叩いた。


〜〜〜

Tips 田中カタリアとロゼッタ


名物実況者と解説者のコンビ。一応お互いソロなのだが、コンビを組んでいるのかというレベルで息ぴったりな上同じ仕事になることが多い。しかもプライベートで付き合いがある。

なお二人ともバ美肉しているが魂はマジでいい歳こいたおじさんである。


見た目はあんまり決めてません

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