#20 【暴走中】この勝負、うるさい方が勝つ【超特急】
「んじゃあ…最終ラップ。始めちゃおう」
>いつもの
>親の最終ラップより聞いた最終ラップ
>親も走者なの?
アリサの声で化物の咆哮は相殺。一歩ごとに地面をぶっ壊す勢いで進み、殺意に満ちたサードムーンをフルスイング。再び受け止めようと左爪を向かわせるが。
『ボゥェァ!?』
>マヌケ顔っていいよな
>チャンスって感じがする
オファニエルに散々削られた金属は、蓄積していた罅に傷が祟って文字通り叩き割れる。そしてそのまま右爪は間に合わず。
「『脆れぇぇっっ!!』」
装甲の下に隠れていたゴワゴワの毛皮を引き裂いて、中の肉は引き散らかされた。
>ぐっっろい
>ゾンビよかまし
>解体ショーだな
「私もここで使っちゃおっかな〜……」
そう言いながらシェリーはオファニエルを肩に乗せながら、[イモータル・オルタ]を装着。飛び出した肉塊がシェリーの身体に固定される。
>え…ろいハズなんだけどなぁ
>一周回ってクール&バイオレンス
>さて鼓膜破るか
「音量注意なんて言わなくてもわかるよね――『真っ髄っ解〜〜〜〜っ放ぉっ』!」
ロッカーアームで迫り出した足場の勢いに乗せて跳びつつ真髄解放。増える円盤と棘、鳴り止まない駆動音は殺意の大楽奏に違いない。膨れ上がる肉塊とシェリーの高揚感が、最高潮に達する。
>うっっっるせぇぇぇ!!!
>鼓膜破らないからだぞ
>こ↑こ↓リピートすると作業捗るゾ
>ちゃんと余裕持ってやれ
「何この音!?」
「オファニエルの声」
「喋るってレベルじゃないけどコレ!?」
>それはそう
>新鮮なリアクション助かる
>うめぇ
「アーッハッハッハァァッ!私から逃げられると思うなよぉっ!?」
>\\[大魔王降臨]//
>殺戮者がよく似合う女
>殺人鬼と殺戮者の違いって何?
>バカとアホみたいなもん
ランクがIIIに達しているから真髄解放の制限時間は90秒。その内の1秒も無駄にすることのないよう、着地は着弾に。変身バンクさえも利用して。
『ボゥボゥェァッ!!』
化物は反射的に右手の金属で防いでしまうが、当然悪手。直感でマズイと電気信号を送るまでに、オファニエルは金属を無慈悲に削り穿ち塵に帰す。
「一発入魂っ!」
自傷ダメージも厭わず、シェリーは隠された毛皮へもオファニエルを差し向ける。過ぎていく時間と減りゆくHPゲージのせめぎ合い。どちらが尽きるのか、今はわからない。
「――それで、ブラキオンは活躍しなくていいの?」
流れるようなフルオート銃撃で足に大打撃を入れてバレッティーナが言う。
「…ハッ!? ボクを差し置いて何やってるんだよーっ!」
痛みに浮き上がった化物の足をブラキオンで囲み、閉じて、引っ張る。完全にバランスを崩した化物に、二人の目が更にギラつく。
>ひっ
>
>トイレ行けねえ…
「「『"隙"アリぃっ!』」」
左右両方から迫る殺意と駆動に、化物のHPゲージとSAN値はぶっ飛んだ。良い子には見せられない化物解体ショー好評開催中。
「「『その
「怖っっ!!??」
>シェリーまであっち側に……
>RTA中とコレと別人だったりする?
>アリサと幼馴染ってことは…
「私も"ラッシュ"をかける」
「ちょっボクを一人にする気!?」
加速を使用してバレッティーナも前方へ駆けてゆく。両手にミラーラミを携えて、靡く金髪と共に血旋渦の真っ只中へ。
>おいおいおい
>死んだわバレッティーナ
>いやバレ様が死ぬ訳ない!
「『ウラウラウラウラウラウラウラウラァァァ!!!』」
「アッハッハッハッハハハハハァァァァァ!!!!!」
「リロード ショット リロード ショット リロード――」
加速したバレッティーナは二人の攻撃の隙を潜り抜け、着地と跳躍を繰り返しながら化物の眼球、口内、傷口に二十四発二十四中。ヤケクソみてェな勢いでHPが削れてく。
「キッッッモ」
仕事をしない訳にはとブラキオンを巻きつけてはいるものの、あまりの動きの無駄の無さと無駄なシャウトに圧倒されて顔から笑顔が抜けるアスト。
>草
>率直すぎる
>アストの地声出たな
「えっ…えぇ……?ああはならなくない?ボクだってもう少し外面良くするぜ?」
>仲良しだなぁ…
>もうあいつら3人でいいんじゃないかな
>もはや配信気にしてるのアストだけで笑える
「そうだよね!?これボクの配信じゃないしね!?」
>うるせぇ!
>ゲストが司会をするフリーダムな配信です
>フリークスだろ
そして、真髄解放より60秒。化物のHPは最早風前の灯火。間もなく決着の時が訪れる。緑の面積は今、3%を切った。
『ボ――ェ――』
たった一つの瞬きの間に凄まじく叩き込まれる攻撃のオンパレード。何も為せず何もできず。哀れな声を漏らすのみの化物は残り2%。
「「「『コレで――終いッッッ!!!』」」」
挽き殺すオファニエル。振られ下りるサードムーン。飛び上がったミラーラミ。最後の1%を削り取る為の必殺攻撃が、たった今、接触した。
[Battle-Result]
M-ore
貢献度:2nd
評価度:AMAZING
タイム:00,13,26,29
報酬
-割れた魔核(初討伐特典)
-凝縮合金(LA特典)
-凝縮合金×3(最速討伐特典)
-凝縮合金
-魔晶
-金属粉の付いた毛皮×2
称号
-[異世界の化物[M]を初討伐せし者]
-[異世界の化物[M]を最速討伐せし者]
-[鉱石を砕きし者]
-[地底暴走族]
-[ケイブ・クライマー]
<ワールドアナウンス>
『シェリー』、『アリサ』、『バレッティーナ』、『アスト』の四名が異世界の化物[M-ore]を初討伐しました。タイムは13分26秒29です。
>うぉぉぉぉ!!!!
>#[勝利記念]#
>やったぜ。
「私たちのぉぉ……勝ちd――――」
目の前を流れたバトルリザルトに、溜めて喜んだところでシェリーの真髄解放は終了。仰向けに倒れて後頭部を強打。しばらくは起きない。崩れていく肉塊の中から覗く口の空いたマヌケ顔は見る人の笑いを誘う。
>草
>ワロタ
>\\\[さすシェリ]///
「高っっか!え、ボクの配信でもマレに見ない額じゃん!」
「『フゥゥゥぅぅぅ―――』―――………よし。おつかれ、みんな!」
サードムーンを地面にブッ刺して調息、いつもの調子に戻るアリサ。先程までの狂気はどこへやら、リアルのように明るい表情で仲間に労いの表情を送る。
>なんで息抜く時もうるさいの?
>排気量がデカすぎる
>車か何か?
「こわいよアリサちゃん」
「乙」
バレッティーナは満足げな表情でグッ、とサムズアップ。汗を拭うような動きをしながら、光となって消えてゆく化物を見送る。
「平然としないでバレッティーナさん」
「今回は私がMVPゲット!ブイっ!」
バトルリザルトを確認したアリサが嬉しそうに跳ねる。ここだけ切り取れば可愛らしい女の子にしか見えない。
>あら可愛い
>いや良く見るとクソ返り血
>見ないようにしてあげて
「ボクは4thか〜……」
「私らはIIIだしなー、ランクIIにしてはよくやってたと思うぜ」
「転ばせとか麻痺とか役に立ってた。コレから強くなっていけばいい」
「偉そうに言いやがって!みってろ〜??そのうち纏めてボクが潰してやるからな!」
>期待しよう
>PvPなら厄介だからなぁ
>最悪ハメられる
ブラキオンの拘束性と射程、そして麻痺効果は近距離族には相性最悪。スイッチの入っていないアリサは絡まれればひとたまりもないだろう
「う、うーん……ここはどこ?私は美少女」
そして行動不能状態の解けたシェリーが飛び起きる。使用不可になった[イモータル・オルタ]を仕舞いサブ武器の剣を取り出す。
>は?
>起きたな
>お前は殺戮者だ
「よっしゃ視聴者共その喧嘩買ってやるよID覚えたからな!!!」
>近々闘技場実装されるらしいから期待
>タイマン企画やる?
>面白そう
「……あ、ホントにくるの?あれ。そんじゃ全員本当に――挽き殺してやんよ!」
>コレは風格ありますわ
>やりますねぇ…
「ん〜……ゴフッ、ああダメだ、まだちょっと興奮してる。楽しかったなぁ、今回も」
ひとまず落ち着こうとクリエナを口に含むがうまく飲まずに咳き込む。行動不能時間中の全感覚遮断状態を経ても未だ戦いの興奮冷めやらぬ状態のままらしい。
>最終回みたいな雰囲気出すな
>シェリーの次回配信にご期待ください!
>次回、シェリー死す
「フラグやめろっ!」
「私達の戦いはコレからだ」
サードムーンを肩に乗せながらニヒルに笑う。
「アリサカッコつけてるけどそれもフラグだが!?」
「ここまでのコンビネーションができて……もう、何が来ても怖くない」
渾身のイケボで渾身の決めゼリフ()が言い放れる。
「あのさぁ?」
「…………あっ何かいうところ?」
「うん」
>無茶させんな
>個人配信のノリについてけないアストかわいい
「さてさて〜……それじゃボチボチ帰っちゃおっか〜、セーブポイント………………」
「どしたのシェリー?」
「ごめんねアスト 今から一つ働いてもらう」
「……?」
「セーブポイント、最上層にしかない」
「――ハァ!?」
やり切った感を出しきった3人を運ぶのが最も苦労したとは、アストが配信アフターで零した一言だった。
〜〜〜
Tips 称号の意味
"特には"ないです。たまにあるのもあります。
○○討伐とかは完全に記念系の称号。
ストーリー進行で貰える称号は要素解放に関わったり。行動に付随して生える称号はたまに効果があるものがあったり。
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