#8 【ゴリ押し】私の後ろに道はできる!【力は正義】
「――ぃぃぃぃぃぃゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
現在地、リンドの森、奥地。
現状況、逃亡中。
ハンター、推定3ケタ。
補足事項:全員血走った目のゴブリン。
「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬぅぅぅぅぅ!!!!!」
>あからさまにホラー
>結構走ってるのにまだアリサの笑い声が耳から離れない
>あれなんなの?
>げに恐ろしき化け物じゃ…
>今朝も見たなそれ この配信には化け物しかいないのか?
「呑気な事話してるんじゃないよ!!!!」
只今切り抜き担当は配信を録画しながらも突発性腹筋崩壊症候群に襲われ床に臥せっている。常軌を逸したその
「いやこれさぁ!これさぁー!!どうしたらいいかなーァ!?」
>まぁ異世界の化物探すんじゃない?
>ルート分岐条件的にもそう
「悲報:方角わからない」
>解散
>終わったな 風呂入ってくる
「やめてぇ!!」
縦横無尽に走り抜けるオファニエル。木と木の間をスキーの様に抜け続け、後続の緑からはどうにか逃げおおせ続けている。
「っていうか数!数!なんかさっきより倍に増えてない!?」
>言われてみれば確かに
>ゲシュタルト崩壊してきた
>認識崩壊ニキ休んで
「それに、なんかマップがすごい広くなってる気がする!霧も出てきたし!」
近づいてきた奴はキックで排除。爆走オファニエルの舵は最低限、迎撃は最小限に。シェリーはこの状況からの打破を考える。ついでに手は勝手にRTAタイマーをカメラの横に投げる。
>またRTA始まったww
>レギュレーションは?
「はぁ……すぅっ――EXシナリオ攻略RTA。参考記録だけど今の状況からの打破を第一ラップ、ボス発見からが第二ラップ。もし討伐後に演出があったら第三ラップ突入って事で」
>了解!
>ガチ顔可愛い
「いつも可愛いが?」
>ハハッワロス
>おっ、そうだな
呆れた目を流し、シェリーは珍しく思案に耽る。身体は無意識に反撃し続ける。
「確かに今は夜で、霧が立ち込めている。けど、視界の奥が完全に闇――なんてことはありえない」
>確かに
>視界の明るさの割に見えないよな
「それに、私は、さっき"この場所"を通った。最初にロッカー・アームで飛んで粉砕した枝葉が見えたし、間違いない」
その割には赤くないけどと付け加えるが、実際、今方シェリーは体内の方向感覚では直進状に動いている。なのに、なぜかアリサのなぎ倒した木のあたりまで"戻ってきた"。ふと見返した視聴者は気がついただろう、森に入った時には、"霧はなく先は遠くまで見通せていた"と。
「つまりここは――異世界の化物とやらの
>妥当
>それは考えてた
>知的シェリーカッコイイ
「たりめーよ、私を誰だと思ってんの?」
>[戒天の殺戮者]
>[天下無双唯我独尊]
>[異端の魔女]
「おいコラ別ゲーの称号まで持って来んなアホぉ!」
><[カワイイシェリー]>
>[超人気配信者!]
「…普通に誉められるの嬉しいな」
>\\[ちくわ大明神]//
「誰だ今の」
>いや赤スパかよww
>もっと金大事にして?
「まぁそんなみんなの期待には、答えちゃおうかな!」
ロッカー・アームで地面を操作して、再びオブジェクトを生成。しかし今度はジャンプ台というよりは……ランプ。日本語で言えば反り立つ壁。
>急にテレビになったな
>え、何すんの?
「"逆走“する」
岩穿つドガカグラララガッ。背後に跳ねたオファニエルはバタフライか。着地の際には回転を、シェリーも刃も大回転。着地狩りを狩るスーパーチャクチ。今日は長射程武器は居ないから安全だ。
「邪魔すんなぁぁぁ!!!!」
>固定ダメージ:とは
>ダメージと物理現象は違うから…
>おのれノンフィクエンジン
「痛っちょっ、思ったよりヤバいかも!?」
轢殺でミンチに加工する際のすれ違い攻撃に、シェリーのHPは赤くなっていく。再生Iがなければキツかった。そして半分を切った頃、一気に進行方向を右へ。ここはシェリーが時間から測定した"ループの
「コレで無理ならもう暴れるっきゃない――!」
そして、一気に暗転する視界。まるで舞台の暗幕を潜り抜けたかの様な感覚。叫んで恐怖心を克己する。
「――抜けろォォォォォ!!!!!」
>いっけぇぇ!!!
>やれぇぇぇ!!
>やったか!?
そして、視界は晴れた。
……そう、視界"は"。
「……は?」
>なにここ
>闇を抜けると そこは暗黒空間だった
歪む星空。
吹き飛んだ生活痕。
中心にはクレーター。
そして、今にも這い出てきそうな不規則に蠢く肉塊。
一寸先は闇とはよく言ったもので、まさしくこの『ボスエリア』は"
>キッッッモ
>気色悪い
>緑色混じってるからゴブリンの集合体か?
>っぽいな
「……あれが、"異世界の化物"」
いつもならばボスの登場モーションなどガン無視して突撃するシェリーも、あまりの異様さに動きを止めて息を呑む。
「すっごく、削るの楽しそう」
勿論、その目は輝いたままで。ブンブンと回し気合一発、珍しくその足で駆け出したシェリーは、下段からバットを振る様に肉塊へオファニエルを押し付ける。
「ああ〜〜!!挽き肉の音〜〜っっ!!」
>……なんかもう聴き心地よくなってきたな
>駆動音には慣れたし肉を破砕する音って安心する
>それはお前らだけだ定期
徐々に、しかし確実に。化物はその体積をボトボトと順調に減らしているかに見える。だが、化物のHPバーは赤色になったまま――減少していない。
>[コイツの体力減ってない]
>うわマジだ
>灰色になってないじゃん!?
「え、嘘でしょ!?」
危機を感じたシェリーは踏ん張りをやめオファニエルの推進力を利用してサーカスが如く肉塊の円周を走って元の場所目掛け跳躍。一旦離れ様子を見ていると、飛び散った肉片が集合し、見覚えがある――なんなら、さっきまで追いかけてきたヤバいゴブリン達にしか見えなくなった。
>マジかよ
>まだゲージ減ってないぞ
ルート分岐、完全成立。EXから死なずにボスエリアに辿り着き、そして戦う意思を見せる事。それがこのルートへの到着条件。
――
ストーリークエスト(CLEARED)
1-1-EX
[ゴブリンの群れを調査せよ]
現在、リンドの森にはゴブリンが大量発生しているらしい。群れの様子はどうなっているか確かめに行こう。
β:ゴブリン達の知能は平時よりも高く、なんと待ち伏せされてしまっていた。この窮地を切り抜けよう。
EX:長く戦っているあなた達は気がついた。このゴブリン達の様子は、ハッキリ言って『異常』だ。その原因を探れ。
CLEARED:奴が、この『異常』の原因だ。
報酬:3000C(後払い)+EXP
──
――
ストーリークエスト
1-1-EX2
[異世界の化物を排除しろ]
異世界の化物、[Z-obituary]を発見した。奴を倒し、この森の平穏を取り戻せ。
報酬:???
――
「ストーリークエストでもやってイイこととワルい事があると思うの」
SWORDに於いて、経験値は戦闘リザルトかクエスト報酬で手に入る。そして、レベルアップタイミングは即時。目の前に広がるは成長画面。シェリーは半ばこの毎度の仕様にはキレつつも、大凡目当てをつけていたそのスキルを選択。近づいてきたヤツらを出力全開でぶっ潰す。ソレは血溜まりになって地面を穢す。
「今選択したのは足止攻撃Iね。攻撃時に低確率で足止付与――要するに、どこ叩いてもスタンしやすくなったって事!」
>クソ乱数引いたら勝てねぇw
>まず当たらなけりゃイイ
>ボスは攻撃されるのが仕事だから……
さて、本来のこのボスの倒し方をこのタイミングで説明しよう。本来、ストーリークエスト第一話は1-1から始まり1-5で終わる五部完結。αかβ、どちらになったにせよ森は変容せず街まで戻ることができ、そこからクエストが派生していく。
その過程でこの件についてのサンプルを採取させられたり、化物を倒す為にはヴァーサ様の力を活性化させなければならないと洞窟探検させられたりした結果、第四話の報酬として特殊バフ[天命の雫]を獲得することができる。この効果は、現在目前にいる[Z-obituary]の
……つまり、
>コレもしかしなくてもいつものRTAルートか?
>っぽい
>EXルートとしてちゃんと設定されたのか
「初見で"こう"なるとは…やっぱり私、SWに愛されてるね?」
ゲームの自由度が上がった現代。仕様上、正規ルートを用いなくてもボスまで到達できてしまう。その対策としてゲームのストーリー自体を破壊して進める様に設定する事が普通になっているのだ。しかも、上手くいけば早く終わらせられる。壊れるのなら壊せるようにするという逆転の発想だ。
>木を薙ぎ倒す音が聞こえてきたな
>二人もあの空間から出たか
アリサとバレッティーナも、オファニエルの棘痕を追って来たらしい。後ろから
「さ、RTA第二ラップ、はじめよっか?」
初コラボ配信、最後の関門。[Z-obituary]が、ギチギチと音を立てて膨れ上がった――。
〜〜〜
Tips
帰冥スペクターの持ってるアレとか
ブラッドボーンに出てくる火薬庫の武器です
オファニエルは見た目を前者から、音を後者から。
モーションは二つを合わせ、そして水着ノッブを合成したものになります。
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