ep11-6 聴け! 暗黒魔女の恨み節!!
「はいはーいみなさーん、『フュテュール』のライブはもうおしまいでぇ~す、今からアントリューズの暗黒魔女マギーオプファーwithオドモンスターフキョウワオーンのショーが始まっちゃいますよぉ~、みんなぁ、お代はいいからたーっぷり楽しんでいってねぇ」
ステージへと飛び乗ったあたしはオドモンスターフキョウワオーンをバックに観客たちを煽る。
「な、なんだあれは……!?」
「化け物だぁっ!!」
「ニュースで見たぞ、悪の組織の暗黒魔女だ!」
そんなあたしの声に呼応するかのようにホール内に悲鳴が木霊する。
「や、やめろぉ、悪の魔女め!! 俺たちのライブで好き勝手なことはさせ……」
ドゴッ!!
「うるっさい! 今からあたしのショーが始まろうってのに邪魔すんじゃないわよ!!」
あたしは詰め寄って来た『フュテュール』のメンバーの一人をダークスティックで殴りつける。
「う、うわああ!?」
殴られたそいつはそのままステージから客席へと転落していった。
(ふんっ!)
あたしは鼻を鳴らすとフキョウワオーンに繋がるマイクを手に取り観客に向かって叫ぶ。
「さあ、ショーの始まりよぉ!! それでは聴いてください、マギーオプファーで『ハートブレイク』」
♪~
寂しさ孤独絶望の~ぼっちの日々に差し込んだ~君は光だ太陽だ~だけどやっぱりあたしはぼっち、生きる世界が違ったの~?
~♪
「うぎゃああああ、耳が、耳があああああああっ!?」
「な、何この歌!? 気持ち悪いぃぃぃ!!」
フキョウワオーンが奏でる狂った音楽に乗せて歌うあたしの歌に、観客たちは恐怖の声を上げながら耳を抑える。
まるでどっかのガキ大将のリサイタルのような光景だがあたしは別に音痴ではない。
フキョウワオーンの奏でる不協和音と恨みによって増幅された暗黒魔力によって、あたしの歌は聴くものの精神を蝕む魔の音へと変わり果てているのだ!
「ううっ……もうやめて……」
「頭がおかしくなりそうだ」
観客たちの苦しみはさらに増していく。
「あひゃひゃっ! おーっほっほっほっほっ!!」
あたしはそんな光景を見下ろしながら狂ったように笑い声を上げた。
ふふん、いい気味よ! ああそうさ、あたしはぼっちの暗黒魔女マギーオプファー様なのよ!!
あたしが独りで
「おいおい、どうなってんだ、ありゃ?」
「なーんかセンパイ、変なスイッチ入っちゃったみたいですねぇ、突然何があったんでしょうかぁ?」
「しかし、ひでぇ歌だな、聴いてるこっちが恥ずかしくなるぜ」
観客席からステージの上のあたしの様子を見ていたエンさんとヴァーンズィンが口々に言う。
「はぁ? 何よ、文句でもあるわけ?」
あたしはギロッと二人を睨みながら言う。
「なんでもありませぇん。でもセンパァイ、センパイばーっかり気持ちよく歌ってずるいですぅ。ヴァーンズィンちゃんにも歌わせてくださぁい」
「おおっと、怖いね~。しかし、この俺を怯ませるとはなかなか……。流石はあの計画のためにマリス様が見出した適格者、心の中にとんでもねぇどす黒いものを持ってやがるぜ」
ヴァーンズィンが甘えたような声で言ってくる横でエンさんはぶつぶつと独り言のように呟いてるけど、あたしはどちらも無視して歌い続ける。
♪~
君は言ったのあたしだけって~唯一無二の親友だって~だけど嘘嘘それは大嘘~君はあの子の手を取って~大好きなんて笑顔で言った~あたしだけ置き去りにされた~
~♪
歌いながらも恨みのこもった視線を最前列の美幸と
まさか、さっさと逃げた? そんな馬鹿な……。
フキョウワオーンを作り出したその瞬間から、このホールの出入り口は魔力によって閉鎖している、つまり侵入や脱出は不可能なのだ。
だから、観客たちは逃げることも出来ず悶え苦しみながらもあたしの歌う恨み節を聴かされ続けるしかないのに……。
それに、基本的には正義感の強い美幸や灯が、自分たちだけ逃げるなんて考えにくい。
なら一体どこへ……? この歌は美幸に聴かせなきゃ意味がないのに……。
「オプファー! 後ろに跳べ!!」
「え?」
そんなことを考えていたら、エンさんの切羽詰まったような大声がホール内に響いた。
あたしは反射的に後ろに飛び退く。
次の瞬間、あたしのいた場所を何かが高速で通過していった!
これは魔力弾!? なるほどぉ……美幸や灯の事ばっかり気にして、
あたしはキッと視線を鋭くして、その魔力弾が飛んできた方向を睨む。
「悪いけど、そろそろワンマンショーは終わりの時間だよ、オプファー!」
キラキラ煌めく金色のロングヘアー、茶髪ふわふわショートヘアーの美幸とは全然違うはずなのに、何故か似たような雰囲気を醸し出している、そんな少女がステージ上のあたしに向かって魔力弾を放った後のポーズのままで言ってきた。
その横ではもう一人の赤毛ショートカットの少女が腕を組んで不敵な笑顔を浮かべていた――
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