episode5【マジカルブリス消滅作戦!】

ep5-1 特訓完了! 今度こそブリスに目にもの見せる!

 図ったように前回の戦いから一週間経った日曜日、今日のカリキュラムを終えたあたしにクリッターが声を掛けてきた。


「梨乃、やったクリね、ついに今回の特訓でキミの目標値だったレベル15にまで達することが出来たクリ!」


「やった!」


 あたしはグッと拳を握りしめ笑顔を見せた。


 まるでRPGゲームの話でもしているかのようであるが、無論ゲームの話でなく、あたし自身の能力の話だ。


 アントリューズの技術によって作り上げられた測定器はそれこそゲームのように対象の能力をレベルという数値で表してくれる。


 あたしが目標としていたレベル15というのは、クリッターがあらかじめ測定していたマジカルブリスのレベル10を踏まえたうえのものだった。


 んっふっふっふっふっ……。仮にこの一週間ブリスも何かしらの特訓をしていたとして、現在のレベルをめいっぱい高く見積もったとしてもレベル13程度が限界のはず。


 1でも差があれば70%程度の勝率があるらしいので、ブリスより2も高い今のあたしなら九分九厘勝てる!


 特訓前のあたしはレベル7だったんだからとんでもない飛躍ってもんよ、やはりあたし天才なんじゃないかしら!?


「クリッター! マリス様に出撃許可を貰いに行きましょう!」


「え? まさか今から出るクリか? 疲れてるだろうし今日はもう……」


 テンション任せに言うあたしに、邪悪妖精が珍しくあたしを気遣うようなことを言うが、あたしはそのままの勢いで続ける。


「例のがあるでしょ! あたしは今身体が疼いて疼いて仕方ないのよ、いよいよ決戦の時よ、さあ行きましょう!」


「やれやれクリね……梨乃はよくても僕の方はもうおねむの時間なんだクリよ……」


 クリッターは溜息をついていたが、あたしの決意が固いことを見て取るとマリス様の元へ案内してくれた。


 そして……。


「いいでしょう梨乃ちゃん、許可を与えましょう。レベル15は立派なものです、今ならマジカルブリス相手でも互角以上に戦えるでしょう」


 マリス様はそう言ってにっこりと笑うと許可を出してくれたのだ!


「例の特製ドリンクを持ってきたクリよ~」


 待ってました! これがなきゃね~。クリッターが差し出すキンキンに冷えたそれを、あたしは腰に手を当て一気にあおる。


 キタキタキタキタキタキターーーーー!!!


 この一週間特訓後には毎日これを飲んでるけど、疲れは飛ぶし美味しいしもう最高!!


「ぷはーっ! ああ、美味しい……」


 飲み干したあたしは思わず感嘆の声を上げる。


 うひ、えへへ、もっと、もっと飲みたい……。あたしは瓶を逆さまにして最後の一滴まで残さぬよう飲み干した。


 ベロベロと瓶の口の部分を舐め回すあたしの姿を、マリス様とクリッターはニヤニヤと眺めている。


 そしてクリッターがマリス様に何事か耳打ちすると、マリス様はさらに笑みを深くするのだった。


 おっといけないいけない、今は出撃前だった。


 あたしは名残惜しい気分を押さえ、クリッターに空き瓶を渡すと姿勢を正す。


「梨乃ちゃん、準備はいいですか?」


 マリス様が聞いてくるのにあたしは大きく頷く。


「はい! もういつでも行けます!」


 ああ……身体が熱い……早く戦いたい……! そんなあたしの様子を見てマリス様は満足そうに微笑むと頷いた。


「では、アントリューズが総帥マリスが浦城梨乃――マギーオプファーに命じます、我らが宿敵マジカルブリスに絶望と恐怖を与えてきなさい」


「はい!」


 あたしは敬礼をすると、マリス様の前から立ち去る。


 もう我慢できない……早くあの生意気な小娘に思い知らせてやるんだ……! そう決意しながら。

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