雨―三河湾心象スケッチ―
まして
水平線なぞ あるわけがない
灼けただれ べっとりと膿んだ
つめたい汗の
空たちと 海たちの
苦がい婚姻だ
漂うブイは なんのために 誰のために
熱をはらんだ方角に 傾むき
世界のようにどろどろな
矢じりの雨は 海面に刺さり
降りそそぐ矢じりたちの
けれども
貼りつき すがりつく海苔の柵に
切り刻まれた海流は
静かに溶けこむが 溶けこみたくても
溶けこめず ふくらんでゆく格子の影は
いびつに歪み 破け とび
そして また
貝殻は方向を持たない
方向を持つのは
泡粒の 砕け散る島だ!
砂だ! それら
みな漂う藻だ
したたりふるえ 落ちようと
堕ちようとして まるくはじけ
すきとおりつづけた雫の
ただ それだけだった宇宙の
樹林をはずれ
水面に
繊毛 ふるえ ならび立ち
ゆびさきを
斜め上にささげて
繊毛
流れながら
しぶきをあげて
ならびたち
けれども
灰色のまひるから
蒼い深夜まで
コンクリートはひび割れて
むすうの白さ 苦がさ
割れ目にみち
ただよい
そして
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます