雨―三河湾心象スケッチ―

まして

水平線なぞ あるわけがない

灼けただれ べっとりと膿んだ

つめたい汗の

空たちと 海たちの

苦がい婚姻だ


漂うブイは なんのために 誰のために

熱をはらんだ方角に 傾むき

世界のようにどろどろな

矢じりの雨は 海面に刺さり

降りそそぐ矢じりたちの

けれども


貼りつき すがりつく海苔の柵に

切り刻まれた海流は

静かに溶けこむが 溶けこみたくても

溶けこめず ふくらんでゆく格子の影は

いびつに歪み 破け とび


そして また

貝殻は方向を持たない

方向を持つのは

泡粒の 砕け散る島だ!

砂だ! それら

みな漂う藻だ


したたりふるえ 落ちようと

堕ちようとして まるくはじけ

すきとおりつづけた雫の

ただ それだけだった宇宙の

樹林をはずれ


水面に

繊毛 ふるえ ならび立ち

ゆびさきを

斜め上にささげて

繊毛

流れながら

しぶきをあげて

ならびたち


けれども

灰色のまひるから

蒼い深夜まで

コンクリートはひび割れて

むすうの白さ 苦がさ


割れ目にみち

ただよい

そして

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