第2話 入校式

肇の家は裕福な家では無く、どちらかといえば低所得層で収入もまばらな家庭だった。


そのためか、肇は安定した収入が貰える公務員に興味を持ち、就職したいと考えていた。


そこで求人があった日本軍悪獣対策部隊の隊員に目をつけた。


悪獣対策部隊の隊員は、幹部候補生でなければ、第一線で悪獣を討伐する仕事ばかりで、命がいくつあっても足りないくらいだ。


だから人気が無い。


肇は、そこに目をつけた。


人気がないから、就職倍率は他の公務員より低い。


じゃぁ、平均的な成績の肇でも受かるのでは無いかと。


そして、受験した肇は見事合格。


肇の思惑どおりになった。


肇が悪獣対策部隊に入隊する事が決まり、悪獣対策の学科と訓練のため、長野県にある悪獣対策部隊長野学校へ入校する事になった。


肇は思う。


「俺は平凡な人間だ。ヒーローになる程の才能は無い。死んだら元も子もない。死なない程度の実力がつけば良い。せっかく公務員になったんだから定年まで頑張るぞ!」


と。


こうして、肇は悪獣対策部隊長野学校に入校する事になった。


肇は真新しい黒い軍服を身につけ、荷物を持って学校に着いた。


肇は受付を探すが、学校の正門には誰もいない。


「おかしいな。正門で受付するって書いてあったのに。」


肇は首を傾げる。


この時、実は受付は一時間前に終わっていて、入校式の真っ最中。


肇は受付時間を間違えて、遅めの出勤状態なのだ。


だが、肇は気づかない。


「俺もしかして一番?優秀じゃん!」


なわけないだろ!


実は肇はおっちょこちょいで、間違える事がないはずのところでミスするため、成績が上がらないのだ。


要は天然バカなのだ。


肇は皆が遅れてると思ったので、正門脇の日陰に座り、皆が来るのを待つ。


そこに警備員のおじさんが現れる。


「あれ?式は終わったんか?」


「いえ。まだ誰も来てないんです。」


「何言ってる?式はとっくに始まって、そろそろ終わるぞ?」


「え!?」


肇と警備員のおじさんが話していると、そこに入校式を終えた新隊員達が歩いてくる。


「やっば!やっちゃった!?」


はい。


やっちゃいましたね!


肇は入校式をバックレた不良隊員の称号を手にいれたのだった。


その後、肇は教官室で怒られ、こっぴどく絞られた後、何とか寮に入る事ができたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る