第四章 放送すべきか(1)

 第四章 放送すべきか


 11月3日(火)祝日


 今日は祝日・休日。「アレグロ雪郎」の協力者になったのか、今日から「清子」は「生徒会風紀委員」および「増田仁雄」主導の「シティ風紀委員」として仕事が増えることになるのであろう。


【増田宅・シティ風紀委員拠点地】

 ここは「増田仁雄」の一戸建て。彼の部屋がシティ風紀委員拠点地だ。


「(増田:)最近うちの可愛い清子がこれまで以上にに精を出している。そう思わないか、和子よ。」

「(和子:)言われてみればそうみたいですね。どうしたのでしょう?」

「(増田:)...俺等に隠して単独行動とは、何かあるな。なら働きっぷりを陰で見守るとするか。」

「(和子:)そうですね。今日は休日なので、1日中街全体を巡回しているはずですよ。私達もパトロールしましょうよ。」


 風紀委員2人は「清子」を陰から見守るべく街全体をパトロールすることになった。


【商店街】

 ここは行きつけの家電ショップがある商店街。この場所をパトロールしている「清子」。「サッカー部」の皆さんに何も知らせず、たった1人で仕事している。1人を除いてな...。


「(清子:)...異常はありませんっと。商店街は平和でしたの。」

「(ミュゼット:)私に隠れて何やってんの清子よ。」

「(清子:)ミュゼットさん!?どうしてわたくしのもとに!?」

「(ミュゼット:)中1のよしみだ。といっても、あの頃はカルウやチイアとの交流が精一杯でちっとも新米のあんたに声をかけなかったけどな。それほど重大な仕事を1人で抱えてるなら私に助けを求めてよ。手を貸してあげる。」

「(清子:)...ミュゼットさん。わたくしのしていることは、とても厳しい仕事ですの。そんな仕事を手伝うならわたくしは構いません。どうやらあなたがたとわたくしは雪郎先生を知ってる同士になりましたかね。」

「(ミュゼット:)私は...別に、雪郎がどんな人なのか気になるだけよ。堅物なやつだってドクターから聞いてるけど、実際は正義感のある人かなって。一度会ってみたいな。」

「(清子:)では来年3月末に行ってみます?ラファエルさんが帰国するようですので、彼とともに日本を出ても?」

「(ミュゼット:)いや、よっぽどでない限り結構。さて、次はどこを巡回するかな?」

「(清子:)...とりあえず、住宅街を巡ってみますかね。」


 2人は次の目的地「住宅街」へと向かったのである。


【住宅街】

 ここは「雅史」達が暮らす住宅街。手始めにオンボロ集合住宅アパートメント・グッドウィン号室前でインターホンの音を鳴らす。すると「ラファエル」が出てくる。


「(清子:)ラファエルさん、こんにちわ。」

「(ラファエル:)...風紀委員か。それにフォルテ中学の子を連れといてどうしたのだ?」

「(ミュゼット:)ラファエルって雪郎の知り合いか何かでしょう?なら清子の仕事を手伝ってあげてよ。」

「(ラファエル:)...とりあえず、家にあがれ。カップ麺をごちそうしてやる。」


 家に上がる2人。とりあえず彼のカップ麺をごちそうすることになった。


【グッドウィン号室】

「(ラファエル:)黄色いイタチで勘弁してくれ。」

「(ミュゼット:)おしるこヌードルとかないの?」

「(清子:)それしか用意できないと学園長がそう言ってますの。文句言わず召し上がりくださいませ。」

「(ミュゼット:)...どれだけ黄色いイタチ有り余ってるの、あのカップ麺学園長は。」


 文句言いながら麺をすする「ミュゼット」。


「(ラファエル:)風紀委員の仕事を手伝えと申したな。俺がコンブリオの知人だからか?」

「(清子:)...そういうことになりますかね。ラファエルさんが雪郎先生の知人でしたら手伝っても差し支えませんかなと。」

「(ラファエル:)...コンブリオ、あいつだけずるい。いいだろう、コンブリオを差し置いて手伝ってやろうじゃないか。」

「(清子:)そうこなくちゃ!!ところで、ダイアナさんとハイペリオンさんはいずこですの?既に外出していて留守であることをおふたりさんは知る由もなく入れなくて?」

「(ラファエル:)我が妹とハイペリオンは2人仲良く外出だ。合鍵持ってるので俺がここを出ても問題あるまい。」

「(清子:)だといいのですが...。」

「(ミュゼット:)御託ばっかり並べないで、出発しようよ。」

「(ラファエル:)...そうだな。では、出るとしよう。」


 3人はこの号室を出て、住宅街をパトロールすることになった。たいした問題はなく、次の場所を巡回する「清子」であった。


【通学路】

 この場所ではいつもなら不良グレがうろついているはずだが、今日に限って異常なし。いや、むしろ激減しているといってもいい。


「(清子:)...やけに平和ですね。どう思いまして?」

「(ラファエル:)...風紀委員のおかげだろう。言うまでもないだがな。」

「(ミュゼット:)もしかすると、非日常的な事態はもう起きないかもね。」


 ...ところが「ラファエル」の携帯電話ケータイ(T-Mobile G1/後のスマートフォンである)から着信音が鳴り始めた。妹「ダイアナ」からである。携帯電話ケータイを取り、通話する「ラファエル」。


「(ラファエル:)我が妹ダイアナよ、このタイミングで電話かけてどうしたのだ?」

「(ダイアナ:)...ラファ兄、助けて!!」

「(ラファエル:)!!場所はどこだ!?ハイペリオンは一緒なのか?他に誰かいるのか!?」

「(ダイアナ:)...渋谷の百貨店デパートメントのフロア1(2階)、そこに凶悪犯が立てこもってるの!!ハイペリオンはいつもあたしと一緒で、キャプテンと取り巻き2人、親分...あっ!!![通話終了]」

「(ラファエル:)ダイアナァ!!」

「(清子:)ラファエルさん、今のって...!!」

「(ラファエル:)じっとしていられん!!渋谷の百貨店に向かうぞ!!」

「(ミュゼット:)...ここからだと数時間かかるし、インキュバスの力を借りても最大2人までしか持ち運べないし、向かおうにも...いや、雅史ならなんとかなるかも。今は雅史を信じてよ。」

「(清子:)...とりあえず雅史さんを信じて、わたくしらは早急に渋谷まで走りましょう。と言いたいところですが、魄子さんが設置したポインタを潜ってみてはいかがです?もしかすると、渋谷まで行き来できたり?」

「(ラファエル:)移動手段はなんでもいい、急げ!!」

「(清子:)...そうします。」


 妹の身に何があって冷静でなく取り乱している「ラファエル」、移動手段はなんでもいいと申すまま設置されていたポインタを潜り、渋谷に移動した。そう、行き先はあの有名のスクランブル交差点である。百貨店の周囲にパトカーが3台、未だに突入していないポリスが数人。内側の2階には「凶悪犯」が立てこもっている。果たして、「雅史」とその幼馴染2人、妹「ダイアナ」と従者「ハイペリオン」、なぜか百貨店デパートメントにいる親分「兵藤源郎」はこの苦境を乗り越えられるだろうか?


 陰から見守っている風紀委員2人は3人「清子」「ミュゼット」「ラファエル」を追うべく飛び込んでいった。


【Phase-1】

 フロア1(2階)にはバクダンを巻きつけられており、ペトロール缶とライターを手に持っている敵将「凶悪犯」が立てこもっていて、人質は「雅史」と幼馴染2人、凶悪犯に頭を食らわされ気絶中の妹「ダイアナ」と妹がやられて動揺している従者「ハイペリオン」、なぜか事件に巻き込まれていた親分「源郎」、以上6人である。今回...いや、今回に限らず今後の非日常はもっと厳しいものになるであろう。


 「ラファエル」は警官のバリケードを突破、そのまま店内に突撃する。「清子」は警官に謝罪しつつ「ミュゼット」とともに彼に続く。エスカレーターを上り、「凶悪犯」に気づかぬよう気配を隠す。ここまでは今の状況である。


「(雅史:)君、親分なんでしょ?親分ならなんとかしてくれるでしょ??どうにかしてよ。」

「(源郎:)馬鹿か...武器を持たないおれじゃあ奴にかなうとでもか?」

「(雅史:)...まいったな。親分の力では無理として、凶悪犯の持っているガスとライターをなんとかしないとね。でもダイアナは凶悪犯の下に転がっていてハイペリオンはこんな状態だし、杏璃と健太を傷つけるわけには...。」

「(源郎:)しゃあねぇ...!!おれがひきつけてやるから、その隙に出口まで走れ。」

「(雅史:)ちょ、下手に動くと凶悪犯が何をしてくるのか...!!」

「(源郎:)だぁぁあ!!(Damn)」


 背後に「清子」たちがいることを「凶悪犯」は知らず...。


「(雅史:)...あ、清子だ。何かを伝えてる?どれどれ...ジェスチャーか手話か。サインか何かかな...。」


 日本語手話では伝わらないので、ハンドサインまたはジェスチャーで伝えている。


「(雅史:)ラファエルさんが密かに凶悪犯に接近しているので、雅史さんはこの場から動かないでくださるって...清子ったらもうっ、You moreだけに。」


 「ラファエル」が助けに来てくれたみたい。...背後に気づいた「凶悪犯」は妹に続き、彼を殺めようとライターを使う。


「(ラファエル:)俺を燃やそうとしたって甘いぞ!!...時よ止まれ!!」


 彼の能力「リミテッドカオスコントロール・ストップタイム」は3.5秒間だけ時間を止めるものである。発動している間に「凶悪犯」のバクダンやペトロール、ライターなど武装を解除させ、「ダイアナ」を抱え、この場から離れる。そして時は動き出す。


「(凶悪犯:)い、いつの間に...!!」

「(ラファエル:)親分とやらと健太よ、取り押さえろ!!」

「(源郎:)お、おおぅ!!」

「(健太:)お...どすこい!!」


 2人がかりで「凶悪犯」を取り押さえたことで、立てこもり事件は終わった。逮捕されたのは「凶悪犯」こと20代の男性。なぜそんなことするのかと犯人に訊いても口を割らず黙秘しているため、詳しい動機はわからないままだ。「ダイアナ」は病院に運ばれるもの、頭のタンコブ以外に損傷なく、命に別状はないという。


「(ラファエル:)...風紀委員よ、妙だと思わないか?あれだけ徹底的に取り調べても何の収穫もないままだ、裏があるとも言えるだろう。例の商人といい...最近物騒な世の中になってきたな。」

「(清子:)事情聴取でも当局は誰も信じてくれません。見えない何かが動いているに違いありません。...超官の代わりに雪郎先生と手を組んでみて正解でしょうかね。」

「(ラファエル:)...ああ、FBIの特性上、国外での捜査はままならぬがE.G.なら国外でも合法に捜査できる。妥当性のあるコンブリオは正しい。正しいからこそ信頼に値するやつだ。」

「(ミュゼット:)E.G.はFBIの国外版...ふぇえ!?雪郎のやつ、そこまで見越して清子と接触したのかよ。」

「(清子:)雪郎先生との接触はわたくしの意思です。誰かに唆されたわけでなく、先生が気になってメールしましたの。」

「(ミュゼット:)...結局私と同じじゃん。」

「(雅史:)そんなことより、そろそろ帰ろうよ。17時20分までが門限だから。」

「(ラファエル:)...そうだな。ハイペリオン、運べるか?」

「(ハイペリオン:)...面目ありません御主人様。ダイアナを守れなくて...。」

「(ラファエル:)...いいんだ。ダイアナが無事で何よりなのだから、あとは俺に任せて、雅史や風紀委員を自宅まで送りなさい。」

「(ハイペリオン:)...仰せのままに。」

「(清子:)...わたくしはまだやらなきゃいけないことが!!」

「(ラファエル:)危険な仕事はすべて俺が引き受けるから、風紀委員は雅史とともに家に戻りなさい。」

「(ハイペリオン:)悪いな、おかっぱ風紀委員...。」

「(清子:)っあ!!」


 「ハイペリオン」は2人を抱えて百貨店デパートメントを後にする。


「(ハイペリオン:)お、いいところにワープポインタが。さては魄子だな?」

「(清子:)は、離してくださいっ!!ハイペリオンさん!!」

「(雅史:)ちょ、杏璃と健太はどうするのよ!?2人を置いて帰るわけには!!」

「(ハイペリオン:)見たい番組あるだろ?18時からは尸魂界ソウルソサエティ・244話とか?」

「(雅史:)...欲に駆られようと、やっぱり2人を見捨てるわけには...。」

「(ハイペリオン:)そんなに幼馴染が大事なのかよ、でも御主人様に逆らえないし。2人のことは御主人様が守ってあげるからテレビでも見とけ...。」

「(雅史:)...ラファエルによろしく伝えてよ。」


 そのままポインタを潜り、自宅まで送る「ハイペリオン」であった。百貨店 デパートメントに残った「ラファエル」は、風紀委員2人と「中川魄子」の気配に気づいていた。


「(ラファエル:)陰に隠れている3人よ、出てきたらどうだ。」

「(魄子:)...気づかれた。うん、超官直々の頼みでダイアナを陰から見守ったよ。助けに出なくて、ごめん。」

「(和子:)私はただ、清子さんを見守っただけですよ。ね、委員長さん?」

「(増田:)ま...そういうことだラファエル。」

「(ラファエル:)超官直々、モニタリングといえど...コンブリオを存じない君らは、残り4ヶ月しかいられない俺の仕事に出くわさないことだ。」

「(ミュゼット:)来年3月末に帰国するでしょ?雪郎を知ってる私がラファエルの仕事に出くわしてもいいじゃん。」

「(ラファエル:)...あぁ。(溜息)一度もコンブリオに話していない知ったかぶりの君に何がわかる?コンブリオは、デリカシーに乏しく時には冷徹で、頑固な奴だ。初恋少女を喪い、グランファザーが七面一平を呼び出してまで孫を叩き直すつもりがシチメン姉妹は却下、姉妹揃って説得を試みてあの人は立ち直れたと聞くが、初恋少女の事は忘れられないらしい。いつだって頑な心でいる。」

「(ミュゼット:)そうそう、あの人は堅物だからね。...それで、御託はもういいかな?みんな事情聴取は済んだことだし、家に帰りたいんだけど。雅史と清子だけでずるい。」

「(ラファエル:)...そうだな。帰りたいなら帰っていい。魄子、ここにポインタを設置し、君らだけで帰れ。」

「(魄子:)あ、はい。」


 「魄子」の能力「サークルポータル」でポインタを作成し、皆はポインタを潜り帰宅していく。1人だけになった「ラファエル」、2人を帰し終えた「ハイペリオン」は御主人様の元へ。気が付けば17時30分、日が暮れていた。


「(ハイペリオン:)2人を帰してやりました御主人様。」

「(ラファエル:)ご苦労。さて、本題に入るとしよう。」

「(ハイペリオン:)...と言いますと?」


 「ラファエル」は携帯電話ケータイ(T-Mobile G1)を手に、電話をかける。相手は...あの「アレグロ雪郎」だ。


「(ハイペリオン:)俺だ。」

「(アレグロ雪郎:)なんだ、ラファエルか。学園生活はうまくいってるか?エドガーは今、祖父の下で仕事してるぜ。」

「(ラファエル:)建前はいい。...超官がいなくたって俺一人で使命を全うするにもかかわらず、彼女の意思とはいえど、風紀委員を巻き込んでまで取り入れるとはいったいどういう了見だ?俺では力不足なのか?あの姉妹のおかげで立ち直れても今は亡きポルカをいつまで引きずっている、どうかしてるぞコンブリオ!!」

「(アレグロ雪郎:)...いいか、巨悪に立ち向かうにはどんな手を使ってでも阻止する。それが俺のやり方だ。学園の生徒会を取り入れようとメッセンジャーで対話するも拒まれ、仕方なく別の方法を模索しているうちにメールが届いてさ。海水浴場にいたあの子が俺達コンブリオ家の、E.G.の情報収集に協力してくれるのだよ。一蓮托生ってことだし、巻き込んだって構わないだろ?」

「(ラファエル:)...コンブリオ...そこまで修羅場を潜りたがる人になったのか...。」

「(ハイペリオン:)...御主人様、そろそろここから離れないと...。」

「(アレグロ雪郎:)おっと、従者が心配してるぜ?現場から離れないとな。それより、あんたの妹が心配なんじゃない?搬送先の病院に向かい、顔出してこい。」

「(ラファエル:)...今日のところはこの辺にしておいてやる。進展があり次第、改めて連絡する。」


 後日...いや進展があり次第また連絡するといい通話を切る。「ハイペリオン」は「ラファエル」を抱え、従者とともに「ダイアナ」のいる病院へと向かう。命に別状はないことに安堵する2人。


「(ダイアナ:)タンコブだけで大げさな...。」

「(ラファエル:)無事でよかった...。」

「(ハイペリオン:)俺も...ダイアナを守れるほど強くなりたい...。」


 妹に涙を見せまいと、涙を流したくて流せない「ラファエル」であった。

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