序章 学園の始まり(1)

 序章 学園の始まり


 8月2日(日)


 編入試験に合格した編入生を迎えるために、体育館グラウンドフロア・メインアリーナで式を執り行われた。

 学園長「ラザール夢ノ橋」のお言葉、校歌といった普通の学校とは変わらぬオーソドックスな内容だった。

 式の終了後、この日以前より既に結成されている派閥「生徒会」「帰宅部」は今、活動開始した。派閥内の生徒の交流、2つの勢力の衝突、どれも絶えることなく活発していた。

 「大原雅史」が率いる「サッカー部」とその幼馴染は2つの勢力に関係なく、校外で活動していた。最初の活動であった......。


「(雅史:)活動し始めたのはいいけど、これからの僕たちは何して遊ぶ?やっぱ河川敷かせんしきかな?」

「(杏璃:)3人だけではさみしいので、ミュゼさんをあたしらの遊びに誘わなきゃでしょう。」

「(雅史:)ついでに姐さんも。オカリナの音色も捨てがたいし。そうと決まれば、携帯電話ケータイを使って誘おう。《まずは連絡先、藤田ハンナねえさんの電話番号はっと。》あーにちわ姐さん。今から河川敷で遊ぶけど、いけそう?」

『(ハンナ:)構わない。保護者同伴のつもりで向かう。』

「(雅史:)うん、よろしく頼むよ。[電話を切る動作]よし。姐さん来るそうよ。少し時間がいるみたいけど。ミュゼットとの連絡をよろしくね。」

「(杏璃:)できる限りやってみます。」

 遊びの勧誘して待ち続けて数分後...。来てくれたのは、ハンナだけだった。

「(ハンナ:)雅史くん、約束通り来た。」

「(雅史:)おお、これは姐さん。...ミュゼットはまだ来てないようだけど、見かけなかった?」

「(ハンナ:)いえ、見てない。」

「(杏璃:)そろそろ来るはずですが...。」


 【河川敷】

 そのうち、「ミュゼット」が集合時間より遅れてやってきた。

「(ミュゼット:)遅くなった、ごめん。」

「(雅史:)遅かったじゃんか。集合時間がとうに過ぎてるよ。どうしてなのか知らないけど。」

「(ミュゼット:)うん、ちょっと面倒なことが...実にいうと、樋串武学園・編入試験に落ちた不良グレに絡まれてね。もう。」

「(雅史:)それは困ったね。風紀委員の連中がなんとかしてくれるといいけど。それより、予定より遅れたが5人でサッカーしよっ。」

「(ミュゼット:)うん、そうだね。」


 ここにいる5人でサッカーを遊んでいた数分後......。緊急事態だ。

「(雅史:)あ、風紀委員だ。」

「(清子:)帰宅部...サッカー部のキャプテンさん、手を貸してくれくださる?通学路にゴロツキがいて困ってるもの。」

「(雅史:)そのゴロツキをなんとかするのが生徒会の仕事でしょ?あいにく僕たちの仕事じゃないんで他をあたってよ。」

「(清子:)......ふぅぅっ、帰宅部の下部に過ぎないサッカー部を相手にしても駄目、何を話しても駄目、しょせん帰宅部の下部ですわ。」

「(ミュゼット:)そのゴロツキって、私が見たという不良グレのこと?河川敷に向かう途中で、絡まれたよ。ホント参った。......風紀委員は何をしているのか。」

「(ハンナ:)風紀委員長のヨシオくんいる?風紀委員の仕事は街中のパトロールや治安維持のはず。違う?」

「(清子:)うう......委員長はだらけて仕事してないですの。だからわたくしら風紀委員構成員だけでやってるんですわ。人手が足りないなら仕方がないですわ。無理でも引きずって、手伝ってもらうですわ。」

「(雅史:)あぁわかったわかった。手伝えばいいでしょ?確か、通学路だよね。どこの?」

「(清子:)案内してあげますわ。驚きの光景を目にすることになりますわ。」


 「風紀委員」は「サッカー部」一同を通学路まで案内し、「雅史」がよく通る通学路のその驚きの光景を目のあたりにする。

 【通学路】

「(雅史:)...なんてことだ、僕の通学路が大変なことに...。」

「(清子:)あなたがたのでしたか。え?実はわたくしもですわ。それにしても、わたくしと同じ通学路とは驚きですわ。」

「(ミュゼット:)そうそう、このあたりで絡まれてね。困ってるんだ。」

「(清子:)当てにならない委員長はほっといて、わたくしらでなんとかしますわ。休憩所の守備は健太さん、お願いしますわ。」

「(健太:)硬い・強い・遅い三拍子揃ってるこの僕にお任せあれ。」

「(雅史:)司令塔は、僕かな。いや、風紀委員が適任か。姐さんはお助け役として、ミュゼットは、うーん。」

「(ミュゼット:)私がアタッカー、雅史は切り込み隊長でいいじゃないの?」

「(雅史:)そうだね。それじゃあ、行きますか。」

 「サッカー部」一同は出撃した。彼らにとって初任務であった。


 【根城(樋串武学園校門前)】

 複数の不良グレが湧いている通学路のほかに、不良グレの親分が「樋串武学園校門前」に立てこもっていた。

「(子分:)親分、風紀委員のやつが来ましたぜ。どうしまっか?」

「(親分:)ここはおれが守備する。おまいらはやつの進行を妨げよ。」

「(子分:)へいっす。」

「(親分:)...おのれラザール夢ノ橋。おれたちを不合格にしおって...。」


 【Phase-1】

 まずは、雅史たちがよく通る通学路。その通学ルートは編入前とは変わらない、「ハンナ」と一緒でいつも通りである。今になって不良がうろついている理由わけは「雅史」たちにはわからない。遭遇した場合は風紀委員「黒井清子」の指示を仰ぐ、すなわち「帰宅部」の下部が「生徒会」に従ってることになる。

「(雅史:)やっぱ風紀委員の指示より、対話したほうがよさそう。」

 行く手を阻む不良との対話を試みる「雅史」であったが...。

「(子分:)生徒会がいるじゃん。やべ、親分に知らせないと。」

「(清子:)そうはいきませんわ。迷惑なあなたがたを取り押さえることがわたくし風紀委員の仕事ですわ。キャプテンさん、やっておしまい!!」

「(雅史:)でも僕、暴力反対だよ。ボコるなんてことはできないよ。」

「(清子:)ボールがあるじゃないですの。わたくしはただ、立ちはだかる不良を突破したいだけですわ。そのボールで道を作ってらっしゃい!!」

「(雅史:)イエローカードを掲げられても知らないよ!!」

 サッカーボールを蹴り、不良グレを退けつつ道を作った。

「(清子:)やればできるじゃないですの。」

 お助け役「ハンナ」の助けを借り、ついに校門前まで着き、親分と対峙する。

「(親分:)く...風紀委員め。おれとやり合うつもりか。」

「(清子:)...どうしてそこまでするのです?編入試験に落ちたからといって、業務妨害する男がいますかっての!!」

「(親分:)...知りたいか?試験に落ちたといったな?否、おれたちにはてめーらのような金持ち生徒じゃねえから弾かれたんだ。ラザールめがな、富のある生徒やつしか見てねぇ。拒否られるおれの気持ちわかるか?」

「(清子:)...どうやら誰かと裏で手引してるに違いありませんわ。あなたがたはもう引っ込んでくださる?用無しですの。キャプテンさん、ゴールなさい。」

「(雅史:)ごっつぁんです!!」

 「雅史」のシュートで点を取った。親分はひっくり返した。

「(雅史:)ゴール!!よっしゃあ!!」

「(親分:)こんなやつらに点を取られるとは...。」

「(清子:)これでやっと制圧しましたわ。餅田さーん、いらっしゃいましたら、出てきてください!!」

 学園内から現れたのは生徒会長ではなく、超官「エドガー」とNo.2「ラファエル」だった。

「(エドガー:)あいにく生徒会長は御出になりません。なにの騒ぎかと思えば、鍋小路のいたずらですね。」

「(清子:)エドガー超官、それにラファエルさん。お出でにならないとはどういうことです?鍋小路さんのいたずらとは、そういうことでしたの。」

「(ラファエル:)生徒会長は今、鍋小路の悪行を追跡している。貴様ごときに止められるやつではない。」

「(清子:)風紀委員の力を以てしても、ですか。つまり、わたくしら力不足ですって言いたいですの?」

「(エドガー:)そのとおりです。鍋小路さんは自分より身分の低い他校の不良グレの大群を率いて学園の転覆を企てています。生徒会の下部である風紀委員の力を以てしても困難です。あとは生徒会に任せ、風紀委員は退くのです。」

「(清子:)しかしですが、退くわけにはいきません。」

「(雅史:)あのー、おしゃべりしているとこ悪いけど、帰宅部の部長が校内でよからぬことをしているみたいよ。」

「(エドガー:)あなたは確か、帰宅部の下部サッカー部のキャプテンとやらですか。...部長こと鍋小路さんが何かをしている、と申しましたね?私の後ろに鍋小路さんがいるとでも?」

「(雅史:)玄関でちらっとね。残りの不良を連れているよ。僕ら生徒以外の部外者って、学園の出入りはいいのかな?姐さんの手を貸したいんで。」

「(エドガー:)入校を試みる部外者には入校許可証が必要でして、手続きに時間が要します。だがそれは通常の学校の話、樋串武学園では手間なく数秒で出入りできます。そこの他校の生徒おふたりさんも気になるでしょう。見学してみてはいかがです?」

「(ハンナ:)雅史くんの保護者として見学してみたい。」

「(ミュゼット:)私は構わないけど。どんな学園か気になるし。...それより雅史、健太が置き去りになってるけど。」

「(雅史:)抜かりない、制圧のち携帯電話ケータイのメールで知らせた。間もなく着くよ。ほら、来たよ。僕らの壁の健太。」

「(健太:)わりと近かったんで早く着いちゃった。」

「(ミュゼット:)硬い・強い・遅いわりには早くない?」

「(清子:)そうしているあいだに、鍋小路さんの悪行が始まってしまいます。手を打たねばなりません!!」

「(エドガー:)おっと、そうでしたか。早急にかかるとしましょう。」

 樋串武学園校門前を制圧した。

 鍋小路の手先の不良グレは捕縛され、通学路騒動はひとまず収まった。この程度で収まるものではないということは、ここにいる生徒たちがよーく理解している。話はこれからだ。

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