モブの悪役に転生してしまったけど、追放されたくなかったので主人公の親友ポジを狙いに行ったら魔法を極めてしまいました
いぬぶくろ
目が覚めたらそこは、ゲームの世界でした。
目が覚めたら、そこは僕が知っている開発室ではなかった……。
「なっ、なんだこれは……」
俺――
それが今、目の前にあるのは見慣れた開発室のパソコンの前ではなく、温かい木彫の家具がふんだんに使われた――言葉を変えれば高級感ある部屋の一室に寝転がっていた。
「いったい、何だってんだこれは――」
眼鏡を上げようとしたが、俺の顔には眼鏡がかかっていなかった。
それどころか、ボサボサに伸びた髪も綺麗に整えられており、身だしなみも清潔感あふれるものだった。
「ヤバい……、ヤバいぞこれは。とうとう、変な夢まで見るようになっちまったか!?」
頬を叩くと痛みがあり、つねってみると同じく痛み、そして立ち上がると両足には「地面に立っている」と分かる重力を感じた。
その瞬間、「あっ、ヤバい。異世界転生した」と馬鹿な考えに思い至ってしまった。
「そうかー。そーなのかー。異世界転生ねぇ~」
「ハハハ」と笑ってみるけど、すぐに「いやいや、そんな訳ねぇだろ」とツッコミを入れる。
過労で頭がおかしくなって見ている夢と仮定してみる。
十分、ありえそうで涙が出てきた。
そこで頭を切り替えて「万が一、異世界転生していたら」という仮定で考えてみた。
「まっ、まずは魔法からだろう……」
ドキドキと動悸を抑えるように心臓をなだめ、手を前に出す。
「ファイアッ!」
しかし、何も起こらない。
ちょっと恥ずかしくなってしまったが、今の状況を解読するのにそれ以上に恥ずかしい
そして、魔法はないと来たもんだ。
「いや、本当にないのか?」
嫌な予感がして、再び手を挙げてみる。
「
小さく唱えると手から小さな火花が飛び散り木の床に落ちた。
「お
落ちた火花で裸足を焦がしながらも、ここがゲームの自分が開発していた「スター・オブ・ファンタジア」の中だということが確認できてしまった。
「なんてご都合主義。死に際の妄想で『死ぬ前に、一度、自分が作ったゲームの中に入りたいなぁ』なんて思っていたからかぁ!?」
一人騒いでいると、頭に嫌な予感がよぎった。
「じゃぁ、この体はいったい誰なんだ?」と。
「SSRだったら主人公のレオンだ。声は男だからヒロインという線は、面白いが消える。親友のマナスでもSRまで行けるはずだ」
「そうと決まれば、顔の確認をしなければ」とさんざん、騒いでおきながらキイッと静かにドアを開けて廊下に出る。
まだ早朝なのか廊下はシンと静まり返っているが、遠くでは人の気配が感じられる。
与えられている部屋の調度品から、この家の召使的存在ではないと思うけど、自分が誰か分かる前に誰かと会うのは控えたい。
家の構造とは、ウィンチェスターのような作り方をしなければ、どこも似たような作りになる。
気配を消しながら一階に下りて、さらに人の気配がしない扉を一つずつ開けていくと、目的の洗面所はすぐに見つかった。
石造りの流しに、ちょっと映りが悪そうな鏡を見つけ、意気揚々と近づいていく。
「さてさて、俺は誰になっているん――だ!?」
鏡に映し出された姿を見て驚いた。
SRなんてとんでもない。SSRなんてもってのほかだ。
「なんだって、
僕が転生したのは、「スター・オブ・ファンタジア」の中で主人公と敵対するジグレッド・ウィラの取り巻きの一人であるケイオス・アニックスだった。
それだけならまだしも、ケイオスは
ジグレットは追放されるだけで生き残っているというのに――だ!
「ヤバい……ヤバいぞ、これは」
今がいつなのか分からないけど、すぐに行動しないと取り返しがつかないことになる。
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