カッパセラー10冊の著者が贈る『カッパの恩返し』
cyanP
第1話 カッパを助けてみたものの
ボッチャァァァァーンッ!!
俺はひっくり返って泥水の水たまりにはまった。
背中からケツにかけての半身がドロドロになった。泣きたくなった。
うんこ色の泥がべったり付いてて目を背けたくなる惨状だ。
ただでさえ外見を気にしないシャツINズボンというダサダサのスタイルの俺なのに、この上汚くなってしまったらどうする。
テレビで『謎の遊具』と取り上げられていた公園がわりと近くにあったんで、動画投稿しようと、軽い気持ちで遊んでいるところを撮影しに来た。
運悪く、きのう雨が降ったばかりのところへ。
公園は剣竜川の河川敷、水はけは恐ろしく悪い。
遊具の足元にあったドロ水の水たまりをまたいで、少々無理な体制でコマ形状の遊具の端っこにぶっとい足をかけた途端、グルン! とそれは回った。
たちまち俺はバランスを崩し、ものの見事に背中から水たまりに落下した。
『ボッチャァァァァーンッ!!』 俺のぽっちゃりした肉体が水をはねのける。
まるで柔道の『1本ッ!』って聞こえるくらいにその水音はこだました……。
ピ~~~ヒョロヒョロ……。
上空でトンビが旋回しているのが見える。
「……あ~、いい天気だ。」 青空に目を細めた。しばし現実逃避──。
もう遊具はいいや……。シャツもジーパンもドロドロのぐちゅぐちゅだ。
どうしようかなぁ~、これ……。 このままじゃ帰りのバスに乗れないぞ。
仕方がない、恥ずかしいが服を脱いで剣竜川で洗うしか無い。
こんな見晴らしのいいところでパンツ一丁になるのかぁ~。
「もう! センパイ、何をやってるんですかー!!」
頭の中で、バイトの後輩の響子ちゃんの声が聞こえた気がした。
不器用な俺が、いつも面倒をかけて怒らせている年下の女子だ。
だから、たまにはおもしろ動画でも見せて喜ばせたいなぁ、と思ったんだが。
やれやれ、俺はまた派手に失敗をしてしまったようだ……。
そんな事を考えながら鋼板で作られたパラソルの下のベンチに腰掛けていた俺が、ぼんやり視線を前にやると、『ゴルフ禁止』の看板がある芝生の広場、大きな柳の木の下で子どもたちが騒いでいる。
「派手に遊んでるなぁ……」
と思ってたらどうも様子が違う、一人の子どもを取り囲んで足蹴にしているご様子。こりゃイカン!
「あー、これこれ、やめなさい」
俺が声をかけると、こどもたちは足蹴にしていた子どもを残して「わーい!」と素直に引き上げていった。
「うるせー!」とか言ってくるナマイキなガキどもだったらどうしようかと思ってたからほっとした。
──と、それどころじゃなかった、蹴られていたのは人間ではないのだから。
なんと緑色の子鬼。いわゆるゴブリンのような外見に、頭頂部にはツルッとした円盤。
「カッパだ」
俺は声に出していった。
するとカッパはやれやれといった様子で起き上がり、俺の方を見て。
「ありがとう、デブ」 と言った。
俺は瞬時にコイツがいじめられていた原因を理解した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます