後日譚 鴎
茶々
鴎 後日譚
鴎に食われる蟹を見た。
砂浜に二匹。沈かに在った。
打ち上げられたのか、空から啄まれたのか。はたまた元から死んでいたのか。
鴎は紅の差さったその口に蟹を押し込む。蟹は赤かった。
あぁ何とも生臭い光景だなと、ふいと目を逸らした先に、影が映った。
今度は人が死んでいた。 白く冷たく、赤かった。
二人寄り添って、柔く艶かしい朱のベールに包まれていた。
私は、それに妙な静かさを感じた。気持ち悪さとも、心地好さとも違う感覚。
温い潮風が漂うようだけの午後に僅かな刺激。視界に入るのは、赫と海ばかり。たれか後ろ髪を引く。
ふいと目前に喫茶店が浮かんできた。古ぼけた、青に良く映える石造りの建物だ。
今度はこの店にばかり目が行ってしまう。私は先刻まで何か見ていたろうか。赴くままに歩を進める。
緩く海風に抱かれ、終に海に溶け込んだ気分になった。波に身体を任せる内に喫茶店に着いた。
からころと音を奏でる扉が開く。ウヰスキーと気怠い煙草の残り香が出迎えた。そして茜いドレスの美しい女も。
後日譚 鴎 茶々 @kanatorisenkou
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