第54話
ここまで設定を詰めていって、一旦手を止める。
10階が今のところ最後の予定だからね、ちょっと考えるよ。
どうかな、魔物の種類が少ない?どう?
『そうですね、敵対する人類種を省いているということもあるので、バリエーションは見た目の差異を作ることで増やすしかないでしょう。あとは人型の魔物の持ち物をドロップ品として落とさせるということですね』
そうね。ああ、魔物に人がいないんだな。そうか、特に気にせず省いていたわね。やっぱり抵抗あるものね。
うん、見た目のバリエーションを増やせば種類の少なさは多少はごまかせるか。あとはドロップ品の差異も作れるってことだね。よしその方針で。
あとはここまでを確認してもらった結論が「難しすぎない?」ということだった点が注意するべきことかな。
どうも罠が効き過ぎる感じなのよね。でも罠が肝だとも思っているから使いたいわよね。
謎解きとかのギミックを増やすのもやりたいから、ここまでで罠を見せておきたいということもある。うーん、通路の罠を減らして扉とか宝箱の罠を増やしてっと。
『魔物の種類が少ないことを考えると、罠の多さは逆に緊張感を高めるよい要素になると思いましょう。複合罠ですとか魔物と罠の連動はさすがに致命傷になりかねませんから極力避ける方針ですし、各種ゾーンやエリアの封鎖といったギミックはここまででも使っています。難易度の上昇の仕方がきついといっても一応現段階では10階を最深部として作っているのですから仕方がないところでしょう』
そうねえ、1つ階を降りるごとにぐっと難易度が上がるのは仕方がない面はあるものね。難しい分、良いものも得られるから頑張って欲しいわね。
宝箱の中身と魔物が落とす魔石の価値は少し高めに設定しておいた方が良いかもしれないわね。稼いでもらわなくちゃ。
ところでこの世界にあるのかどうかよくわからない使い方をする現代日本のあれやこれやは宝箱に入れても良いのかしら。
『家電製品を魔道具と主張していくのは良い手段でしょうが序盤はさすがに避けて終盤に少し入れてみましょうか。あとは装飾品、美術品ですね。これも1号の管理しているものを見る限り、効果は高そうです。ギルドの値付けを見てみたいですし、試しにいくつか宝箱に入れて市場に流してみましょう』
ちょっと思いつくものをサンプルとして作っておきましょうか。装飾品の値段が低めだったとしても低層で宝箱に入れられるでしょう。
美術品は、わたしのセンスの問題もあるのだけれど、よくわからないのよね。絵画とか彫刻とか、どうなのかしら。
『家に絵も飾っていますしおおよそ問題はないのではないかと思いますが、宗教が絡む絵画や彫刻などは気をつけた方がよいかもしれません』
ああ、それは面倒くさそう。そういえば教会に宗教画っぽいものもあったし、神像がばっちり飾ってあったわね。あの雰囲気が出てしまうようなものは避けましょうか。
あとは武器防具の価値がさっぱりわからないというのも困るわね。一度その手のお店を見てみたいのだけれど、難しいわよね。
『現状ではどうしようもありませんね。宝箱に入れるものやゴブリン、オーガらが持つ装備は木、革、鉄を基本にしておきましょう。それであちらにあったような装備を再現してみて、反応を見ることにしましょう。あとはギルドを誘致してしまえばどうにでもなるだろうと思ってはいますが』
ギルドと冒険者頼みよね。資料もあるだろうし、売店も来てくれるだろうし、冒険者の装備を実際に覗いて、それを反映させるしかないわよね。
よし、概ね方針としてはこんな感じかな。
それでは最後に地下9階、そして10階の設定を詰めて行きましょう。9階から降りる階段は演出込みで長いものに変更する。その階段の降り口には「この先×××の私有地。立ち入りを禁ず。無断で立ち入ればそのものには災いが訪れるであろう」といった感じで何かしらのメッセージを書いた看板を置いておいて、雰囲気を更にアップ。
そして10階は初めてワンフロアを一つの部屋として構成。しかも地面がこれまでの石材ブロック製だったところへ、土や草のものに部分部分で切り替わっていく。しかも周囲には立木や倒木、岩石なんかがある。
要するにダンジョンの中にノッテの森を再現する形だね。
降りた場所は相変わらずのダンジョンで石材ブロック製だからまだここまでの雰囲気が残っているけれど、でもここからは雰囲気が一変しますよという宣言になる。
ここはイベント戦の会場なので通常の魔物は無し。
そして階段から降りた場所から正反対まで進んだところが到達点。壁と門を使ってその先のエリアとの間を区切る。そして門の前にはボスだよ。まさにイベント戦の相手だね。
いかにも門番、でもここまでたどり着けるパーティーなら苦労するかもしれないけれどちゃんと倒せる難易度を考えないとね。どうせなら派手な相手がいいよね。ジャイアント、デーモン、キメラ、ドラゴン。どんなのがいいかな。ここは良く考えよう。
さあ地下10階まで一応の完成を見ました。
どうかな、難しすぎないかとは言われたけれど、10階を一つの区切りにして、現状門は開かないようにするからね、そこまででクリアとしてもらう。そうするとこれくらいの上昇曲線でいいんじゃないかな。
わたしが思うダンジョンの難易度なんて、これよりもっと厳しいものだからね。全滅とかロストとかを当たり前とした設定なんだから、それよりは簡単だよ。
『トラップやギミックをもっと取り入れたいところです』
そうなのよね。正直少し物足りない。
もちろん基本は押さえたつもりだし、致命傷にはならないけれど回避方法や回復方法を用意しておかないと苦労するものにはしたつもり。
それでもバリエーションがね、ちょっと少ないと思うのよ。もっとあの手この手で冒険者を苦しめたいよね。
ただ10階到達で1階の隠しエリアにある昇降機を使った移動が完全解放されるし、その先は一度難易度の調整を入れて、ダンジョンの構造も一新するからね、そこからだね。なんたってキャンペーンシナリオはここからが本番なんだから。
『一度屋外風の場所に出ての塀と門ですからね。楽しみにしていてほしいですよね』
ね。そのためにも期待を煽るような宝物は用意しておきましょう。
門の前、塀に沿って右か左に進んだところに半分埋まったような状態で宝箱を一つだけ配置しておく。
その中にメッセージを残す。箱の中には昇降機の部屋のカギ。このメッセージで先にあるものへの期待感を煽る。しかもこの宝箱だけは復活しないからね。一度きりのメッセージだ。ギルドの上の方、何だったら国の上の方まで届いて欲しいね。
ダンジョンを発見すれば、最初にギルドから調査のためのパーティーが派遣されてくると聞いた。
叔母様たちのパーティーがCランクだという。下がFで上がAだと言うのなら、Cは中堅で良いだろう。それなりの実力のパーティーが来るということなら、来るのはBが妥当だと思っている。
そして難易度設定的にはBが10階ボスを苦労しながらもギリギリ何とか倒せるんじゃないかなというもの。もしかしたらレイド戦を想定するかも。昇降機を開放するからね、それもできるんじゃないかなと思っている。
そう、わたしの想定としては10階到達までをCランク、クリア想定をBランク。当然それ以上のランクなら門から先が活動場所と考えている。そして次のボスはA相当を想定。当然その先はA以上の活動場所になると、そんな感じなので最終的にはAでも難しいかもというところまで引き上げようと考えているのよ。
これが全部キャンペーンシナリオの舞台にもなるのよね。メインストーリー以外にサブストーリーもたくさん考えないといけない。
『10階から先に関しては地形バリエーションも増やしますし、魔物の連携、連動なども取り入れていきますから、多彩な戦闘を楽しめるでしょう。せっかく昇降機も付けるのですし、大勢が参加できるようなイベント戦はあっても良いかもしれません』
やっぱりレイド戦が盛り上がるかもしれないわね。そうするとやっぱりそれに相応しいシナリオが欲しいよね。今考えているものを少し膨らませようか。6階で開示する情報を増やしましょう。仕込みは1階からしていって、6階でババーンと見せて期待を煽って。いいかも、いいわね。いやー、ゲームっぽくなってきましたよ。楽しいわね。
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