第7話

異世界転生を果たしてから1年と少し、ただ成長することに一生懸命で、神様からもらったはいいものの使い方もわからず放置状態だったダンジョンマスターのスキルが火を噴くときがついに来た!


なーんて、そんな簡単な話ではありませんでしたとさ。


『何をひとりで納得しているのですか?』


いやー、結局今の時点でできることって無いんだなって思って。


『それはそうでしょう。20x20の単一階層のダンジョンを1つ作ったとして何ができるというのですか。しかもマスターは現在1歳です。動くこともままなりません。一体どこへダンジョンを作るというのですか。

ダンジョンコアの作成自体は成功しましたから、これで問題なくスキルが機能することが確認できたのです。大事なのはここからです。

現在コアを作成したことによりDPが残り5000となっています。コアを設置してフロアを1つ作成するだけでも1000必要です。これで残り4000。そして罠1種、魔物1種と決まっていますが中身が設定されておらず実際には何もできません。結局のところ、現在できることはフロアを1つ設置することだけとなります。残りの4000は何か項目を追加することに使うべきです』


わかる。

具体的に数字と項目の中身を見せられるとふざけんなーってちゃぶ台ひっくり返したくなる。何もないじゃないね。これ、罠の中身を設定した段階で2000飛びそうだものね。


『はい。現状、ダンジョンコアへの項目の追加は慎重にならなければいけません。そこでいくつか検証を行いましょう』


お、何だろう。コアちゃんがそう言うってことはかなり面白いことになるのでは?


『面白いかどうかはわかりませんが。

まず、ダンジョンコアはダンジョンではありません。コアを設置することでダンジョンが生成される。最大で20x20の1フロアが確定です。ところでマスターのこのベッドですが、当然20x20の範囲内に収まりますよね』


それは何かね。このベッドをダンジョン化しろと?

すること自体はいいけれど、大丈夫かな?一度設置したら解除できないなんてことなら困ったりするんじゃ。


『コアを設置することでダンジョンが生成される。設置できるということは移動することができるはずですし、生成したダンジョンを閉鎖してコアを回収することもできるはずです』


できるよね。というか初期1階層なら階層が深くなったら当然コアの場所も下へ下へ動かさないとだものね。それこそダンジョンマスターならできないと。


『‥‥はい。ご報告があります。スキル画面から管理へお進みください』


おっと何よ、怖い言い方しないでよ。

どれどれ管理管理。スキルの管理がめーん。


‥‥、コアの移動とダンジョンの閉鎖があるじゃん。


『ダンジョンマスターならできないと、と考えたからでしょうね』


え。

神様は項目の追加にDPが必要だって言っていたわよね。

わたしがあるはず、あるべきと思ったものが随時追加だって、言って。え、もしかしてわたしがスキルにあるべきって思ったからなの。え、都合良すぎない?


『マスターが考えたところで私がスキルに項目を追加しましたが、無事、スキル画面に反映されていますね。これでスキルの機能と判断できる要素は何の問題もなく追加可能だと確認できました。現在はコアを設置していませんので、設置が選択可能状態、移動と閉鎖は選択不可状態です。さ、コアの設置をしてみましょう』


おっけー!

いくよ、コアの設置っと。お、第1階層を作成しますかって。はいいいえって。やっていい?


『どうぞ。一応ベッドが範囲だと想像しながらの方が安全かもしれませんから、そこは忘れないように』


おっけーよ。

ベッドが範囲ね。絶対20x20に収まるものね。ここではいを選択。ぽちっとな。


【ダンジョン:ステラ・マノ・セルバのベッドが誕生しました】


わー!わー!

来たよ、来た来た。わたしのダンジョン誕生!ダンジョン名があれだけど!

‥‥、ポイントがどうこうって言ってたのに作っちゃって良かったの?大丈夫?残り4000よ?


『はい。計画通りですのでご心配には及びません。十分足りる形での計画となりますので』


おー、いつの間にかそんな計画が。

それじゃわたしはこのまま踊っていていいのね。おーおー、やーやー。

たぶんその辺りにいるメイドさんは笑っているだろうなあ。でも仕方がないじゃない。楽しいんだもの。


『設置が選択不能、移動と閉鎖が選択可能状態であることを確認。やはりスキルの機能ととして認識されたものは問題がないようですね。さあ続けてダンジョンコア、あるいはダンジョンの機能として必要なものを検証しましょう。何か思いつくものはありませんか?』


うーん、言われて思いついたけれど、ダンジョンの出入り口って開きっぱなしなのかな。

ダンジョンの中を整備する前なのにいきなり冒険者が入ってきちゃったりしたら、まずいんじゃ。

こういうのって、整備が終わってよしってなってから出入り口開放するものなんじゃないのかな。

神様はどうしていたんだろう。作りっぱなしであとはコア任せだったみたいだかれど、コアの基本機能のなかにないものなのかな。最初から中身が整ったダンジョンが生まれるみたいな口振りじゃなかったんだけど。


『どうでしょう。例えばこのベッドならば出入り口は天井部分全面で、そこが常時解放状態だとしても違和感はありませんが、そうですね、扉のある迷路などを想定した場合は違和感はありますね。どちらかというと中身が完成したからダンジョンとして誕生し解放されたとなるべき。

はい、確認できました。スキルの機能としてはこちらで追加してもウィンドウ内の項目へは反映されなかったのですが、スキル画面の管理項目内、ダンジョン:ステラ・マノ・セルバのベッドに出入り口の封鎖が追加されています。追加はさていますが、項目自体がグレーアウトしていますからこれはダンジョンの機能と判定されたということですね』


あるね。ありました。そしてグレーアウトしていて触っても選べない。スキルの基本機能は無条件追加、ダンジョンの管理運営に関する物は追加要素ってことなのかな。

わたしがダンジョンの機能の話な気がしていたから、たぶんそれが影響しているね。

そしてこの項目をオンにするにはDPが2000必要になる。今の手持ちは4000しかないから、いったん解放は保留してもう少し考察してみよう。


これ、いまは項目が少なくてできることがってなるけれど、時間をかけてわたしがいろいろ考えているとできることが増えていくってことよね。うーん、でもさ、ある程度方針というか今後の展開を考えていかないといけないような気もするし。


『提案があります』


‥‥、さては考えていましたね?

聞きましょう。


『マスターはまだ1歳です。ダンジョン関連で何もできないことに問題は一切ありません。そしてスキルの内容は私の方でもすべて見えています。この状況を利用し、マスターにはこれまで通りの生活を送っていただき、そこで考え、想像し、妄想していただきたいのです。あんなことができたらいいな、こんなことができたらいいな、と。特に確認などは必要ありません。あとはこちらで把握しておきます』


おー、それはいい。

何しろこっちは1歳児。毎日忙しいものね。

眠っている時間はなーんにもわからないし、食べて動いて遊んでお話しして、やること山盛りだものね。

とりあえずスキルのことはお任せできるのなら助かるわ。よろしくね、コアちゃん。


『ところで』


はい。


『今まで気になってはいたものの、あえて聞かずにいたことをお聞きしますが。‥‥コアちゃんというのは?』


今更何を言っているの。呼び方でしょ。や、コアちゃんだからさ。呼び方をね?ね?





それからの毎日は元通り。

1歳から2歳へ、子供は成長するものなのです。

言葉はいろいろ話せるようになってきた。長くは続かないのは舌とかがまだまだ未発達なのかな。自分の頭ではできていても、その中から単語でぽんぽん言う感じ。

聞いている言葉も自分の口から出る言葉も日本語じゃないのにちゃんと理解できていて、ついでにどこかで聞いたような単語が混じっているのは変な感じ。わたしの名前のステラってやっぱり星のことよね?

この辺りの世界観とかはもう神のみぞ知るだし、異世界転生特典てことでよしとする。


あとは超重要事項としてトイレトレーニングが始まった。今まで言わなかったけれど、これまではずっと布のおむつだったの。最初のころは身もだえするほど恥ずかしかったけれど、どうしようもないことなのですぐに諦めた。だからこそ、トイレ!しっこ!って言ってトイレに連れて行ってもらえるのはうれしかった。

便座が現代の西洋風便器の形にちゃんとなっていて、なんと水洗なのよ。拭くのは自力だけど紐ひっぱると貯めてある水が流れる仕組みでばっちくない。すごい。

わたし元現代日本人だからね。使い方はすぐにわかったよ。えらいよ。ほめてほめて。

それから、おっぱいはおしまいになりました。これはとてもがっかり。1日1回でもお母さんに抱っこされているのは大事な時間だったから。

でもお母さんにとっては重要なことだったみたい。メイドさんから聞いたのだけれど、どうも家のお仕事の方がとても忙しくなっているみたいで、毎日机に向かって書類とにらめっこらしい。

お父さんと、その補佐で執事さんがついて2人で町とか王都とかに行っていて、書類仕事がお母さん担当になってしまっていて、お兄ちゃんやメイドさんたちは手伝えないから本当に大変みたい。そっかーおっぱいの時間て結構わたしが甘えているから時間かかっていたと思うのよね。でもあの時間はわたしにとっては大事だったのよ。お母さんもそれがわかっていて一緒にいてくれていたのだとは思うけれど。ありがとう。

と、そんな感じで1年近くがすぎていったのよ。

その間、当然スキルの方もね、考えていて。ぼーっとするかわりに、一人遊びついでに、もやもやっと、いろいろなゲームの小説のアニメのマンガのあれやこれやを思い出したりしながら積み重ねていった。

ああだったらいいなこうだったらいいな、あんなだったら面白いな、こんなだったらそんなこともできるなを山積みにしていって。

あとのことはコアちゃんよろしくっ!てしてきた。

そうして2歳の誕生日も過ぎて少しした頃、コアちゃんから待望の次の一手がもたらされたのでした。

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