9水門にて/別れの詩

もし死ぬのなら、阿寒の雪を見てみたい

もし死ぬのなら、楽園の花を見てみたい

もし死ぬのなら、時の流れを止めてみたい

もし死ぬのなら、世界を平和にしたかった


小笠原諸島の凪いだ渚に、空と色と有明の月

沙羅双樹や菩提樹、金木犀に木蓮の下で

失われた時を求めて、酔った夢に生きてみた

歓喜に呼ばれて目覚めた日

やっと、望まぬ鳥かごから比翼の鳥が飛んでいく


まだ憶えていますか。僕はここだよ。まだ死んでなんかいない。

伽藍洞な宇宙は泣いた。永遠ももう終わるから。

還る場所を、水面に映るその顔を、やっと思い出せたから。


Fin

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