フリーズ・全能と死の狭間で

「春は尊し、彼は散る」とは全知の少女の口癖だ。


 彼とは誰なのだろうと常々疑問に思っていたが、それは彼女の妄想なのだと近頃悟った。いや、彼女の頭の中では彼は存在しているのだから、少なくとも彼女にとって、彼は実在するのかもしれない。


「全能と死の狭間で、己に慄く少年よ」


 私はその少女に恋していた。だが、彼女の口から出てくるのは全能の少年の話ばかり。彼女の初めての相手はその少年だったという。


 フリーズのようにこの感傷を昇華したいよ、僕のために。


 いや、君のために世界を凍結させたのか。

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