エロゲの親友キャラに転生した俺、主人公のハーレムを奪ってしまう〜親友キャラなのにヒロインたちとカラダの関係になってしまった〜

水間ノボル🐳@書籍化決定!

第1章

第1話 エロゲの親友キャラに転生した


「哲彦くん。あたしと……しよ?」

「えっ?」

 

 甘い香りのする、女の子の部屋。

 そこに男女が二人きり。

 俺の目の前でメインヒロイン——桐葉が、制服のボタンを外す。

 汗ばんだシャツが肌に張りついて、丸い双丘の形がくっきり見える。


「桐葉が好きなのは、アイツじゃないのか?」

「違うよ。あたしが好きなのは——哲彦くん」


 桐葉が俺の膝にまたがった。

 柔らかい太ももの感触が、伝わってくる。

 ぴったりと密着した俺たち。

 豊かな胸が、俺の鼻先にある……


「ダメだ……こんなの」

「哲彦くんに、あたしの初めてをもらってほしい」


 桐葉は俺にキスをした——


 ★


 「ついに、ついにクリアしたぞ……っ! 桐葉ルートを! やった、俺はやったああああああああっ!」


 早朝5時、俺の部屋。

 ちゅんちゅんと、鳥の鳴く声がする。

 俺はエロゲ「瑠璃色の空に染まる」の、桐葉ルートをクリアした。


 桜坂桐葉——俺の推しヒロインのルートを攻略。

 黒髪清楚で幼馴染で主人公くんのことが一途に好きな、まさに王道ヒロイン。

 ライバルのアイドルをやってる転校生ヒロインに勝利して、主人公くんと結ばれる感動ストーリー。

 立ち絵も美しく、俺は絵師さんの画集まで買った。


「えっちシーンの画像もコンプリート……か。これで完全にクリアだな……」


 「瑠璃色の空に染まる」は3人の攻略ヒロインがいる。

 俺は桐葉ルートを最後にしてすべて攻略した。

 もうこのゲームで、やることはなくなった。


「もうこんな時間か……そろそろ寝るか……」


 残業を終えて、金曜の夜から桐葉ルートをプレイし始めた。今は土曜の朝だ。

 これから夕方までガッツリ寝るぞ……

 

 ★


「哲彦くん、哲彦くん、聞いてるのー?」

「うん……なんだ?」

「なんだ? じゃないでしょ?! あたしの話聞いてるの?」

「この声は……って、ああああああああああっ!」


 (えっ? えっ? ど、どうして……? どうして桐葉ちゃんが俺の前にいるの?!)


 俺の目の前にいたのは——桜坂桐葉、だった。

 長いまつ毛の大きな瞳をパチクリさせて、叫んだ俺を驚いた顔をして見ている。


「しーっ! 哲彦くん、ここファミレスだよ? みんな見ているから大きな声出さないで」

「て、哲彦? 俺が……哲彦?」

「? 哲彦くんは哲彦くんだよ。 何言ってるの?」

「嘘、だろ……」


 (マジで信じられない……)


 俺は主人公の親友キャラ——海堂哲彦に転生した……らしい。

 哲彦は、学園で5股をかけて女子の好感度ランキング最底辺の男。

 イケメンだが残念なやつ……そんなキャラだ。

 

「本当にどうしたの? 夏の暑さでおかしくなっちゃった?」


 本気で心配そうな顔をする桐葉。

 ここはなんとか誤魔化さないと……


「いや……大丈夫、大丈夫。ちょっと叫びたくなっただけだから」

「そうなの……?」


 状況をまず整理しよう。

 俺は「瑠璃色の空に染まる」の主人公の親友キャラに転生した。

 周囲を見渡してみると、たしかにここは「瑠璃色の空に染まる」に出てきた背景のファミレス。

 俺は全ルートクリアしたから覚えていた。


「でね、俊樹ったら、アイサちゃんとデートに行くんだよ? 幼馴染のあたしを差し置いて! これって浮気じゃない?」

 

 よほど話したかったことなのか、桐葉は前のめりになって、俺に激しく同意を求めてくる。

 藤丸アイサ――桐葉と主人公の鏡俊樹を取り合う転校生のアイドル。

 子どもの頃、俊樹に助けられたことがあるとかなんとかで、俊樹と再会するために転校してきたヒロイン。

 幼馴染キャラの桐葉と俊樹を奪い合うライバルだ。


 (けっこうエグいんだよな。このエロゲ……)


 そう。このエロゲ、瑠璃色の空に染まるは強烈なハーレムがコンセプトだ。

 個別のヒロインルートに入っても、ライバルヒロインが何度も誘惑してくる。

 もちろんライバルヒロインの誘いに乗れば、確定ヒロインの好感度が下がる。

 それでバッドエンドを迎えることに……

 しかも桐葉ルートのバットエンドでは——桐葉が病死してしまうのだ。

 推しキャラが死ぬ……俺には耐えられない。


「ああ。うん。そだな……」

 

 考えることが多すぎて、俺は桐葉に対してついつい適当に返事をしてしまう。

 推しキャラとは言え、桐葉の愚痴を聞いてる余裕は今の俺になく……


「そうでしょ! もうこれは完全に浮気だよ!」

「うん。浮気だ、浮気だ」

「どうしたらいいと思う?」

「そうだな。殴れば?」

「うん。殴るって……ええぇ?!」


 (あ、つい流れで言ってしまった……)


 だけど、この世界の主人公、俊樹は殴られてもいいと思ってしまう。

 まだ俊樹は桐葉と付き合っていない。だからアイサとデートしても浮気にはならないが、桐葉の好感度は下がる。

 「今回の」俊樹はポンコツ主人公みたいだ……

 

「いや、冗談だよ。グーで殴りたくなるけどさ、きっと桐葉のところに俊樹は戻ってくるさ」

「どーしてそんなことわかるの?」

「だって桐葉ルートだし……じゃなくて、長年俊樹の親友やってるから、なんとなくわかるというか。あはは……」

「? よくわかんないけど、親友の哲彦くんがそういうなら、正しいんだと思う」


 桐葉はどこか安心した顔して、ポテトを口に放り込んだ。

 納得してくれたならよかった。


 実は……こんなシーンはゲームにない。

 哲彦が桐葉の愚痴を聞くなんてところは。

 プレイヤーは主人公の俊樹視点でしか世界を見れないから。

 ここは親友キャラとして、主人公と推しが幸せになるために、2人の恋を応援しないといけない……のか?


「今度は桐葉が俊樹をデートに誘いなよ。ほら、すぐに俊樹にLINEするんだ」

「でも、もし俊樹に断られたら……」

「大丈夫だ。俊樹は絶対に断らない」

「妙に自信あるね……」

「俺は親友だから」

「ありがとう。哲彦くんの言う通りやってみるよ」


 桐葉ルートに入ってるから、俊樹くんには桐島とのデートを断る選択肢はない。


「よおし、俊樹にLINEするぞー」


 気合いを入れて俊樹へ送る文章を考える桐葉。

 すごく真剣な顔でスマホの画面を見つめている。

 桐葉はやっぱり、俊樹が好きなんだな……


「……できた。哲彦くん、見てくれる?」

「いいのか? 俺が見ても?」

「うん。哲彦くんは俊樹の親友だし」

  

 親友のことが好きな女の子が、その親友に送るLINEを俺が見るとは……ちょっとややこしい状況だ。


 桐葉からスマホを渡される。

 俺はスマホの画面に目を落とした。

 どれどれ……桐葉はどんなことを書いているのか。


 (こ、これは……ヤバい?!)



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【★あとがき】


モチベになりますので、


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新作です!こちらもよろしくお願いします!


勇者に殺される悪徳領主に転生した俺、序盤に鍛えすぎたせいで勇者の地位を奪ってしまう〜逆恨みした勇者に狙われているけど、全然気づきません〜

https://kakuyomu.jp/works/16818093081729592845


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