第5章:海の日の思い出

 海の日を迎えた博多は、夏の陽気に包まれていた。瑠璃と葵は、この休日を利用して糸島の海岸へドライブに出かけることにした。


 車を走らせながら、二人は窓越しに広がる美しい田園風景を眺めていた。


 海岸に到着すると、二人は深呼吸をして潮の香りを楽しんだ。砂浜を歩きながら、地元の漁師たちが働く姿が目に入った。


「すみません」瑠璃が勇気を出して声をかけた。「今日獲れた魚、少し分けていただけませんか?」


 漁師たちは二人の素朴な様子に好感を持ったようで、快く新鮮な魚を分けてくれた。


「お二人さん、博多の人じゃないみたいだね」年配の漁師が話しかけてきた。


「はい、最近引っ越してきたんです」葵が答えた。


「そうかい。博多の海の幸を楽しんでくれるのは嬉しいよ。ほら、これはサービスだ」

漁師は笑顔で、追加の魚を二人に渡した。


 瑠璃と葵は感謝の言葉を述べ、その場でバーベキューを始めることにした。波音を聴きながら、新鮮な魚を焼き、会話を楽しむ二人。


「葵、こんな風に海を見ながら食事するの、贅沢ね」


「うん、人生って本当に予想できないものだね」


 夕暮れ時、二人は星空の下で将来の夢を語り合った。


「私ね、博多の伝統工芸を学んで、自分の作品に取り入れてみたいの」瑠璃が目を輝かせながら言った。


「それ、素敵だね。僕は、地元の企業と協力して、博多の魅力を全国に発信する仕事がしたいな」葵も熱く語った。


 互いの夢を聞きながら、二人は支え合うことを誓った。手を繋いで帰路につく車中、二人の心はさらに近づいていた。


 家に戻ると、瑠璃と葵は静かに見つめ合い、そっと唇を重ねた。海の潮の香りがまだ残る、優しいキスだった。


「瑠璃、今日は特別な一日だったね」


「うん、葵と一緒だから、どんな日も特別なの」


 窓の外では、夏の夜空に星が煌めいていた。瑠璃と葵は、これからも二人で多くの思い出を作っていくのだろうと、胸を躍らせた。


翌朝、瑠璃と葵は遅めの朝食を取りながら、昨日の海辺での出来事を振り返っていた。部屋には、まだかすかに潮の香りが漂っている。


「ねえ葵、昨日の夕陽、本当に綺麗だったわね」瑠璃が懐かしむように言った。


「うん、あの瞬間、時が止まったみたいだったね」葵も同意した。


 二人は黙ってしばらく、昨日の思い出に浸っていた。そして、ふと瑠璃が思い出したように言った。


「そういえば、今日は札幌の友達の誕生日なのよ」


「本当? 連絡するの?」葵が尋ねた。


 瑠璃はうなずき、スマートフォンを手に取った。メッセージを送りながら、瑠璃の表情に懐かしさが滲んでいく。


「ねえ葵、札幌での最後の夏、覚えてる?」瑠璃が突然聞いた。


 葵は少し考え込んでから答えた。「ああ、もちろん。二人で小樽に行って、ガラス工房を見学したんだよね」


「そう! あの時、私たち将来の夢について語り合ったわ」


 二人は黙ってしばらく、札幌での思い出を反芻していた。学生時代の情熱、初めて出会った時の緊張感、そして未来への大きな期待。それらの記憶が、まるで昨日のことのように鮮明に蘇ってくる。


「でも」葵が静かに言葉を継いだ。「昨日の海辺で語り合った夢は、もっと具体的で実現可能なものになっていたね」


 瑠璃は頷きながら、葵の手を握った。「そうね。私たち、ここ博多で少しずつ成長しているのかもしれない」


 二人は改めて、博多での生活がいかに彼らを変え、成長させているかを実感した。札幌での思い出は大切だが、今の博多での日々もかけがえのないものになっている。


「ねえ葵、これからどんな冒険が待っているのかしら」瑠璃が目を輝かせて言った。


「さあ、どんなことが起こるかわからないけど」葵は優しく微笑んだ。「一緒なら、どんな冒険も乗り越えられるよ」


 二人は互いに寄り添いながら、窓の外の博多の街並みを眺めた。過去への懐かしさと、未来への期待が入り混じる複雑な感情の中で、瑠璃と葵の絆はさらに深まっていった。


 そして、これからの日々への希望を胸に、二人は新たな一日を迎える準備を始めた。博多での生活は、まだまだ多くの可能性を秘めている。これからどんな素晴らしい経験が待っているのか、二人は想像を膨らませながら、互いの手をしっかりと握り締めた。


 窓の外では、夏の陽光が街を包み込んでいた。瑠璃と葵は、これからもこの街で多くの思い出を作っていくのだろうと、胸を躍らせた。そして、新たな一日への期待を胸に、二人は優しくキスを交わした。

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