BLOOD-EYES

秋乃楓

第1話 血筋 -ハジマリ-

自分の血筋、それを辿っていくと先祖という存在に行き着く。私の場合はかなり変わっていて他人に公にした事はない。

結末は最初から決まっている…全てフィクションだと思われるから。

もし仮に公にしても揶われるだけだろうし

誰も信じてはくれない。

でも、私は自分が課せられた使命を知っている。


-悪しき者達を討滅し人々を守る事。-


それが私の役目、私にしか出来ない…使命。

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青林高等学校。

そこは男女共学の学校であり1年生の男子の数が157人とやや多く、女子の数は138人。

進学校というよりは何処にでも有る普通の高校で鈴風市という場所に存在している。

そこに通っている1年の男子生徒、高岸剣介たかぎしけんすけは一風変わった人としてクラス内では有名だった。上は黒いブレザー、中は白いワイシャツに赤いネクタイ。足元は灰色のズボンを履いている。これが青林学校の男子の制服。


「そういや剣介、今度の日曜日に心霊スポット行くけど…お前も来るか?」


彼の元へ来て話し掛けて来たのは何処か遊び人の様な性格をしている彼は今川達也いまがわたつや、薄茶色のマッシュヘアが印象的だった。高校に進学してから出来た友人達の中で彼は変わっている方でもある。


「……また行くのかよ?この前も行ったばっかじゃんか。」



「良いだろ?それにユーレイ見えんのお前位なんだしさ。その方がムード的に盛り上がるじゃん?何なら女子数人誘うか?」


達也の言う通り、剣介には幽霊が見える。

正確に言えば見えてしまっている…というのが正しいだろうか。彼が小学生になる前からずっとそれ等は見えていた。

電柱の陰、住宅地の路地裏、街中のビルの屋上、病院の中、学校の校舎の中等その他色々。それに誰かへ話したとしても解ってはくれない事は既に慣れている…。

それに今、自分の目の前に居る達也も実際は半信半疑でしか聞いていないのは事実だろう。


「呼んでも来やしないだろどうせ。……で、今度は何処へ?」



「よくぞ聞いてくれました!!次の舞台は廃病院、へへ…本当に何が出るか解らねぇぜ?んじゃ、今日の夜7時にいつもの場所で!透達にも声掛けとくわ。」



「はいはい…どうせ行ったって何も出ねぇと思うけど。」


彼はニコニコと笑いながら立ち去った。

いい加減、付き合わされる身にもなって欲しいのは事実。溜め息をついて項垂れていた彼の様子を彼の左側に腰掛けていた1人の少女が見つめていた。長い髪を赤いリボンでポニーテールに纏めた彼女は机の中から取り出した教科書を筆記具の傍らに置いて、次の授業が始まるのを大人しく待つ。そこへたたっと走る様に彼女の元へまた別の女子生徒が駆け寄って来た。彼女の格好は上は黒のブレザー、中に白いワイシャツと首元には赤いリボン、青いチェック柄のスカートを着ている。これが青林学校の女子制服である。


「らーんッ!どした?そんな浮かない顔して。悩み事?もしかして恋とか?」



「…真希。別にそんなんじゃない、少し暇だって思ってただけ。」


金髪を左側へサイドテールに結んだ彼女の名前は倉橋真希くらはしまき、ムードメーカー的な存在。そして今彼女と話している同じ格好をしている彼女のは土御門蘭つちみかどらん、四角い黒縁の丸レンズの眼鏡を掛けた彼女は真希とは違って大人しく性格な控え目の持ち主。整った顔立ちは可愛らしく、まるで大和撫子という言葉が似合う。


「そっかそっか。それより聞いた?今井達、また例の心霊スポット行くんだって。懲りないよねぇ、ホント。」



「…心霊スポット?」



「そうそう、駅から離れた所にある確か…H総合病院だっけ?自転車なら20分位で行ける場所で、女の幽霊とか色々出るって巷じゃ大評判。実際に行ったら本当に出たーなんて話もあるんだってさ。」



「…。」


蘭はそれを聞いて無言で頷いていた。

H総合病院、そこは6階建てで確かに肝試しをするのには持って来いかもしれない。

だが彼女はそれとは別の何かを薄らと悟っていた。


「あ!蘭、もしかしてこういう系苦手?」



「…え?ちょっとだけね。もうそろそろ授業始まるから席に座ったら?」



「あーッ、誤魔化した!!素直じゃないなぁ?此奴ぅ!」


真希が笑いながら蘭の事を左肘で小突くとそれを蘭が左手で受け止めていた。

そしてチャイムが鳴ると共に授業が始まった。

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放課後、剣介達が足早に出て行った後の事。

蘭の元へ来たのは紺色の髪を背中辺りまで伸ばした少女。そして右隣へ来ると話し始めた。彼女の名前は奥寺由利香おくでらゆりか。クラスは異なるが蘭とは交友関係にある1人。


「例の病院へ行った人達が何人か失踪してるって噂聞いたんだけど...蘭はどう思う?」



「…多分怪異だと思う。由利香は高岸君達の監視をお願い。」



「OK、任せて。それとこれ...椿さんから。メンテナンス終わったから蘭に渡して欲しいってさ。」


由利香が手渡して来たのは細長い紫色の方な袋、長さは105cm程。それを受け取った蘭は「ありがとう」と呟く。校舎に差し込む夕焼けが彼女達の事を照らしていた。

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それから数時間後に日が完全に落ちて街は闇に包まれる。ポツポツと路地にある街灯の明かりが灯り始め、通りを行き交う人達をビルの明かりや店の看板等の明かりが照らしていた。グレーの半袖シャツと紺色のジーンズを着た剣介は達也達と共に向かったのは例のH総合病院。4台の自転車がそれぞれ病院を仕切っている金網前へ停められると

剣介は周囲を見回していた。


「なぁ、誰も来ないよな?見つかれば俺達──」



「大丈夫だって、ほら行くぞ剣介!!」


達也がフェンスへ両手を掛けてよじ登り、続いてよじ登ったのが黒髪でショートヘアの小林透こばやしとおる。そして剣介の横で立ち止まったのは何処か気弱な印象がある黒髪にボブカットの少年、佐藤優太さとうゆうた。剣介とはクラスこそ違うが友達同士である。


「や、やっぱ出るのかなぁ?剣介はどう思う?」



「大丈夫だと思うぞ?今の所は...。」


先にフェンスを超えた達也から催促された2人は諦めムードでフェンスを超える。

そして達也を先頭にして病院のドアを開けて中へと入って行った。

エントランス内は当然ながら電気は通っていない事から真っ暗、頼りになるのは達也と剣介の持つ懐中電灯の光のみ。

既に先客達が訪れた事もあり、院内は廃墟特有の見るも無惨な姿になっていた。

落書きは当たり前で足元にはカルテを撒き散らしたのか書類が散らばっている。


「すげぇな...マジの廃墟だよ。剣介、どうだ?」


並んで歩いていると先頭の達也が振り返って話し掛けて来る。


「......何にも感じねぇよ。程々にして帰ろうぜ?バレたら後々面倒だし。」



「バカ、心霊写真の1枚か2枚撮らないで帰ってどーすんだよ!明日クラスの奴等に自慢してやるんだから!!」



「へいへい......。」


階段を上がって今度は2階へ上がった。

2階は受付や外科、内科等の各部門の部屋の表札が見える他、1階と同じでドアや壁にも落書きがされていた。周囲を見ながら歩いていた時、カタンッ!!という何かが倒れた様な乾いた音が響く。

優太が思わず「ひぃッ!?」と悲鳴を漏らしてしまうと達也がヘラヘラ笑いながら彼を揶揄う。


「優太ぁ、そんなんで一々ビビってんじゃねぇよ。男だろ?」



「だ、だってッ......!!」


反論し掛けた時、今度は透が口を開く。


「......今、誰か横切ったような...?」


スッとライトが照らしている先の通りを指差した。彼の話では黒い影の様な物が横切ったのだという。だが達也はそんな事信じず、「気の所為だろ」と流してはそのままどんどん進んで行ってしまう。そして途中で立ち止まり、今度は携帯を取り出して写真を撮り始めた。


「ダメだな...何も写らねぇや。次行くぞ次!」


ある程度撮った後に次に向かったのは3階。

そこは手術室等が有るが本来なら立ち入り禁止の場所。しかし施錠されていた筈の鍵は壊されていて、奥へ進める様になっていたのだ。達也に続いて立ち入ろうとした時、剣介に異変が起きると彼は視線と共に寒気を感じ始めた。


「いッ!?何だこの感覚...まさか...!?」



「おい剣介?遂に出たのか!?」


意気揚々と振り返った達也から少し離れた所にある大きな四角形の柱の陰。そこからボロボロの服を着た何者かが覗いていた。

間違いない、このフロアには何かが居る......。

それは此方の明かりに気付くとフラフラした足取りで歩み寄って来る。茶色くボロボロになったTシャツ、そして両膝に穴の空いたズボンを着ていた。


「みんな、早く逃げるぞ!!」



「はぁ?何言ってんだよ、これから此処を──」



「いいから早くしろって!!」


剣介が達也の右手を引っ張って無理に引き寄せ、階段のドアを閉めようとした瞬間。突然それは走って来てバンッ!!とドアへ勢い良くぶつかる。辛うじて閉めた事で何とかなった。優太が達也を受け止め、4人はその場から逃げ出した。


「け、剣介君!?どうしちゃったんだよ!?何か変だよ!?」



「ッ...いいから早く行くぞ!!」


来た道を引き返して下へ逃げ、非常階段のドアを開けて室内を見てみると先程剣介が見たそれがその階にも居た。今度は見た目も変わっていて女性の様な者や若い男性等、様々。その誰もが人間ではない顔をしている...まるでホラー映画に出て来るゾンビと同じだった。


「くそッ...此処もダメか!!」


先程来た階の上からは今もバンバンとアレがぶつかる音だけが響いていた。


「な、なぁ剣介!これって例の噂の奴だろ!?動画...動画撮らないと!!」


達也が慌ててカメラを向けようとしたのを剣介が片手で遮る。


「バカ言え、撮ってる場合か!?」



「良いから退けっての...ッ!!」


剣介を跳ね除けた達也は携帯の動画撮影機能を用いて音のする方を撮影し始めたのだ。


「お、おい達也!早く行くぞ!!もう充分撮っただろ!?」



「もう少しだけ...おわぁあッ!?」


達也が撮影していたのを何かを察した透が止めさせ、彼を連れて再び上へ駆け上がった。

その直後に開いたままのドアから剣介が見た連中がバタバタと追い掛けて来る。

4階へ辿り着いた4人はドアを何とか開けて駆け込んでは必死に走り続けていた。


「くそッ!何なんだよアイツら!?」



「なぁ剣介!アレなんだよ!?ゾンビか!?それともマジな奴か!?」


透が彼へ話し掛けるが「俺も知らねぇ!!」と返って来る。走っていた最中に優太が足を何かに引っ掛けて頭から転んでしまった。3人が顔を上げると奴等が差し迫って来ているのが解る。


「うわぁあッ!?」



「お、おい!早く行くぞ!!」


剣介の横に居た達也が2人に促して来ると

彼はこう続けた。


「悪いな優太...!今までありがとな!!」



「達也、まさか優太の事見捨てる気か!?」


反論して来たのは透、彼を何とか助けようとしたがそれを達也が止めた。


「運が悪かったんだよ...!!俺らも食われたくねぇだろ!?あんなんに食われてたまるかってんだ!!お、俺は先に行くからな...助けたけりゃ勝手にしろ!!」


誰もが極限状態、そういう判断に陥るのは仕方がないが幾らなんでも酷すぎる。そして剣介が透の左肩を掴んだ。


「...俺が優太を助ける、透は先に行け!!達也を頼む......!!」



「で、でも剣介...お前は──!?」


剣介は何も言わず、透へ頷き掛けると彼もまた頷いてから走り去る。そして優太を助ける為に彼は無茶を承知で近くに落ちていた鉄パイプを拾って駆け出して行った。


「おらぁああぁッ!退けってんだぁッ──!!」


右手のそれを荒々しく振り回しながら威嚇しては優太との距離を何とか詰め、彼の手を取ると走り出そうとした。だが向こうとの距離も縮まりつつ有ると彼が解った瞬間、1人が飛び掛って来た。


「シャアアアアアアァアッ──!!」



「く、喰われるッ!?」


剣介は優太を左手で庇ったまま視線を逸らすが飛び掛って来た何者かは突然、破裂音と共に仰け反って倒れた。何が起きたのかさっぱり解らない


「え...?」



「...早くこっちに!!」


聞こえて来たのは女の子の声、振り返るとそこには細長い何かを手にしたワイシャツ姿の蘭が立っていたのだ。


「つ、土御門!?どうして──ッ!?」



「...そんなの良いから早く!!」


咄嗟に剣介は優太を連れて彼女の元へ駆け寄ると蘭はコツコツと歩いて剣介達の前へ。そして狙いを定めると歩きながら再び何発も発砲し連中の眉間を撃ち抜いて撃退していく。


「...これだけの数、一体何処から...!!」


彼女が思考を巡らせた直後、3体が駆け出して襲い掛かって来る。その光景を後ろで見ていた剣介が思わず声を上げた。


「やべぇッ...!土御門ぉおッ!?」



「くッ──!!」


蘭は素早く身体を左へ捻り、持ち方を変えると同時に右手を柄に添える様に握り締めては鞘の上部のスイッチを左手の親指で押しこむ。それから一気に引き抜いて目の前の敵の頭部を纏めて斬り払うと真っ赤な血飛沫と共に肉塊がバラバラに散り、白い壁や薄桃色のフローリング張りされた床が飛沫した物達で真っ赤に染まる。彼女が手にしていたそれは刀で銀色の刃がギラリと光り輝いていた。


「...残り4体、纏めて斬る。」


すぅっと彼女が深呼吸した直後、再び連中は襲って来る。だが彼女は顔色一つも変えず1人目を袈裟斬りに一閃、飛び掛って来たもう1人を左一文字斬りに、更にもう1人を左逆袈裟による一閃で斬り裂く。そして残る1人を頭から股下へ掛けて真向斬りに斬り裂くと辺りは肉塊と血の海が広がっていた。


「...ケガは?」



「俺は大丈夫...けど優太が右足を......。」


ワイシャツや顔に返り血の付いた状態で蘭が近寄ると鞘を付近へ置き、ポケットから左手で白い札を取り出す。そして彼の前で屈んでから抑えている箇所へ宛てがった。

すると青白く光ったそれは

彼の抑えていた箇所にピタリと白い湿布の様に貼り付いた。


「そんなので良くなるのかよ!?」



「...あくまで応急処置。此処を出たらお医者様に診て貰って。」


彼女は立ち上がると遠くを見つめていた。


「そうだ...!透と達也が!!」



「...解ってる。貴方達はこの子と逃げて、あの程度の怪異なら焼き払えるから。」


蘭が左手の中指と人差し指だけを突き出し、それ以外を内側へ折り畳むと青白い光が剣介と優太の足元へ姿を現す。それは白い毛並みを持つ狐の様な生き物だった。


「これって...狐か?」



「...早く行って、2人は私が何とかする。」


鞘を拾った蘭は2人と1匹を残し、後方を駆けて行くと暗闇に消えてしまった。

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気配だけを頼りに彼女が向かったのはこの病院の地下、仮に出口を求めて逃げたのであれば上ではなく下側。階段を勢い良く下りながら周囲を警戒しつつ下へ下へと降りて行く。そして降りた末に【死体安置所】と書かれた表札を見つけて足を止めた。


「...2人はこの中。」


彼女は落ちていた懐中電灯を拾って中を照らして進んで行く。明かりで照らしていると銀色の取っ手が付いた正方形の引き出しが幾つも並んでいた。つまり、彼女の右側にも同じ物がそれぞれ広がっているという事を現している。抜けた先に有る大きなドアを開いて懐中電灯で照らしてみるとそこに達也と透が部屋の隅でガタガタと震えているのを見付けた。


「...居た。」


彼女が近寄ろうとした時、突然明かりが点くと共に黒い何かが彼女の近くで集結しそれが人の形を型取り始める。そしてそれは顔に白い仮面を持つと同時に左右に6つの目が姿を現した。


「...亡骸なきがら。ヒトの魂の集合体、そこに邪念が入り交じって具現化した者。」


彼女がそう呟いた時、亡骸と呼ばれた怪物は彼女へ目掛けて右手を伸ばして攻撃を仕掛ける。飛んで来たそれを身を屈めて躱しては直後に駆け出して斬り掛かると間合いを詰めて右側へ鋭い一閃を放った。

確かな手応えと共に黒色の液体が飛沫すると

亡骸は彼女から離れ、今度は左手で薙ぎ払う様な攻撃を繰り出すと蘭は後方へ宙返りしそれを避ける。そして着地と同時に来た左右の手による攻撃を彼女は身体を後方へ反らせて躱した。


「...くッ!!」



「グァアアアァアァッ──!!」


突然、亡骸が地面を滑る様に移動したかと思った瞬間、防御の構えが間に合わずに蘭の腹部へ激痛が走った。肺の中の空気を全て吐き出させられた彼女は両目を見開く。そして突き上げる様な形で天井に勢い良く背中から叩き付けられる。スカートのポケットに入れていた懐中電灯と左手に握っていた鞘が地面へ落下した。


「うぐぁあッ!?」


そして力無くだらんと手足を垂らした直後、投げ捨てられると吹き飛んだ彼女の身体は診療台へぶつかると周囲に置かれていた器具が物音を立てて地面へと飛散した。


「がはぁッ!?げほッ、ごほッ、ごほッ......!!」


視線を戻した時に刺突による追撃が彼女へ襲い掛かり、到達する直前で蘭は飛び退いて躱してはその場に立ち上がり、口の中に溜まった血を床へ吐き捨てた。


「...アナタを斬る。此処はアナタの居るべき場所ではない。」


蘭は赤いリボンを左手で解くと纏められていた黒く長い髪が一瞬だけ舞う。そして目を閉じてから眼鏡を外しそれ等をリボンで一括りにしワイシャツの胸ポケットへ入れると彼女は目の前の敵を再び見つめた。


「──朱眼しゅがん。」


直後に灰色の両目が紅く血に染った様に変色したかと思えば彼女は無言で一直線に駆け出す。再び亡骸が右手による刺突を繰り出したかと思えばそれを刃で自身の右側へ弾き飛ばし、更に追撃で襲い来る左手による叩き付けをすり抜けて躱した。更に敵との間合いを詰めて行く。


「はぁああぁッ──!!」


そして、たんっと地面を右足で強めに蹴って僅かに跳躍すると柄に左手を添えてその勢いのまま相手の顔面へ自身の刀の刃先を突き立てる様に刺突を繰り出したのだ。


「グギィイイッ!?ギッ...グギッ...ギッ、ギギギ...ギ...ッ......!?」



「...ッ!!」


そして刃を引き抜いた直後に亡骸は地面へ倒れると痙攣を繰り返した後に消えてなくなった。蘭はそのまま達也達の方を振り返ると2人は寄り添った形で気を失っていた。

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その後、4人の事を由利香へ任せた蘭は1人で刀袋を手に夜道を歩いて帰宅する。彼女の家は和風のやや大きめな屋敷とも言うべき場所で木製の引き戸を開くと彼女と似た面影のある女性が立っていた。彼女の名は土御門 小夜つちみかどさよ、蘭の母親。白い着物を着ている彼女は蘭へ語り掛ける様な優しい口調で話し掛けた。


「お帰りなさい、お風呂沸いてるから先に入ってらっしゃい。」



「...ありがとうございます、お母様。少し苦戦致しましたが御役目は無事に果たせました。」


蘭がそう伝えると小夜は小さく頷いた。

そして手にしていた刀袋からを刀を取り出すと専用の刀掛けへ置いてから彼女は靴を脱いで家の中へ。そして風呂場の方へと足を運んで行った。


-土御門 蘭、16歳。彼女は土御門という名門の家柄に産まれし子供であり、同時に退魔師の血を引く家系の少女である。-









































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