王の帰還

グスタン

第1話 「プロローグ」

大戦の中で、無数の命が奪われた。人間、エルフ、ドワーフ、そして他の多くの種族たちが、かつてない規模の戦争の犠牲となったのだ。希望は、まるで消えゆく星のように儚かった。


この虐殺の元凶は誰か?それは悪魔たちだった。神々の支配を断固として拒み、秩序を乱した反逆者たちである。神々、すなわちこの世界の守護者たちは、彼らを説得し降伏させようとしたが、その願いは虚しくも闇に消えていった。


しかし、なぜ神々は自らの創造物である悪魔たちを抑えられなかったのだろうか?


その答えは、神々自身の存在に起因している。彼らは現実の繊細な均衡を守る役割を担っていたため、天上の玉座から動くことができなかったのだ。直接干渉することができない神々は、代わりにその莫大な力の一部を人間たちに授けた。そして、4つの種族からそれぞれ1人ずつ選ばれた若者たちが「神々の祝福」を受けたのだ。彼らは無力で小さな存在だったが、その祝福によって、世界を守るべき英雄へと変貌を遂げた。「天の意志に選ばれし王」として悪魔たちに立ち向かったのである。


新たに得た力を手に、4人の英雄たちは軍を率いて悪魔たちに反撃を開始した。しかし、勝利が目前に迫ったその瞬間、悪魔たちは裏切りを働き、闇に消え去った。彼らは再び復活するための策を練り始めたのだ。


そんな混乱の中で、1柱の神が常識を超えた計画を立てる。それは他の神々ですら予測できないものだった。知恵の女神アテナは、終わりの見えない破壊と愛する人間たちの喪失を目の当たりにし、正気を失った。そして、彼女は致命的な過ちを犯してしまう――悪魔たち自身にその神力を与えてしまったのだ。


この過ちは戦況を大きく変えた。アテナの力を手にした悪魔たちは、圧倒的な力で敵を蹂躙し始めた。ついには4人の英雄たちも倒され、彼らは悪魔王アスタロトの従者へと堕ちてしまう。神々に匹敵する力を持つ存在、アスタロト――彼の暴政は何世紀にもわたって世界を支配した。


神々は絶望の中、均衡を取り戻すために最後の策を講じた。それは、「選ばれし者」に祝福を与えるのではなく、全ての種族にその力を分け与えるというものであった。この「恩恵」は前例のないものだった。戦いや経験を通じて無限に強くなれる力。それを得た者は死を超越し、想像を絶する能力を手にすることができる。


神々は最後の希望を4人の赤子に託した。それぞれ異なる種族の血を引く彼らは、まだ自らの運命を知らぬまま、この世界を救う重責を背負う存在となったのだ。


プロソポンの四つの魂、悪魔に支配された種族の選ばれし者たち:


エルフの少女:エレノア・アスター


かつてエルフの女王だった母を持つ彼女は、アフロディーテの祝福を受けた。この祝福は、無尽蔵の魔力と比類なき魔法の適性を彼女に与えた。エレノアは魔法を学ぶ必要すらなく、魔法は彼女の存在の一部として自然に流れ出した。世界そのものが彼女の意志に従うかのように。


ドワーフの青年:ロバート・スメッドソン


悪魔王の妻の奴隷だった父を持つロバートは、エルフの女王のもとに隠された。ヘファイストス神の祝福を受けた彼は、どんな武器でも創造できる力を持ち、それは彼の魂そのものから生まれるかのようであった。


獣人の少年:レイノルド・コーエン


麻薬密売人の息子として生まれた彼は、生まれながらにマルス神の祝福を持ち、並外れた身体能力と魔法の力を兼ね備えていた。


ハイブリッド:コーリグレイ・ギャラント


人間と竜人の混血児として生まれた彼は、悪魔王の兄であるベルゼブブの孫であった。彼の存在そのものが、絶大な力を秘めていた。


コーリグレイが他の3人と出会うと、彼は「完璧なる混血児」と呼ばれた。力、魔法、魔力、武器の技術、すべてにおいて群を抜いていた彼は、プロソポンの四つの魂を率いる隊長としての地位を確立したのだ。


しかし、離れ離れにされた4人の子供たちは、どうやって出会ったのだろうか?


神々は「団結が不可欠である」と認識し、それぞれの子供に補佐役を割り当てた。その補佐役は天使の頂点である「大天使」だった。しかし、これらの補佐役たちは、いかに神聖な存在であろうとも、悪魔に対しては無力だった。彼らの傲慢さと誇り――天上の存在であるがゆえの性質――が、悪魔という脅威に対抗する能力を鈍らせてしまったのである。


宣戦布告:グレイからアスタロトへの書簡


悪魔王アスタロトはその玉座から立ち上がり、体全体が冒涜的な力で震えていた。そして彼は虐殺を開始し、グレイ率いる部隊の大部分を壊滅させた。戦場は混沌とした地獄絵図と化し、生存をかけた戦いが繰り広げられていた。数日後、悪魔王アスタロトは城から降り立ち、「四つの魂」と直接対峙することになった。彼らはすでに世界の壮大な戦いの中で重要な役割を担い始めていた。


最初の衝突で放たれた力は大地を揺るがし、空を裂く雷鳴が轟いた。「四つの魂」は一瞬たじろぎ、その隙をついてアスタロトの破壊的な攻撃が彼らを押し返した。しかし、その混乱の中でグレイはすでに王の背後に回り込んでいた。エレノアは戦略的に魔法を駆使し、重力魔法を発動。王を大地深く押し込め、その耐久力を削り取ろうとした。


ロバートとレイノルドは戦いの終わりを見据え、それぞれの槍を悪魔王の身体に向けて放った。その狙いは、防御の隙間をついて深く貫くことだった。


追い詰められたアスタロトは、体内から衝撃波を放ち、大地を揺るがす絶大な破壊力を解き放った。しかし、その瞬間、グレイはすでに動いていた。彼の剣――ロバートが鍛え上げたザドキエル――が王の心臓に突き刺さった。この剣は単なる武器ではなかった。その特異な能力により、戦場で鞭のように自在に形を変えることができた。


だが、アスタロトは負傷し、崩れかけながらも最後の力を振り絞った。そして、彼は自身の身体を爆発させるという最後の手段に出た。猛烈な爆発が戦場全体を飲み込み、周囲のほとんどの軍勢を壊滅させた。その余波が収まると、グレイの身体は地面に横たわり、無惨な状態にあった。しかし、彼の不死性が傷を癒し始めるはずだった。


だが、何かがおかしかった――再生の力が発動しなかったのだ。焼け焦げ、認識できないほど傷ついた身体で、グレイは苦痛に叫び声を上げた。助けを求める彼の前に、3つの影が近づいてきた。それは、レイノルド、ロバート、そしてエレノアだった。だが、彼らの目には冷たい無関心が宿り、かつての盟友に対して何の慈悲も見せなかった。


グレイがついに意識を失うと、「四つの魂」の3人は彼を棺に閉じ込め、強力な魔法で永遠の眠りにつくよう封印した。そして、地の底深くの洞窟に彼を隠したのである。


一方で、3人の魂はそれぞれの種族を支配し始めた。その支配は絶対的であり、彼らの不死性がその統治を永続的なものにしているかのように思えた。


しかし、物語はそこで終わらない――いや、終わるはずがなかったのだ。

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