スポットライトは魂を照らす
しょーたろう@プロフに作品詳細あります
Prologue
古びたアパートとビルの間の、裏路地―。
それだけが条件のその道は、何処からでも通じうるし、何処からも閉ざされている。
猫の子ですら通ることを避けるような小汚い道の先―。
ネズミが漁ったゴミ箱が、悪臭を撒き散らしながら行く手を塞いでいるその先に、「今」はある。
まるで、何人も近寄ることを拒むように、そのステージは佇んでいた。
「屋外ステージ Midnight」と書かれた看板が、ライトを固定する鉄柱に括り付けられていたが、片方が緩くなっているのか、傾いたまま放置されている。
不意にスポットライトが、何者かを照らし出す。
「ようこそぉ!誰もが主役のステージ【ミッドナイト】へ!今宵の【演者】は貴方ですか?」
ピエロのような格好をした、身の丈2mを優に超える、男とも女ともつかぬそいつは、人とは思えぬほど長い指を伸ばし正面を指す。
「そこの貴方ですよ!ほらぁ!その手に持った板っぱちから間抜け面をぶら下げて、今!図星でドキッとした、ア・ナ・タ!」
ピエロはくつくつと笑う。
大衆を楽しませるために涙をこらえて笑うはずのピエロとは思えぬ、自分だけが良ければそれで良いというような、ある種の傲慢さを含んだ笑いだった。
「ご安心ください。このステージで提供されるのは、身を焦がす程の想いに焼かれた者達の最期の一幕。そもそも貴方、死んでないでしょ?」
恭しくお辞儀をしながらそいつは語る。
かと思えば、勢いよく両手を開き、恍惚とした表情で続きを吐き出す。
「観客は紳士淑女の皆様方と、ワ・タ・シ。さぁ、今夜も素敵なキャンプファイヤーといきましょう!」
スポットライトが順繰りと消えていき、ステージの上に居たはずのピエロは跡形もなく消えていた。
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