ハイジとアンのおかしなコンビ

菜の花のおしたし

第1話 初対面は山

アンはアルムの山に着いた。


「おじさん、どうもありがとうございます。

荷馬車に乗せていただいて。

とーっもいい牛ですわね。お尻のあたりのお肉はきっとシチューにしたらとろけそうです。」


荷馬車のおじさんは、なんて事をいいやがるんだ、これは馬だ!牛じゃない!

呆れた娘っ子だとびっくりしました。


「さーて、この小道を登ればハイジのうちね。

木から木漏れ日がさしてるわ。

光輝いてる。ここは、ひかるシャボン玉の小道だわ。素敵、素敵!」

想像してるアンは胸のあたりで手を合わせるのが癖でした。


「私は妖精、背中には羽があるの。

小鳥さん、さあ、いらっしゃい。」


と言うようにたかだか10分もかからない道のりを1時間も想像という悪い癖にとらわれてしまい

ハイジを待たせるのでした。


かたや、ハイジはと言うと、

「おじーさーん!今何時?

もう、アンが着くはずなの?

どうしたのかしら。迷子になったの?」

さっきからおんなじ事ばかりをおじいさんに

聞いていました。


「ねぇ、ヨーゼフ。

お前、見てきたくれない??」


ヨーゼフはしっかねぇなぁと思いましたが

おじいさんもそう言うのでのっそりと

立ち上がり、歩いて行きました。


「ワン!ウオワン!」


「どーしたの?ヨーゼフ?」

ヨーゼフはハイジにほら、あそこに

アンがいるよと教えてくれてました。


「あーーー!アンだぁーアンだ、アンだ!

あはははーー!」

ハイジはアンのところまで転がり前転で

行きました。


「んまあ、なんて事なの?

人間の子供なのにこんな風に転がって。

ああ、サーカスの芸人さんだってこんなに

うまく転がらないわ。

あなたがハイジなの?」アン


「そうよ、そうよーぉ。

ハイジよぉーーっ。」ハイジ


ハイジはすっ転がってアンの足元で止まりました。

立ち上がって、アンを見つめました。


「うわー、すごい、すごい!

髪の毛が真っ赤だわ。」ハイジ


アンはびっくりしました。

アンはにんじんみたいな髪の毛の色を

とても気にしてましたから。


「ハイジ、がっかりしたでしょう?

私ってにんじんみたいでしょ。

そばかすだらけでガリガリで、、。

何故、神様はこんな仕打ちをなさったのかしら。ブランドとは申しません。せめてブラウンだったら。私の気持ちはこれほど惨めじゃないのに。」アン


ハイジはぽかーん。

アンの嘆きがさっぱり意味不明です。


「えー?なんで?

アンの髪の毛はにんじんじゃないわ。

アルムに沈む夕日の色だわ。

あのね、山の夕日はすごいの、ほんとよ。」

ハイジ


「ハイジ、あなたって、お優しいのね。

私を元気づけようとしてるのね。」アン


「一緒に夕日を見ようよ、あのね、とーても

きれいよ。

私の自慢の夕日なのよ。」ハイジ


そうこうしてると山に太陽が沈み始めました。

真っ赤な太陽が山の中に落ちて行きます。

そのオレンジがかった光景。


「ほら、アン。あの色よ。

あれはアンの髪の色なの。そうよ、そうよ。」

ハイジ


「まあ、なんて色なのかしら。空全体を

埋め尽くすようなオレンジ色。

あれが私の髪の色なのね。

ハイジ、ありがとう。嬉しいわ。

だって今までこんな風に言ってくれた人は誰もいなかったもの。

私、これから自分の髪の毛の色は

アルムの夕日って言うわ。

あーなんていい言葉なんでしょう。」アン


こうしてふたりの初対面は、和やかに

終わりました。







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