転生村長〜【時間操作】でスローライフ! 障害は全部『なかったこと』に〜

馬路まんじ@「二周目モブ」連載中!

第1話 アルテ・ランドという男1




「数奇な人生になってしまったな」



 森を前にした草原にて。俺はぼんやりと呟いた。


 アルテ・ランド、ニ十歳。それが『今生』での名前だ。


 俺には前世の記憶がある。まぁ、社会の歯車として社畜して、あっさり過労死エンドを迎えた最悪の記憶だがな……。



「はぁぁ。二周目の人生は捨て子スタートだし、俺って運が悪いのかなぁ……」



 今の名前も、この世界の古の賢者アルテから取って自分で名付けた。



「そうして生まれ変わって二十年……バレたら解剖不可避な『異能』抱えつつ、飢えない程度に生きてきたら……」



 俺は何もない草原を見た。国から与えられた、俺の土地を。



「まさか、〝村を興せ〟と命じられるとは」



 大変そうだなぁ……と、俺は肩を落とした。



「俺的にはのんびりと生きたいんだが」



 前世が社畜だったからな。縛られるのはコリゴリなんだよ。ビバスローライフなんだ。


 それで気ままに冒険者をやっていた俺。地方に行って郷土料理をパクついたりと好き勝手していた。

 だが数か月前に戦争が起きて徴兵され、そこでうっかり首級を上げてしまって……コレだ。



「はぁ。〝村長になれ〟なんていきなり言われてもなぁ……」



 祖国たるセレネ王国から褒美として、『土地+村を興す利権』を与えられてしまった。


 なお、〝近隣の危険地帯『痛みの森』を調査・開拓せよ〟との指令付きでだ。褒美という名の雑務処理ですねわかります。くそう。



「まぁいざとなりゃ『能力』使えばいいか。ぼちぼちとやっていきますかね~」



 草原の中、ん~っと背中を反らして深呼吸する。

 空気が旨い。草の香りと太陽のあったかさで気持ちが落ち着く。

 色々と不便の多い異世界生活だが、自然が豊かなことだけはイイよなぁ。いやされる~。



「さぁて。村人たちはまだかな~っと。ヒドロア男爵さんとやらは、どんな人たちをよこしてくれるのか」



 ヒドロア男爵。国の命令で俺の村づくりを手伝ってくれることになった寄り親ってやつだ。

 彼曰く、


〝すまないが多忙ゆえ、家屋は自力で建てて欲しい。ただ力自慢の人材を村人として送るから、彼らと協力すれば容易だろう〟


 ――とのこと。


 で、本日はその人材が送られてくる予定なのだが……、



「……あれ? もしかして、彼らのことなのか……?」



 辺りを見回していると、こちらに向かってくる複数台の荷馬車が見えた。

 その上に人々が乗っているのだが……明らかにおかしい。



「なんかみんな、すごく痩せてない……?」



 あれ~おかしいな。力自慢の人材を送ってくれるのでは? 俺の目が悪いだけか?



「――おぉ~い村長さんよぉ」



 首を捻る俺に、やがて先頭の馬車の御者が声を掛けてきた。


 鎧をしているな。御者兼、ヒドロア男爵のところの騎士か。



「すかしたツラしやがって。返事しろや」



 そんな彼の声と口調は、明らかにこちらを舐めていた。


 ……あぁ、そういうことか。


 だいたい把握。なるほどね、ヒドロア男爵。



「ハッ。成り上がり者のアルテ・ランド村長は、下々と口を利く気もないってか」


「……」


「黒髪のくせに、調子に乗るなよ」



 黒髪。それは、百年前に王国が族滅させた東方部族の特徴だ。


 以来、黒髪の者はその部族の血が混じっているとされ、低くみられるようになった。


 俺も捨て子だったしなぁ~。『能力』がなきゃ死んでたよ。



「ケッ、まぁいい。それより――オイッ、降りてこい病人共!」



 指示を出す鎧男。すると辿り着いた荷馬車から次々と、酷い状態の者たちが降りてきた。



「……むごいな」



 全員、明らかに栄養失調か病人だ。腐った血と死の匂いが鼻をついた。



「理解したよ。ヒドロア男爵め、領地内から口減らし者を募ったな」


「っておいおい、失礼な勘繰りはよせよ。こいつらは力自慢だと周囲から見込まれた者たちなんだぜ? ま、実際は知らねーけどな」


「可哀そうだと思わないのか」


「あ?」


「彼らを、この地で、野垂れ死にさせる算段だろう。男爵はそのつもりなのか? お前もその手伝いをして平気なのか?」


「うるせーよ」



 足先を踏まれた。痛い。



「ははっ、いい策を考えただろう男爵様は? テメェの土地でこいつらが死ねば、そりゃテメェの責任になるってわけだ。いきなり村人を大量死させたら、国もテメェに呆れちまうだろうなぁ」


「……」


「『税も治められないカス共はこう使うのだ』と、男爵様は笑ってたよ。まったく賢いお方だよなぁ。聞いた時、オレもそりゃ名案だと笑っちまったよ」


「……」


「なにが可哀そうだと思うかだボケ。甘いのはツラだけにしとけや。つーわけで、じゃあなぁアルテ・ランド村長? テメェの未来は墓場守だよ」



 言うだけ言って、鎧男は御者らと共に去っていった。


 そうして後に残るは、



「もう、終わりだぁ……」

「げほっけほっ……! わたしらに、村を一から興せだなんて……っ!」

「近くの森には、魔物も住んでるっていうのに……」



 絶望しきった半死人たち。雨風防げぬ更地で放置すれば、数日も待たずに死ぬだろう。


 それで俺には村人を大量死させた汚点が残るわけだ。はは。はぁー。


 ふざけるなよ。



「お前たち、顔を上げろ」


『……!?』



 俺は村人たちにこちらを向かせた。


 全員、本当に酷い顔だ。まさにバッドエンドだって顔をしてるな。



「絶望は嫌いか?」


『は、はい……』



 村人たちは戸惑い気味に頷いた。



「苦しんで死ぬのは嫌か?」


『っ、はい……!』



 村人たちはしっかりと頷いた。



「悔しいままで、終わりたくなどないか?」


『はいッ……!』



 村人たちは涙ながらに頷いた。



「あぁ、ならば安心するといい」



 バットエンドなど俺が認めない。俺の周囲に不幸などいらんよ。


 俺は、優しい時間スローライフで人生を満たしたいのだから。


 ゆえに、



「さぁ、お前たちをスローライフにしてやろう……!」



 ――スキル【時間操作:世界逆行チェンジ・ザ・ワールド】、超動――!






 そして。



「すかしたツラしやがって。返事しろや――ってッ!?」



 目の前の鎧男は、俺の背後を見て唖然とした。



「な、なんで、なんでぇ……!?」



 鎧男は叫ぶ。



「なんでっ、立派な家がいくつも建ってるんだよぉーーーー!?」





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 主人公:←時間巻き戻して絶対スローライフにしてくるオバケ



 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。


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