第100話 特殊武具を鑑定、金庫を解錠

 絶命したことが確認できたので、No.2の死体に近づき、穴の開いたフードを取る。


 「声質が中性的だとは思ったが、美男子とも美女とも見える整った容姿をしているな。これなら、男女のどちらにも変装できるし、潜入や暗殺に非常に役立っただろうな」


 得られたスキルも諜報や潜入、暗殺に役立ちそうなスキルが多かったし、結構凄腕の暗殺者だったのかもしれないな。


 そんなことを考えつつ、先程獲得した【鑑定】を発動し、武器や防具を調べる。


〈短剣〉

 ・名称 毒刃刺殺の短剣

 ・等級 Cランク

 ・状態 ???

 ・能力 ???

 ・効果 ???


〈ローブ〉

 ・名称 闇潜のローブ

 ・等級 Cランク

 ・状態 ???

 ・能力 ???

 ・効果 ???


 この2種類が特殊な武具らしい。ただ、【鑑定】のレベルが足りていないのか、全ての情報を視ることはできなかった。


 その他は解毒や麻痺を緩和するポーションが3つずつ、冒険者の証明書ライセンスがウエストポーチに入っていた。


 「所持金はないみたいだが…別の場所にあるのか?」


 とりあえず金の在処を探す前に、カーティスが所持していた武具も【鑑定】しておくことにした。


〈両刃斧〉

 ・名称 怪力両断の両刃斧

 ・等級 Dランク

 ・状態 ???

 ・能力 ???

 ・効果 ???


 この武器だけが特殊なようで、使用する予定はないが、奪っておくことにした。


 あとは有象無象の奴等の武具や所持品も確認したが、特殊な武具は見当たらなかった。


 さて、次は隠し財産などがないか、この拠点を隈なく探そうと思うが…あの女を始末しないとな。


 入口の壁際にこちらの様子を伺うように佇んでいる彼女の元へ、ゆっくりと近づいていく。


 彼女は俺に恐怖心を抱いているようで、肩を震わせながら、こちらを見つめる。


 「…あ、あの、私は言う通りにしました。これで命は助けて頂けるんですよね?」


 「…」


 「な、何故何も、こ、答えてくれないんですか?」


 俺はただ、優しく微笑むだけ。


 「ま、まさか! 私を殺そうとーーー」


 『【明晰】Lv.5にUPしました』


 『【不屈】Lv.5にUPしました』


 『【魔力回復量増加】Lv.5にUPしました』


 『【魔力増加】Lv.5にUPしました』


 『【縫製】Lv.1を獲得しました』


 『【魔力操作】Lv.5にUPしました』


 『【洗濯】Lv.1を獲得しました』


 地面に転がる彼女の頭部を見ても、何も思うことはない。


 彼女は命令通りに動いてくれたし、自身の身体まで差し出したのに、俺は最初から彼女を殺すことを決めていた。


 今までの経験がそうさせるのか、魔物だとバレていないにも関わらず、彼女を見逃すことを不安に感じた。


 それに、連続で大量のスキルを獲得し、複数のスキルレベルが上がったことで高揚していたこともあり、歯止めが効かなかった。


 一人の人間としてではなく、上質なスキル経験値としか見れなかったのだ。


 無感情に彼女の所持品を漁ると、ビッグ・スライムの上位種戦に続いて、今回の戦闘でどれだけ強くなったのか、戦果にほくそ笑みながら、拠点内を散策し始めた。


♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢


 「あとはカーティスが出てきた部屋だけだな」


 拠点内の各部屋を隅々まで調べてみたが、何もなかった。


 人身売買をしていると聞いていたので、囚われている人達がいないか確認してみたが、誰もいなかった。


 鉄格子がある部屋は見つけたので、既に奴隷商に引き渡されたか、まだ確保していなかったのか。


 居ないならいいかと思い、最後の部屋に訪れた。


 扉を開けて中に入ると、正面に机と椅子があり、右側には高級そうな酒瓶が並ぶ棚があった。


 【探索】金庫


 早速【探索】を発動すると、机から反応を拾えた。意外にあっさりと見つけることができたので、拍子抜けだった。


 仮にも犯罪組織を運営してるなら、金品の管理はしっかりしろよとは思ったが、【探索】を妨害する機能を持つ物は、手に入れるのが困難なのかもしれない。


 机の引き出しを開けて大きな金庫を取り出す。鍵は南京錠のようだが、肝心の鍵が見当たらない。


 「カーティスだけは半殺しにして、鍵の場所を吐かせるべきだったな…いや、鍵も【探索】で探せばいいのか」


 【探索】金庫の鍵


 「まさか、金庫の裏に貼り付けておくとは…【探索】を所持していなかったら、見つけるのに相当時間がかかっていたな」


 鍵で南京錠を開けると、中身は数えるのも面倒になる程の硬貨が入っていた。


 「この犯罪組織が他と比べてどれほどの規模かは分からないが、人身売買はかなり儲かることが分かったな」


 No.2が言っていた「犯罪稼業の方が稼ぎはいい」という言葉は、事実だったようだ。


 「犯罪組織を壊滅させると、被害者からは感謝され、スキル経験値も得られ、大金も手に入る。一石二鳥、いや一石三鳥だな」


 そうなると、カーティスの言葉が気になるな。


 傭兵ギルドか…。


 金庫の中身を全てマジックポーチに入れると、他の引き出しを開けてみる。


 「お! 人身売買の証拠書類も出てきた。一応、衛兵の詰所に提出しておくかな。事後処理は衛兵さんに任せよう」


 他に気になるものは見当たらなかったので、死体が散乱する拠点を後にし、宿屋に戻った。

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