第10話 発見

 大きなゴブリン、上位種との戦闘を避け、川辺に戻ると、二匹のゴブリンが川辺にいた。


 ちょうどいい。二匹のゴブリンはこちらに気づいていないようなので、【雷魔法】で先制する。


 「雷霆よ、敵を貫け、雷撃ライトニング


 バリバリバリィィィ


 雷撃ライトニングが隙だらけのゴブリンの頭部を貫く。頭部を貫かれたゴブリンはゆっくりとその場に倒れる。


 仲間が奇襲されたことで必死に周囲に視線を巡らせ、敵を探すゴブリン。


 俺と視線が合うと、棍棒を振り上げながらこちらに向かって走ってくる。


 「雷霆よ、敵を貫け、雷撃ライトニング


 バリバリバリィィィ


 無慈悲に相手の命を奪う雷撃ライトニングはゴブリンの額を貫く。ゴブリンは走っていた勢いそのままに地面に倒れた。


 『Lv.5にUPしました』


 『【棍棒術】Lv.3にUPしました』


 「よし! レベルも上がったし、【棍棒術】のレベルも上がったから筋力値が100に到達したな」


 自分自身の強さが数値化され、成長が目に見えるのは強くなりたいというモチベーションに繋がる。


 元の世界では自分自身の得意不得意を把握できなかったり、または勘違いしてしまい、時間と熱量を注いで努力しても、無駄に終わることは珍しくなかった。


 もし、ステータスやスキルが可視化され、自分自身の得意不得意を把握できていれば、少なくとも無駄な努力は減るのではないかと思う。


 さて、今はそんなことを考えていても仕方がない。増えたスキルポイントでどのスキルを獲得するか考えよう。


 【棍棒術】と【雷魔法】で遠近両方の戦闘は問題ない。剣や槍など武器調達の目処が立っているなら、それに関するスキルを選んでもいいんだが、まぁ保留だな。


 魔法も現状は【雷魔法】で十分だし、他の魔法を獲得する必要はない。ただ、スキル一覧には表示されていないが、【空間魔法】があるなら最優先して獲得しようと思う。


 やっぱり、容量無制限の収納空間や瞬間移動は憧れる。倒した魔物の持ち運びが楽になるし、短距離でも長距離でも瞬間移動できるなら、移動が楽になる。


 その他にも【魔力感知】や【気配感知】なども有用なスキルではあるが、【熱源感知】と【異臭感知】があるので問題ない。


 そうなると、簡単に能力値が伸ばせるこのスキルがいいかな。


 俺はスキルポイントを消費して一つのスキルを選択した。


 『【疾走】Lv.1を獲得しました』


 そして、詳細説明を確認する。


【疾走】Lv.1

 敏捷値+10増加。敏捷値+10


 これで敏捷値が合わせて+20増加し、82になった。


 戦闘において最も重要である力と速さが伸びているので、今後も戦闘を有利に進めることができるだろう。


 スキルの選択も終えたので川辺に腰を降ろし、食事を摂る。蛇と兎?、ゴブリン二匹を完食し、川の冷水で喉を潤す。


 そして、俺は再び歩き出した。


♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢


 太陽が徐々に傾いていき、夕暮れが近くなった頃、俺は森の中で新種の魔物と対峙していた。


 体高1.5メートル程でその身体を茶色の体毛が覆い、腰から尻尾が生えている猿の魔物。


 外見は動物園で見たことのある猿と同じだが、【心眼】で視ると【体術】Lv.1を所持していた。


 猿の魔物は二匹いるので、【雷魔法】で先制攻撃をする。


 「雷霆よ、敵を貫け、雷撃ライトニング


 雷撃ライトニングが猿の魔物の額を貫く。猿の魔物はゆっくりと背中から倒れた。


 『【体術】Lv.1を獲得しました』


 仲間がやられたことに激昂し、素早い動きで距離を詰めてくる猿の魔物。


 詠唱していては間に合わないと判断し、棍棒を構える。猿の魔物は俺の側頭部目掛けて鋭い蹴りを打ち込む。


 咄嗟に左手で受け止め、棍棒で猿の魔物の頭部を強打する。鈍い音が響き、猿の魔物は地面に沈む。


 正直、猿の魔物はそこまで強くなかった。


 左手で受け止めた蹴りはとても軽いと感じた。筋力値があまり高くないのかもしれない。


 戦闘を終えて猿の魔物を引きずりながら、新規スキルの詳細説明を確認する。


【体術】Lv.1

 素手で戦闘をする際、攻撃動作や防御動作に補正がかかるスキル。筋力値+10


 棍棒が無くても自分自身の肉体で近接戦闘ができるのはとてもいいことだ。


 近接戦闘も魔法戦闘も熟せる俺に死角なし! かっこよく言うのであれば魔法戦士だ。


 まぁ、まだレベル5の貧弱な魔法戦士だが…。


 川辺に戻り、猿の魔物を食べ終え、再び歩き出す。


 森の出口を目指し歩き続け、空が薄暗くなってきた時、俺はついに森の出口を発見した。


 少し先に見えるのは木々の生えていない場所。俺は思わず走り出し、その場所に辿り着く。


 「やっと…見つけた…」


 森を抜けた場所にあったのは周囲を柵で囲み、木造の家屋が建ち並ぶ村だった。


 村の入口には大人の男が二人、長槍を持って周囲を警戒していた。


 異世界に転生して初めて見る人間。


 俺は感動で駆け出したくなる衝動から一歩を踏み出すが、二歩目を踏み出そとして冷静なる。


 今の俺はゴブリン…魔物だ。


 このまま、村の入口に立っている人間に近づいたとして、友好的に接してくれるだろか?


 いや、それはないか。なぜなら、神様は言っていたからだ。人類種と魔物はお互いに糧としているのだと。


 「神様…なんで俺を魔物に転生させたんだ…」


 薄暗くなった空を見上げて俺は溜め息を吐いた。







 


 

 

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