プロローグ
憂鬱な朝
カーテンの隙間から差し込む朝日が眩しく,ジリジリと熱い.日の光から逃れようと布団に潜ると,それはそれで息苦しい.かといって,カーテンを閉めに行くのも面倒臭い.目覚ましの時刻までまだ三十分もある.早く目覚めた割に,ほとんど寝た気がしなかった.このところ嫌な夢ばかり見る.汗でじっとりとしたパジャマが気持ち悪い.全身の筋肉が硬直して,舌には食いしばった痕が残っていた.背中が苦しい.まだ布団から出てすらいないのに随分と消耗していた.朝日から逃れるために寝返りを打つと,そのまま動けなくなった.
そのあと数分おきに寝たり起きたりを繰り返し,出発時刻の五分前に渋々布団からでた.三十歳を過ぎたあたりから朝がだんだんと辛くなっている.底冷えした部屋を気合で洗面台へ向かう.冷水で顔を引き締めるも,頭はぼんやりとしたままだ.ソファーの上から適当に服を見繕い,歯磨きだけして家を出た.
吐く息が白い.外の空気は冷たく,呼吸をすると肺が痛かった.風が頬に当たり,ようやく目が冴えてきた.
(…まだ二日あるのか.)
思考が明瞭になって,今日のスケジュールややり残した仕事など,やるべきことが次々と思い出された.
今日もまた,憂鬱な一日が始まる.
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