第25話 紗夜ちゃん……私は……

 結局全く眠れなかった。

 紗夜ちゃんは、なんであんなことをやってしまったのか?それに何故今見せたのか?紗夜ちゃんは何を考えているのか……


 私が起き上がると共にサリアも起き上がった。サリアも起きてたらしい。多分私と一緒で眠れなかったのだろう。

 授業まで時間はあるので少し紗夜ちゃんと話したいところだが……


 「紗夜ちゃん」

 「……」


 紗夜ちゃんが姿を現した。

 さっきまで、これを言おうとかかんがえていたが、急に何も出なくなった……。

 今更だが、紗夜ちゃんのことが怖くなってきた……。


 「すまない。今見せるものでは無かったみたいだ。君たちには知ってほしかったんだよ、魔法の恐ろしさを。サリアちゃんが魔法に対して恐怖を覚えたから、暴走する前に暴走するとどれぐらい怖いことになるか知って欲しくてね……。」

 「紗夜ちゃん……」



 私は何も言えなくなっていた。

 実際に暴走して目の前であんな光景を見てしまえば、一生魔法が使えなくなるだろう。


 自分自身への恐怖。


 誰かを殺してしまったという恐怖。


 魔法という恐怖。

 想像しただけで生き地獄。


 死んでしまった方が楽になれるのでは。と感じるほどだ……。



 そんな状況で、紗夜ちゃんは、何故機械になり長寿になったのか?何故あんな機械を作ったのか……


 「紗夜ちゃん。あの光景を見てからずっと考えてたんだけど、紗夜ちゃんは紗夜ちゃんだよ。今でも魔法は怖いよ。それでも立ち向かっていかなくてはならない。それが魔法だと思うから。紗夜ちゃんもわざとやった訳では無いと言ってたし、何故やったのかも話したい時に話せばいいと思うの。だって、黙ってることだってできたでしょ?それでも見せてくれたってことは、それだけ私たちのことを信頼してくれてるし、魔法をもっと理解して欲しいんだと思うの。だから、紗夜ちゃんは、紗夜ちゃん。」

 「サリア……」



 私は紗夜ちゃんへのどうして!!しか考えられなかったのに、サリアは紗夜ちゃんのこともしっかり考えてながら、自分たちのことも考えて……。

 

サリアに子供だな!!と言っていたが、本当は私が一番子供だったのではないか……。



 一番長くいた私が紗夜ちゃんのことを助けないでどうする。


 信じないでどうする。


 何が友達だ。


 こっちの理想を押し付けてるだけじゃないか……。


 私は唾を飲んだ。




 「サリアの言う通り紗夜ちゃんは、紗夜ちゃんだよ。あの光景は驚いたけど私が知ってるのは、優しくて、時に意地悪なこと言う。。そんな紗夜ちゃんは、今まで変わり無く私の大切な友達だよ。」


 「アリア、サリア……。私もいつか自分から自分のことを話せるようになるよ。その時は、目を逸らさずに聞いて欲しいな。」

 「「うん!!」」

 「ありがとう」


 私は魔法への恐怖と共に紗夜ちゃんの気持ちを心に刻んだ。

 私がもし紗夜ちゃんと同じ状況になったら誰にも話すことは無いだろう。


 それだけ信用してくれているのだろう……。


 私はなんて言うことを思ってしまったのか……。


 自分が悔しくて悔しくしょうがない……。



この後紗夜ちゃんは姿を消したが、私は後悔は消えることはなかった……




 私とサリアは、まだ時間が早かったのでもう一眠りすることに。

 夢の中でも後悔をしていて、なんとも言えない気持ちになった……。

 こんな気持ちではダメだ!!紗夜ちゃんを困らせてしまうし、思い出させてしまう!!

 私は自分に気合いを入れ直し起床。



日光浴を浴びた後にサリアを起こしてリビングへ。

 日光浴の時に何かが浄化されたような気がして、気持ちが少しスッキリしたような気がした。


 その後はいつも通りリビングに行き、ご飯を食べてサリアと一緒に長老の修行に向かう。


 「今日は休んでも良かったんだけど、大丈夫?」

 「まだ分からないかな。昨日は魔法のことをよく考える日だったし、やっぱり魔法は怖いよ。でもそれ以上に怖い魔法を打ち消すほどの力をつけたいかな。そうすれば、お姉ちゃんのことも守れるからね。」


 サリアは、エッヘンと胸を張りながら言った。

 私はそんな妹が羨ましく思う。

 私はいつまでへこたれているのか。日光浴で良くなったと思っていたのは浴びてる時だけで、それ以外はずっと紗夜ちゃんのことを考えてしまう。


 もう分からないよ。


 こんな時誰かに縋りたい。


 誰かに手を伸ばして欲しい。


 結局私は一人では生きていけない……。




 私は気づくと冷や汗が出て、目の前がぼやけて見えてきた。


 また死んじゃうのかな?


 また熱中症なのかな。


 今度は誰か助けてくれるのかな?


 そんなことはない。




 だって、私の心はいつも1人なのだから。




 私は無意識に自分を追い込んでいき、息が荒くなってくる。頭に酸素が行かなくなって、余計頭がフワフワする。


 ああ、理想を捨てたって言っても本当は、捨てられないんだな……



 そんな時、私の目の前のあかりが消えていく。

 下を向いて何も気づいていなかったのか見上げるとそこにはサリア。

 声をかけようとするとサリアは、私のことを抱きしめてくれる。


 なんて暖かいんだろうか。


 私は救われてもいいのか。


 サリアからすると、こんなお姉ちゃんはみっともないだろう……



 「お姉ちゃん。大丈夫?落ち着いて。私ね昨日お姉ちゃんに落ち着いてって言われて嬉しかったんだ。あの時は、全く落ち着けなくてどうしてこんなことになったのか。私が修行不足だったから。もっと度胸があったらって後悔したんだよ。それでもお姉ちゃんは、大丈夫。落ち着いて。っていう言葉で私を助けてくれたんだよ。あの時の言葉がなかったら私はダメだったかもしれない。だから、私がお姉ちゃんにお返し。一人で抱え込むことではないんだよ。大丈夫。だから、自分を責めないで。」



 私は気づくと声を上げて泣いていた。



 怖かった。紗夜ちゃんが自分の近くからいなくなること。


 怖かった。魔法があそこまでの力を及ぼすこと。


 怖かった。自分が自分ではない存在に変わってしまうこと。




 今まではこんな状況に陥っても誰も助けてくれなくて、自分で解決していたためどうにかしなくては。と思いすぎていたのかもしれない。


 しかし、そんなことは無い。この世には私一人だけでは無いんだから。


 甘い考えかもしれないが、手を差し伸べくれるまで待ってもいいかもしれない。


 殻に籠っていて差し伸べられた手すら気づいていなかったかもしれない。


私は、私は……





 サリアは、「大丈夫。大丈夫だから。落ち着いて。」と言いながら私の頭を撫でてくれる。

 こんなにも落ち着くなんて思いもしなかった。

 サリアのお姉ちゃんとして頑張ってきたが、今の状況を見ればどちらがお姉ちゃんなのか。

 そんなことを思うが、どうでもいいことだと今の私なら分かる。


 誰だって泣いていい。


 姉だから、親だからなんて関係ない。


 ひとつの生命なのだから。


 私はそのまま崩れていって座りながらサリアに抱きくと、立っていたサリアも座ってくれて私を両手で抱きしめながら背中をトントンと叩いてくれる。

 トントンと叩いてくれると余計安心する。



 私は小一時間サリアの胸の中で泣いた。




 「ごめんサリア。少しかっこ悪いところ見せちゃったね。もう大丈夫!!かっこいいお姉ちゃんに戻ってきたから」

 「お姉ちゃん。無理しないで。お姉ちゃんは、お姉ちゃんのままでいいんだからね。妹の前だからってカッコつけたりしないで。私はどんなお姉ちゃんでも、大好きなお姉ちゃんだから」

 「サリア」


 私はまた泣いていた。声は出てないてはいないが、目からポツポツと垂れてくる。サリアが妹で良かった。

 私は心の底からそう思うのであった。


 私の様子がおかしかったのか。紗夜ちゃんは、私とサリアに透明感魔法をかけてくれていて私が泣き出した瞬間にエルフ森奥に瞬間移動してくれたので近くに誰もいない。



 「すまないアリア。今回の原因を作ったのは私の失敗だ。疑似体験での落ち込み具合は、システム上私の所にもデータとしてきていたが何もすることができなかった。立ち直ってもらう為に色々と仕掛けたが全て無意味な行動で、結局たまたまあった幼稚園に力を貰っていたとは……。幼い子供にそこまで追い込んでしまった上にもうこんな思いをさせないと心に決めたはずなのに……。本当に申し訳ない。」

 「紗夜ちゃんは、謝ることでは無いよ。これは私自身が作ってしまった問題。私が弱いからこんなことになってしまった。謝るのはこっちだよ。私のせいで、傷つけてごめんね。」

 「アリア……」



 私たちは友達のようで友達では無い関係になりつつある。


 これは私が招いた亀裂のせいだろう。


 紗夜ちゃんは、悪くない。


 私が……。


 私が失敗したせいだ……。



 「アリア。正直に言うが、最初は怖かったんだ。友達を無くすのが。エルフであるがために何人もの友達が私より先に亡くなっていった。今の体では寿命という概念もないから、また一人になるのではと。アリアと仲良くなるにつれて、思い出してしまうんだよ、無くなっていった友の顔が。寂しいような辛い様な。こんなことを味わうのなら目の前からいなくなってしまいたいとも思うぐらいに。それでアリアは、私に手を差し伸べてくれた。また楽しい日々を暮らしていいのだと教えてもらった。疑似体験でもそうだったが、アリアがいるから楽しい日々をおくれたと思う。だからこそ言っておかなくてはならない私の罪について。何故あんなことになったのか。私がどんなことを考えているのか。私の本当のことを」


 そこから告げられた内容は想像を絶するものだった。


 私だったら耐えきれない。


 死んでしまった方が楽になれるのではないかと思うほどに……。


 私とサリアは、泣きながら紗夜ちゃんの話を聞いていた。



 紗夜ちゃんの話が終わる頃には少し紗夜ちゃんのことがわかった気がした。


 自分を追い込んでしまうところ。


 誰かに手を差し伸べて欲しいところなど共通点があったなんて考えもしなかった。


 かけ離れた存在なのではないと近頃思っていたが、昔のように近くにいる存在だと認識できた。


 「紗夜ちゃん話してくれてありがとう。」

 「感情というものは難しいものだ。楽しい時は一瞬で終わるのに辛い時は何年も拘束されている気分になる。私はアリアに遠い存在として見られたいのでは無い。一友達として私のことを見て欲しいのだ。今すぐにというのはいささか難しいかもしれないが、また昔みたいな関係になりたいな。」

 「紗夜ちゃん私も」


 私は紗夜ちゃんの友達であり続けることを心に違うのであった。


 「紗夜ちゃん。お姉ちゃん。何かあったら、なんでもいいから話してね。話すと少しでも楽になれると思うから。紗夜ちゃんお姉ちゃん大好き!!」


 サリアは、私と球体ロボットの紗夜ちゃんのことを抱きしめた。

 これがどれほど暖かいものなのかは言うまでもないだろう。


 私たちはしばらく抱き合っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 紗夜ちゃんの過去編は第一章エルフの里が終わり次第書く予定です。

 少し残酷なことを書く予定ですのでご注意ください。


【お知らせ】

 今後は、日、木の週二投稿予定ですので、引き続きよろしくお願いします!!

 最後まで読んで頂きありがとうございます。

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