北海道チャリぼっち~1994・夏~

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はじめに~「北海道チャリぼっち」を掲載するにあたって~

 僕は学生時代、自転車に乗って旅することが好きでした。

 最初はママチャリでしたが、アルバイトで貯めたお金で長距離走行専用の自転車を購入してからは、比較的長い距離を自転車で走行するようになり、週末になると当時住んでいた東京近郊などを廻っていました。

 中でも思い出に残っているのは、長期休暇を活用して北海道を二度にわたり走行したことです。自転車やバイクが好きな人間ならば誰もが憧れ、一度は走行したいと思う場所が北海道です。僕もその一人でした。


 最初の走行(1993年)では東京都内は輪行(※下記参照)し、フェリーに乗って北海道に上陸後に自転車を組み立てて、苫小牧から札幌、帯広、釧路を経由して北海道最東端の納沙布岬まで走りました。この旅では、初めて北海道に来たことへの感慨に浸りきりで、肝心の自転車走行は準備がおざなりだったせいか、あまりいい思い出が無かったような気がします。 特に坂道は半分位まで登ったら手押しすることを繰り返し、アップダウンの道が多い北海道では泣きそうになった記憶があります。

この旅は17日間に及ぶ長旅でしたが、最後の最後でリタイアした苦い思い出があります。納沙布岬の帰り道、後輪タイヤのバルブが突如行方不明になり、空気が一気に抜けてしまいました。その代替となるバルブを手配しようとしましたが、道内では取り扱っている店が少なく、メーカー取り寄せで時間がかかるとのことから、これ以上走行することができなくなってしまったのです。


 二回目の走行(1994年)は、前回の反省を踏まえ、快適な走行ができるよう、そして出来る限りトラブルに対処できるよう、きっちりシミュレーションし、準備物を揃えたうえで臨みました。

 前回輪行した東京都内は直接走行し、フェリーで北海道に上陸。その後は釧路から知床、網走、稚内経由で留萌、札幌、そして苫小牧でフェリーに乗って東京都内に戻るまでの全21日間・総延長1,100㎞にも及ぶルートを走りました。この時も事前にしっかり準備したにも関わらず数々のトラブルが発生しましたが、何とか乗り越え、今度は無事完走することが出来ました。


 当時、僕は念願の北海道への自転車旅で味わった感動をきちんと記録に残しておこうと、毎日欠かさず日記を書いていました。一回目の旅の日記は文章が稚拙すぎて、ちょっと掲載できる代物ではないので、どちらかと言えばまともに書いていた二回目の方を今回掲載したいと思います。ただ、二回目も原文のままでは掲載できないので、色々と加筆修正を加えております。出来るだけ当時綴った文章をもとに、雰囲気、周りの風景や出会った人達などを再現するようにしていますので、もし読みづらいと感じたら申し訳ありません。


 歳を重ねた後、あらためて読み返すと、当時走行した時に見た景色や出会った人達、数々のハプニングが改めて脳裏によみがえってくるように感じました。

 皆さんにも懐かしい思い出の数々を共有していただければ、嬉しいです。


 ※旅行記を始める前に、途中「専門用語」が色々出てくるので、まずはこちらを解説します。


 〇輪行:

自転車を部品ごとに分解し、専用の袋に詰めて目的地まで持ち歩くこと。輪行の逆は「自走」(全行程を自転車で走りぬくこと)。


 〇チャリダー:

自転車旅行者は、北海道ではチャリダー呼ばれていた。ライダーと同じく二輪の乗り物で旅しているからか? ちなみに徒歩で道内を巡る人たちを「とほダー」、周遊券片手にJRを使用して道内を巡る人たちを「ジェイアラー」と呼んでいた。


 〇ユースホステル:

日本ユースホステル協会登録の宿。「ユース」「YH」とも言う。宿主の呼称は「ペアレント」、お手伝いは「ヘルパー」。一般の民宿よりも安く(会員登録するともっと安くなる)当時は大体一泊四千~五千円程度。相部屋が基本。食事は提供されるが、食後の皿洗いは自分で行う所が多い。

歴史の長いユースホステルはミーティングと称する集いの場があり、一緒に唄ったり踊ったりすることもある。


 〇民宿:

個人経営のお宿。北海道の場合、「とほ」と呼ばれる小冊子に掲載されている通称「とほ宿」が多く、人気を集めていた。価格はユースホステルとほぼ同じくらい。ユースホステルと同じく相部屋だが、規制は緩く、飲酒OKの所が多い。


 〇ライダーハウス:

一泊五百円から千円程度で泊めてくれる超安宿。

コンテナや個人宅の離れなどが多く、相部屋で寝袋持参で雑魚寝が普通。狭いスペースに何人も一緒に寝ることが多いが、屋根付きの部屋で泊まれる分、キャンプ場よりはマシ。飲酒もOK。

名前の通りライダーが多いが、チャリダーも結構利用している。


 〇コンビニ:

北海道のコンビニはセブン・イレブンやローソンより「セイコーマート」が多い。

特に札幌や帯広など都市部以外は、ほぼセイコーマートだった記憶がある。何もない原野に突如セイコーマートだけがぽつんと現れることもあり、僕のような体力を使う自転車旅をしている者にはオアシスみたいな存在。旅行中、ここでトイレを済ませ、飲み物や弁当を買い込んだ。


 このほか、北海道には当時既に「道の駅」があり、そこで昼食や休憩を取ることもあった。また、国道沿いのトイレが本州のものに比べて綺麗で使いやすかった。

         

         

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