一日目・自宅~東京フェリーターミナル

 ここから登場する天気、地名、建物などは当時のものです。あらかじめご了承ください。


 8月16日(火) 晴れ(走行45km)


 今年の夏は記録的に暑い。家にはエアコンが無くて、毎日蒸し風呂状態。

 この異常な暑さをしのぐため、そして去年の旅で北海道にとことん魅了されたため、僕は二度目の北海道自転車旅行に行く決意をした。

 去年は苫小牧から北海道最東端の納沙布岬を目指し、目的は達成したものの、残念ながらその帰りにタイヤのバルブの蓋が無くなるという悲劇のため走行不可能となり、根室から輪行して東京に帰ってきた。

 今年は去年の悲劇を繰り返さないよう用意周到に準備を進めてきた。コースは東京からフェリーに乗って先ず釧路に上陸し、反時計周りに道内を周り苫小牧からフェリーに乗って帰るルートを設定。


 夕暮れ迫る午後五時、僕は東京・府中市内のアパートから江東区有明にある「東京フェリーターミナル」まで自転車で自走した。

 昨年は都内は走らず輪行し、電車を乗り継いでフェリーターミナルまで行ったけど、駅や電車で僕が大きな袋を抱えて歩いているのをどことなく邪魔者のように見られたのが嫌だったので、今年は思い切って自走にチャレンジ。

 府中からは結構距離があるし、自転車には走りにくい都内の幹線道路を通るため、途中で走るのを諦めて輪行してしまうんじゃ……大きな不安を抱えたまま、二度目の北海道への旅が始まった。


 夕闇に包まれる中府中から多摩川沿いの堤防を大田区内の「ガス橋」まで走り、そこからは多摩川を離れ、池上、大森の住宅地を抜けていった。JR大森駅近くで道に迷ってしまい、駅周辺を何度か周回したものの、何とか海岸方向へと続く道を見つけ、大井競馬場前から海岸通り沿いに出た。この道路がとにかく広くて快適だった。真っ赤に輝く東京タワーやうっそうとした浜離宮を間近に見ながら、僕は都心方面を目指して順調に飛ばした。しかし、築地まで来ると歩道にはあふれんばかりの多くの人がいて、通りかかる車も一気に増えて、走っていて段々怖気づきそうになった。

築地市場近くの交番前を通った時、大きな荷物を積んで自転車で走っているのが何やら怪しまれたようで、警察官に呼び止められ、少しだけ職質(?)を受けた。行き先や荷台に積んでいた荷物など、色々根掘り葉掘り聞かれたけど、何とか切り抜けた。

 

 勝鬨橋を渡り、晴海、豊洲を通過し、東京フェリーターミナルのある有明が徐々に迫ってきた。豊洲のコンビニで小休憩を取った後、首都高湾岸線の真下を通る国道357号線(湾岸道路)に沿って西方向へと向かった。ここまで来ると、徐々に潮の香りが漂ってきた。そしてはるか前方に、東京湾に浮かぶ数隻の大きな船舶が見えてきた。ここが今日の目的地・東京フェリーターミナルだ。

 無事にターミナルに着いたのが午後九時半。自宅からここまでトータル四時間半かかって、見事に都内の自走に成功! 

 釧路へ向かう近海郵船フェリー「ブルーゼファー」の乗り場では、僕の目の前に相当数のバイクと自転車がずらりと並んでいた。今年も北海道に向かうライダー、チャリダーは沢山いるようだ。


 ようやくフェリーの中に入ると、一番安い二等船室(二段ベッドの寝台)へ向かい、部屋に荷物を全て置いたら早速風呂へ直行! 蒸し暑い都心の道路をひたすら自走してきたので、僕の体はすっかり汗にまみれていた。

 風呂でゆっくりと自走の疲れを癒すと、強烈な眠さが僕を襲った。

 窓の外を見ると、フェリーは徐々に岸壁を離れ、東京湾へと出航しているようだ。

 かくして、大いなる不安と期待を背負って、二度目の北海道へgood luck!

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