第2話 ピアノの先生の誘い
翌日、学校の授業が終わると、華乃は音楽室に向かった。今日は音楽の授業の日で、彼女はピアノの練習に集中していた。音楽室の静かな雰囲気は、華乃にとって唯一の安らぎの場所だった。
授業が終わり、他の生徒たちが教室を出て行く中、華乃はピアノの片付けをしていた。その時、音楽の先生である絵神香織子(えがみ かおりこ)先生が華乃に話しかけてきた。
「木龍さん、少しお話してもいいかしら?」
華乃は驚いて顔を上げた。「はい、何でしょうか?」
「あなたのピアノの演奏、いつも素晴らしいわね。実は、音楽部に興味がないかと思って声をかけたの。今度のコンサートでピアノの伴奏をしてくれる人を探しているのよ。」
華乃は驚きと戸惑いで口を開けた。音楽部に参加するという考えは、これまで一度も頭に浮かんだことがなかった。学校や塾、ピアノのお稽古で忙しい毎日を過ごしている自分が、さらに部活動に参加する余裕があるのだろうか?
「でも、私は他にもたくさんのことをしていて、時間が…」華乃は言葉を濁した。
「分かるわ。でも、部活動は楽しいわよ。音楽が好きな仲間たちと一緒に演奏することは、とても素敵な経験になると思うの。どうかしら?少しでも興味があれば、ぜひ考えてみてほしいの。」
香織子先生の言葉に、華乃は少し心が揺れた。忙しい毎日に追われる中で、自分自身が楽しめる何かを見つけたいという思いが、再び頭をもたげた。
「分かりました。少し考えてみます。」
「ありがとう、木龍さん。いつでも相談に来てね。」
華乃は音楽室を出ると、心の中に新しい期待と不安が入り混じった感情を抱えていた。音楽部への参加が、彼女にとってどんな新しい世界を開いてくれるのか、まだ分からなかったが、一歩踏み出す勇気を持ってみようと心に決めた。
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