第1章 友達

 皐月の部屋にて。



「皐月〜、お願いだよ。孫の手、貸ーしーてー!背中がむずむずするの。」


「嫌よ。鈴華に貸すと壊れるもの。」


「孫の手が?そんなわけないじゃん(笑)。ほら、借りるよ。……あぁーー、そう、この感覚。」


 そう言って鈴華は背中を掻く。


「(ボソッ)………鈴華おばあちゃん…。」


「え?なに?…鈴華美人?自覚してる。ありがとう。孫の手、気持ちよかったよ。返すね。」


 背中と服の間に入っていた孫の手を出す。


「ね、壊さなかったで….」


 ビリッ…


 服が破れた。てこの原理で言うと、鈴華の手が力点、肩が作用点、そして服に引っかかった孫の「手」の部分が作用点にあたる。


「やっぱり何か壊すのね。また、私の中で鈴華への信用度が下がったわ。」


「え?えっ?…………いや、大丈夫!!私への信頼は減っても減らないし!」


「0は0のままってことね。それより大丈夫なの、その服。かなり破けているけれど。」


鈴華の服は、背中の真ん中から上まで一直線に破けている。


「うーん、まあ、ギリ?いけるかな。」


「いけないわよ。…私の服でよければ貸すけれど。」


「えーっ、うーん、でも、皐月ってセンス悪いから良いや。」


この鈴華の発言が皐月の逆鱗に触れた。部屋の空気が冷たくなっていく。


「私のセンスが悪いですって?だったら鈴華の服はなんなの?なに偉そうに言ってんの?ねえ?」


部屋の空気は氷点下。鈴華の顔も青白くなってゆく。


「ご、ごめんなさい、皐月…様……。つい、調子に乗ってしまい……。だから、その………。」


鈴華は固まりかけた自分の体を精一杯動かしながら懇願した。


「氷魔法を使うのだけは、やめてください……。」

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