⑦-5 再びの約束を、ここに②
「ここどこ! え⁉」
「雨宿りの為に洞窟に入ったんじゃないのか。ほら、エーディエグレスの森へ、アキレアを探しに入っただろう」
「そう、そうだった! アルが見つけてくれたんだ」
「いや、見つけたのはティトーだっただろ」
「そうだっけ? 忘れちゃった。まだ眠いや」
ティトーは腕を大きく上へ伸ばすと、大きなあくびをした。首を横にフルフルすると、すぐにぼんやりとし始めた。
「アキレアはマリアに手渡したよ」
「本当⁉ じゃあ、おにいちゃんは助かるの⁉」
「助かるのって、助かるんだろう? ティトー」
アルブレヒトはティトーを抱きしめると胸へ顔を埋めさせた。天からは光が差し込み、雨が止んだことを示している。オレンジ色の夕日の色が差し込みだしたのだ。
「アル? どうしたの?」
「いや、お前が無事で良かった」
「あ。洞窟のは入り口にね、ミランダさんがくれた紐を木の枝に括り付けたの。わかった? あと、位置を動く前に森で、ハンカチをね」
「ああ。わかったよ。でも、あまり動かないで欲しかった」
アルブレヒトは力強くティトーを抱きしめると、そのまま動かなくなってしまった。
「泣いているの? ボク、大丈夫だよ」
「ああ。わかっている」
アルブレヒトは強く抱きしめると、再び動かなくなってしまった。戸惑うティトーだったが、素直に抱きしめ返しながら顔を埋めた。
「心配かけて、ごめんなさい。僕、寒くて」
「いや、いいんだ。それより、足は大丈夫か」
アルブレヒトは顔を上げると、ティトーへ向き合った。夕日が差し込み、ティトーを赤く照らした。アルブレヒトは手を差し伸ばしたが、少年は万遍の笑みを浮かべると、自分の力で立ち上がった。
「ボク、歩けるよ」
「いや、怪我していただろう」
ティトーは右足を見せた。そこには不器用に包帯が巻かれているものの、しっかりとした足踏みをしている。
「なんか、治っちゃったの」
「それでもいいんだ。ほら」
アルブレヒトはティトーに背を向けると、背に乗るように促した。
「え?」
「おんぶしていくから、ほら」
「…………うん」
ティトーは照れながらアルブレヒトの背にしがみついた。そのままティトーを背負うと、洞窟を後にしようとした。
「待って」
「うん。お祈り、していくか」
「うん」
ティトーは背負わされたまま、深く目を閉じると頭を下げた。ティトーが寝ころんでいた岩陰に、小さな岩が置いてあり、ティトーがお祈りをしている間、アルブレヒトはその小さな岩を見つめながら言った。
「また、来るからな」
ポツリとつぶやいた言葉に、意味も分からずに少年は頷いたのだった。夕暮れ時を知らせる、夕日が大きく洞窟を照らすころ、二人は洞窟を後にした。
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