〇番外編1-4 パーティーにて②
景国には、確か大陸のセシュール王子が武者修行へ行っていると聞く。王子といっても、族長の長男であるだけで、王族ではないらしい。それでも、連合王国時代のルゼリアの血も引いた王子だ。
「彼よりは、私のほうが恵まれてる、そうだよね」
あまりいい噂を聞かないルゼリア王国と、なぜ多民族国家のセシュールが連合王国となったのか。マリアは歴史書も新聞も読むことを許されていないために無知だ。
「今日掃除出来なかった分、明日大変なんだろうな」
ぼんやりと掃除の算段をしていると、後ろか賑やかなな声が聞こえてきた。
抜け出しの男女だ。マリアは一礼すると、別のバルコニーへ移ろうとパーティー会場へ戻ることにした。
◇
会場は暖かく、煌びやかなドレスに身を包んだ成人前の女性を、男性がアプローチしていた。マーシャはきっと相手にされず、帰宅前の馬車から暴言を浴びせられるであろう。せめて怒りを収められる食事を少しでも取って居て欲しいものだ。
かの王子、アルブレヒトはもう姿が見えず、王族の姿もない。もう彼らの出番は終えているのだろう。
「挨拶もしなかったけれど、いいわよね」
王家もマリアの存在は一貫して無視だったのだ。それが突然招待状を送ってきたのだ。おそらく、目当ては。
(あわよくば、アルブレヒト殿下の輿入れか。王子も大変ね)
マリアは改めて無人のバルコニーを見つけると、手すりに手をかけた。景色は大陸であるものの、距離があり夜であることもあって光がポツポツ見える程度だ。星空は冬であるせいかよく見えない。
月の幻影だけが、不気味に輝き続ける。それがこの世界、レスティン・フェレスだ。
「先客がいたか」
男性の声に、マリアはハッとすると、一礼しようと考えて振り返った。またバルコニーを変えなければならないと考えていたが、その思考は一瞬にして消え去った。
「あ……」
そこには、アンセム国が王子アルブレヒトが居たのだ。
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