⑤-3 邂逅③
「俺とティトーは、レオポルトに会うために隣町の噴水の町へ向かったんだ。そこで、レオと再会したんだ」
「どうやって連絡を取ったのよ」
「タウ族ってわかるか?」
マリアは一瞬変な顔になったが、すぐに面白そうに腰に腕を回しながら笑いながら話した。
「わかるわ。セシュールでも、とても賑やかな一族でしょう。伝言能力は優秀だわ。グリフォンに次いでね」
「そこまで知っていれば構わないな」
グリフォンは表裏一体であり、一体の情報を全ての個体で共有出来る存在、個にして全なのだ。そのグリフォンに次ぐのが、タウ族であるのだ。
「タウ族は狼を守護獣に置くだけでなく、遠吠えは大陸の端から端にまで届くと言われているわ」
「それはちょっと大げさだが」
「実際聞こえるみたいだ」
レオポルトは苦笑いを浮かべながら、外から聞こえてきた笑い声に反応した。
「まさか聴こえていないだろうな」
「それはないわ。防護結界も張ったもの」
「お前いつの間にそんなの張ったんだよ」
「私、これでも優秀なので」
マリアは当然のように胸に手を当てると、再び腰に手を当てながらアルブレヒトに迫った。
「それで、この町にはどうして来たのよ」
「ティトーがちょっと話したが、アドニス司教に会いに行く途中なんだ」
「アドニス司教ね。あのうさんくさい司教様か」
「マリア嬢も、司教を知っているのか?」
レオポルトは意外そうに首を傾げた。
「戦時中、あの人はアンセムに配置されていたのよ」
「ああ。そうか、そうだったな」
「ねえ」
ティトーは
「あの、質問してもいい?」
「どうしたんだ、ティトー。兄に分かることか?」
「あの、アンセムって?」
ティトー以外が息を飲むと、少しの静寂が場を襲った。
「アンセムは、俺の祖国だよ」
アルブレヒトは何食わぬ顔でそれだけ伝えると、直ぐに話を戻してしまった。
「巫女継承の儀を、ティトーは受ける必要があるんだ」
「巫女継承って……。そうか、ミラ様の息子なんだものね」
「あ、あの……」
ティトーはまた挙手すると、今度はそのまま質問を投げかけた。
「時々出てくるけど、ミラ様って?」
「え……」
マリアはショックを受けたように口に手を当てて黙り込んでしまった。
「ミラ様っていうのは、ミラージュ様よ。わかるでしょう? ルゼリアから来たんだから」
「………………じゃあミラージュ様が、ミラ様?」
「そうよ」
「じゃあ、先の大戦で」
「ティトー」
ティトーの声を、レオポルトが遮った。ティトーは目を潤ませると、頬を構わずに涙が滴り落ちてゆく。
「悪かった。ちゃんと話さなくて」
レオポルトはティトーを優しく抱きしめた。
「行方不明なだけでしょ? おかあさん、ぶじだよね」
「………………」
レオポルトが黙り込んでしまったが、すぐにアルブレヒトが言葉を繋いだ。
「そうさ。遺体が無いんだ」
「ちょっと、アル……」
「誰も、亡くなったのを確認しちゃいない。現場を確認したのは、父親のラダ族族長のルクヴァさんだ。ルクヴァさんが、嘘をつくはずがない」
「うん」
ティトーはそこまでの話を聞くと、改めて自分の身元を確認したのだった。
「じゃあ僕は、ラダ族族長の息子で、ルゼリア国の王子なんだ」
「そうだ、ティトー。まだ確証はないが、ティトーは、王子様かもしれないんだ」
「わかった。いろいろ」
ティトーは俯いたがすぐに顔を上げると、マリアをじっと見つめた。そして、ずっと抱いていた疑問を投げかけたのだ。
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