プロローグ:曖昧な微睡みの中で②


 ここで重要なのは、お互いの相互理解だけではない



 そう、自分自身をきちんと理解出来ているか、これは最も最重視されることであろうね

 当然、一対一とは限らない。場面毎に、きちんと矢面に立ち、向き合わなければいけない

 それすら面倒に考えるのであれば、相手は当人への接し方も、実に淡泊なものになるだろうね

 僕は割と濃い味付けが好みだよ

 そして、その <信頼> という結び付きがあるかどうかによって、大きく異なってくる


 当然、面倒になったり、言葉の行き違いが発生するのも、そういう信頼関係が元々不安定だったから、というわけさ

 相手を理解することはもちろん必要ではあるが、同時に自分自身のことも正しく理解していなければ、相手にだって伝わらないものだよ


 お互いが適当で適切な距離感であってほしいなら、それ以上の関係にはならないのだろうね


 うん、そうだね。たしかに前置きが長くなってしまったね。なかなかこの癖は直らない

 わざとなんだけどね

 やっぱり君と話すのは楽しいよ


 本題はここからなのだ

 その目視の出来ない、実に曖昧で不安定な <信頼> という結びつき

 そういう信頼関係を、生きる万物は常に強く欲し、依存し、一喜一憂したかと思えば、途端に嘆き悲しむ

 万物は、信頼無くしては生きられない。実に面倒くさい結び付きだと思わないか?


 いや、面倒かどうかの議論ではないよ

 そういう曖昧な結び付きを

 僕は、あえて形あるものとして、目に見える形として、相手に残そうと考えているんだ

 


 ……君なら、どうする?



 うん。前置きが長くてすまないね、そういうことなんだ




 ……そう、実に難しいのだよ





 そういう目に視えない曖昧なものを、形として残そうなどと





 それでも、


 私は残さなければ…………ならない……





 ………………






 …………………………







 ………………………………………………








 ――――――――――――



 古の時代からずっと空にあり続ける大きな幻影。淡く虚ろげでいて、静かに佇む巨大な恐怖心そのもの、それが月だ。

 月が常に眺める大地には、火・水・風・地の属性の加護があり、それぞれの属性エーテルが満ちているという。

 その世界に光と闇が混ざり合い、様々な魔法が発明されては消えていった。

 守護竜に愛された大地は、それはそれは美しかったという。


 これは、気の遠くなるほど、遥か遠く、遠いとおいせかいのおはなしです。

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