第2章3話 異形なる魔物最後の抵抗 デモの真実
南部で魔物を殲滅した悠とスタークだが、殲滅したはずの魔物が一つの大きな異形の魔物へと変異した。変異した魔物と一対一で戦う悠はその魔物を圧倒していた。
「だから言ったのに。あれだけ切られて、きわめつけに『枝垂桜』で深くまで切られてるんだから腕が落ちるのは目に見えてるのに。やっぱり知能はかなり低いな。人型以下くらいか。」
魔物はその場に両ひざをつき、左肩を抑えた。
「さてと、これ以上暴れられて被害を出すわけにもいかないからな。そろそろかたを付けるか。」
止めを刺すため悠が構えると、魔物は急に大きな声で泣き出した。
「うるさっ。泣いているのか?感情があるのか?そんな魔物は見たことも聞いたこともない。単純に魔物を混ぜただけでけでは感情が出るなんかは考えにくい。まさか・・・そんなことができるのか?いや、あいつならできそうだ。」
「おい悠!あいつなんか変だぞ!」
悠が考え事をしている間に魔物は泣き止んでおり、その巨大な体を丸め光りだした。
「まさか!スタークすぐに市民の人たちを影の中に入れろ!爆発するぞ。」
「まじか、自爆かよ。」
『影穴』
スタークはその場にいた市民全員が入るほど影を引き延ばして影の中に入れた。
「悠、お前も早く来い。」
すでに、魔物は爆発寸前まで膨れ上がっていた。
「いや、間に合わないし、このまま爆発すると辺り一面が平野と化す。だからこいつはこっちで対処する。」
悠は『桜』を指輪に戻して
「おいで、『彼岸』。」
新たに持ち手が鎖でつながれた大きな2つの金棒ような鉄棍を出した。
「どうするんだよ。」
『彼岸 黒
『彼岸』を地面に突き刺すと魔物の足元から黒色の荊が無数に生えてきて魔物の全身を包み込んだ。その荊の中で木っ端みじんに爆発した。
「ふぅ~何とか間に合ったな。」
「悠大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫だよ。それより市民の人たちにけがはないか?」
「ないよ。すぐに影の中に入れたし今は基地のほうに避難させた。魔物のほうは木っ端みじんか。今後の対策のためにできれば回収したかったけどな。」
「じゃあ、あの腕回収したらどうだ。」
そう言って悠は切り落とした魔物の腕を指さした。
「あの腕も魔物の一部だからなにか情報を掴めると思うよ。俺の憶測だけど、あの魔物泣いてたってことは感情があるってことなんだと思うんだけど、魔物を合わせただけじゃ感情を手に入れるってことはできないと思う。」
「だろうな。あいつらは基本的に感情っていうのはないからな。」
「でも、それがあるってことはあの魔物人間を混ぜている可能性がある。」
「!そんなことできるのか。」
「多分な。あいつならやりかねない。まぁでも、憶測だからその辺もあの腕をとおして調べてくれ。」
「わかった。あの腕は爆発に巻き込まれなくてよかった。もらってもいいか?倒したのは悠なんだからそっちで研究してもいいんだぞ。」
「いいよ。持って帰るのも大変だろうしこっちのほうが設備が充実しているしね。さて、基地に戻るか。」
「そうだな。ちょっと待って。」
スタークは帰る前にオペレーターに通信を繋いだ。
「もしもし、基地の近くにある魔物の腕を回収して研究班に渡してくれ。」
「かしこまりました。」
「じゃあ行こうか。」
2人が基地に戻るとデモ活動していた市民の人たちが悠のもとに駆け寄ってきた。
「第1の師団長さん。すみませんでした。何も知らないのにあなたに罵詈雑言を浴びせ怪我まで負わせてしまってなんとお詫びしたらいいか。」
市民の人たち全員が頭を深く下げ謝罪をした。
「大丈夫ですから頭をあげてください。批判なんて誰にでもありますし、怪我も軽い打撲程度ですので平気です。それに、市民の皆様を守るのが我々の仕事なので気にしないでください。」
「ですが、そういうわけにはいきません。」
「では、デモを起こした理由について教えていただいてもいいですか?私が今日こちらに来たのは一応このデモが理由でして。」
「はい、包み隠さずお話しします。」
デモを率いていた市民の一人のおじいさんが理由について話した。デモの首謀者は悠たちが予想していた通り会議に参加していた大臣であること、その大臣から悠は働かずに資金だけ食っており、集合会議の際に南部について罵倒していたと聞かされたと話した。
「なんですかそれ。全部あの大臣のでまかせです。師団長がそんなことするはずがありません。」
「そうだぞ。悠は働いてないどころか10歳の頃からほとんど不休で魔物と戦い続けてるんだぞ。」
おじいさんが話した理由に彩音は怒った様子で、スタークは呆れた様子で説明した。
「話してくれてありがとうございます。自分は市民の皆様を守るために戦っています。それだけはご理解ください。」
「はい、すみませんでした。」
「スターク、ちょっといいか?」
「?どうした。」
「大臣と話がしたい。取り入ってくれないか。」
「・・・わかった。少し待ってろ。」
「ありがとう。頼む。」
その後、スタークが大臣が務める大使館にアポを取り、大臣がいる大使館へ向かうことになった。
大使館へ向かう前、第3の基地に第4師団長のソフィアが訪れた。
「スターク今大丈夫?ってどうしたの?今からどこか行くの?」
「あぁ、デモの原因が大臣だってことがわかったから今から悠と一緒に大使館に行くところ。」
「そうなのね。そっちのオペレーターから特殊な魔物の腕を入手できたって連絡があったから研究協力できないか確認しに来たのだけど。」
「ソフィアは残るか?残るなら団員に研究室まで案内させるけど。」
「いえ、私も一緒に行くわ。こっちもでもで迷惑かけられてたから大臣に文句言いたいし。」
「了解。じゃあ一緒に行くか。」
悠たちはそのまま大使館へ足を運んだ。
「着いたぞ、ここが大使館だ。」
第3の基地から車で1時間くらいのところの市街地にひときわ大きな建物に着いた。
「よし、行こうか。念のためスタークが先頭で行ってくれ。」
「わかった。」
スタークを先頭に悠たちは大使館へと入っていった。
「邪魔するぞ。大臣はいるかい?」
「スターク様、ソフィア様。はい大臣は奥の執務室にてお待ちです。そちらの方々もお客様ですか?」
大使館の係員の人が悠と彩音を見てそう聞いた。
「あぁ、そんなもんだ。一応アポはとってるぞ。」
「そうですか。でしたらご一緒に案内いたします。こちらです。」
係の人に案内され大臣のいる執務室の前までやってきた。
「こちらでお待ちです。それでは私はこれで。」
「おう、ありがとな。」
スタークは扉をノックして、部屋へと入っていった。
「失礼します。どうも大臣、急にすみませんね。」
「本当だ。何なのだ急に。私も暇ではないのだが・・ってなぜおまえが。」
大臣は悠に気が付いたらしく上半身を大きくのけぞらせて非常に驚いていた。
「どうもこんにちは、集合会議以来ですね大臣さん。」
「なぜお前がここにいる。東部の方はどうした。」
「何やら問題があったようで応援要請が総理のもとに届いたので急行しました。東部は優秀な部下と第2師団長に任せています。」
「問題だと?何のことだ。私は知らんぞ。」
「何をとぼけているのですか。」
悠の後ろにいた彩音が怒った様子で話した。
「デモを起こした人たちに洗いざらい聞いたのであなたが市民にでまかせを言ってデモ活動を起こさせてたことは知ってるんですよ。そのデモにせいでスターク師団長とソフィア師団長の活動が制限されたことも。」
「何を言っている。おいガキ、お前の部下だろうがどんな教育をしているんだ。勝手な憶測で私を陥れようだなんて。」
「すみません大臣さん。ですが、デモは実際に起きてますしスタークたちの活動に支障が出ているのも本当です。それに、先程彩音の言ったようにデモを起こした理由も市民の皆様からうかがっております。」
「なぜ、そんなに私を嫌うのですか。私がまだ若いからですか、それとも他に理由があるのですか?」
「そうだ!お前が気にくわないんだよ。まだガキのくせに粋がりやがって!南部はどの地域よりも早く経済回復をさせたどの地域よりも技術発展をさせてきたそれにともない師団の基地には充実した設備を設置、市街地にも完璧なほどの防衛システムの設置を行った。そんな十分な環境下で切磋琢磨しているスタークたちがこんなぽっと出のガキに負けているのなんて我慢できんのだ!どうせなにか姑息なことをしているに違いない。だから、俺はお前を認めない!」
大臣は開き直りまるで、子供が駄々をこねるような理由ばかりで明確な理由を話さず、皆イライラしていた。その時、 執務室の扉から1人の男性が入ってきた。
「なんだか、盛り上がってるな。」
「あなたは!」
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