第1章4話 合同訓練開始 ハプニング発生!

第1師団との訓練を行った日の翌日、翔がいつも通り学校に登校すると黒板に『登校したものから運動着に着替えてグラウンドに集合』とデカデカと書かれていた。


 「なんだろうこれ。昨日は何にも言ってなかったし朝一から訓練か?」


翔がそんなことを考えていた直後に悠も登校してきた。


 「翔、おはよう。相変わらず早いな。」


 「あぁおはよう。なぁ悠、これなんだろう。」


翔が黒板を指さし、悠に聞いた。


 「さぁ?わからん。朝一から訓練?でも、昨日教官は何にも言ってなかったし。それに、今日は俺たちの戦闘スタイルの発表じゃなかった?」


 「だよなぁ。まぁずっとここにいるわけにもいかないしとりあえず着替えるか。」


 「そうだな。」


翔と悠は着替えを済ませ、グランドへと向かった。そこには、普通科の生徒といつもは訓練に参加しないオペレーター科の生徒の姿があった。


 「あれ?珍しい。見て悠、普通科の人だけじゃなくてオペレーター科の人もいるな。なにすんだろうな。公開お説教?なんかやらかしたっけ?」


 「さぁ?流石にこんな公開処刑みたいなお説教はないと思うしなんにもやらかしてはないと思うけど。とりあえず指示があるまで待ってるか。」


 「だな。まぁ後で教官が説明してくれるだろ。」


翔たちがグラウンドについて十数分後に普通科とオペレーター科の生徒が全員そろった。その後、訓練担当の教官がやってきて今日の訓練内容を発表した。


 「普通科とオペレーター科のみんなおはよう。今日の訓練だがオペレーター科の実践練習もかねて、普通科とオペレーター科合同で行う。まず、普通科とオペレーター科で2人1組を組んでもらう。ペアの組み合わせはこちらで組ませて頂いた。それぞれの端末を確認してくれ。」


学校支給の端末を確認するとペアとなる相手の名前と自分と戦闘スタイルが書かれていた。さらに、普通科の生徒には1人100ポイントがついていた。


 「ペアの名前・戦闘スタイル・ポイントが書かれていることを確認したか。今日の訓練ではそのポイントを競ってもらう。大まかなルールを説明する。細かなルールはそれぞれの端末でペアと一緒に確認をしてくれ。」


教官が説明した合同訓練のルールは全部で5つ


1.フィールドは学校全域と団員・生徒以外の立ち入り禁止区域 制限時間は6時間

2.魔物想定の戦闘ロボットを倒すとポイントを獲得 獣型が6ポイント・人型が10ポイント・人獣型が50ポイント

3.他のペアと手を組むことも可能 協力して倒した場合ポイントを倒した人数で割ったポイント得る

4.近距離タイプ、中遠距離タイプの武器はフィールド内にある武器限定 訓練開始後に自ら調達すること

5.戦闘ロボットからの攻撃をまともに食らったら-10ポイント0になった地点でリタイア


 「それでは、30分後に訓練を開始する。時間内に作戦を立てオペレーター科は用意された個別のオペレーター室に行くこと。それでは解散。」


教官の合図後、皆自分のペアを探し作戦を立て始めた。翔と悠もそれぞれのペアを見つけ急いで作戦を立てる。


 「初めまして、夜岸悠です。悠でいいよ。」


 「は、はじめまして、三枝千秋さえぐさちあきです。今日はよ、よろしくお、お願いします。」


悠のペアは、青みがかった黒髪ロングに135㎝という同年代と比べて小柄で引っ込み思案な女の子だった。心なしか胸の前で握っていた手が少し震えていた。


 「あ、あの私。オペレーター科の1年の中で成績はビリなのであまり役に立てないかもしれません。」


 「大丈夫だよ、オペレーターの基礎を忘れたわけではないでしょ。だったら何とかなるよ。」


千秋は安堵の息をもらいし胸をなでおろした。かなり緊張していたのだろう。先程まで震えていた手も震えが止まっていた。


 「自己消化もこの辺にしてとりあえず、作戦を立てようか。時間がないからね。俺の考えだけど、ひとまずは誰とも組まずに行こうかなって思ってる。」


 「えっ?どうしてですか。他の誰かと組んだ方が戦闘ロボットを倒しやすいと思うんですが。それに、人獣型想定のロボットもいるって教官も言ってましたよ。なのに1人行動は悠さんが危ないんじゃ。」


 「俺ら戦闘員目線で言ったら他の人と組むのが正解。でも、今回俺らの戦闘訓練っていうよりオペレーターの実践練習のほうが割合が多いと思う。だから、ほぼ間違いなくイレギュラーが起きる。教官達はオペレーターの対応力を見たいと思うからね。仮にそうなったとき戦闘員が複数人いたら戦闘員とオペレーター、後オペレーター同士の意思疎通がとりにくいからね。その状況はできるだけ避けたい。それに、人獣型想定のロボットに会ったら無理な戦闘を避ければいいだけだから。」


 「なるほど。確かにもしもの時の柔軟な対応が重要って教官は言ってましたから、何かは起きそうですものね。」


 「そういうこと。どんなイレギュラーが起きるかは流石にわからないから通信だけじゃなくて端末の方でも連絡を取れるようにしておこう。」


 「わかりました。」


 「後2つだけ、最初に狙うのは獣型ではなくて人型にしよう。」


 「?どうしてですか。獣型は性質上基本群れだからポイントも稼ぎやすいのに。」


 「確かに獣型の戦闘能力はさほど高くないし武器を持ったら俺1人でも勝てるからポイントは稼ぎやすいけど、それは獣型だけで行動していた場合。そこに人型が混ざると獣型特有の野性的な動きじゃなくて統率された集団の動きになるから動きを予想するのがしにくくなる。だから、先に人型を処理する。そうしたらある程度動きやすくなる。」


 「わかりました。サポートします。」


 「うんお願い。何かあったら遠慮なく俺に言って。ペアの場合片方が迷って動揺するともう片方にもその動揺は伝わる。だから迷いそうになったら相談してもちろん俺もそうするし、頼らせてもう。」


 「わかりました。」


千秋は悠をまっすぐ見つめ答えた。一方、翔はペアとなった姉崎京子あねざききょうこと少し口論になっていた。


 「だから、もうちょっと具体的な作戦を立てようよ。目についたロボットから倒すだけじゃいくら何でも作戦がアバウトすぎるよ。もしもの時の対策とかさ。」


 「も~いいじゃない。翔っちがはロボットを倒しまくって何かあったらうちが臨機応変に対応するこれ以外ないでしょ。大丈夫翔っちは実技1位だったんでしょ。うちもオペレーターの実技の成績はそこそこ上の方だし何とかなるよ。それに、あんまりにあれもこれもって決めてたらイレギュラーが起きたら翔っちがテンパるでしょ。だから、その場その場で臨機応変にってことで。」


京子の楽観的な作戦に翔はかなり戸惑っていた。そうこうしているうちに訓練開始時間が近づき、放送が鳴った。

『訓練開始5分前になった。オペレーターは個別オペレーター室へ行き、普通科生徒は散らばるように』


 「それじゃあ千秋さんお願いね。」


 「はい、悠さんも頑張ってください。」


 「じゃあうちは行くね。翔っちガンガン倒しちゃって。」


 「はいはい何かあったらちゃんと言ってよ姉崎さん。」


全てのオペレーターがオペレーター室に入ったところで訓練開始時間になった。


 『それでは合同訓練始め!』


悠は合図とともに武器がありそうな近くの建物内に行こうと今にも走り出そうとした時、端末に千秋から連絡がきた。訓練中はオペレーター室から専用の通信機器で話せるため、端末に連絡が来るのはよっぽど緊急な時以外ないはずだった。


 「もしもし、千秋さんどうした。」


 「悠さんおかしいです。オペレーター室のパソコンや機器の電源が入りません。」


 「なんだって!」


 「一応端末はつながるので端末からかけました。」


悠は、イレギュラーが起きることは予想で来ていたが、イレギュラーがこんなに早く来るとは思ってなかったため驚きを隠せなかった。悠は数分間考え、機器が付かない原因として1つの可能性が浮上した。


 「千秋さん。今千秋さん達がいるオペレーター室の機械類の電力源って確か一括管理されてたよね?どこで一括管理されているかわかる?」


 「えっ?確かオペレーター科の棟の地下3階にある制御室だったと思います。」


 「地下3階の制御室ね。可能性だけどその制御室に戦闘ロボットが潜入して電力源に危害を加えているんだと思う。学校側は壊すような設定をしてないと思うから何らかの不具合を起こさせる奴だと思う。」


 「それって、その戦闘ロボットを倒さないと・・」


 「あぁ。オペレーターが機能しなくなる。千秋さん作戦変更だ。まずはそいつを叩く。俺は使える武器を拾って制御室に行くから千秋さんはオペレーター科の棟の地図と制御室までの最短ルートを送ってくれ。少し距離があるから落ち着いて。」


悠はすぐに少し離れたオペレーター科の棟のへと走っていった。

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