蝉しぐれの時

 窓の外から聞こえる蝉しぐれに目を覚ました。夏の盛りの音色。私は本棚から手帳を取り出し、昨日の出来事を書き留めようとペンを走らせた。


 雑草の生える空き地で見つけた光景。地面に描かれた奇妙な図形。

 そして、そこにあった無数の蝉の死骸。何かの意味があるのか?

 ふと、手帳の隅に見覚えのない文字が目に入った。


"蝉しぐれに隠された真実"


 私は書いていない。何故という不安に駆られ、再び空き地へ向かうことにした。

 そこで目にしたのは、昨日とはまるで違う光景だった。雑草は刈り取られ、地面には新たな図形が。

 蝉の死骸たちは姿を消し、代わりに一匹の生きた蝉が鳴いていた。


 近づくと、蝉が羽を広げ飛び立つ。その瞬間、地面に隠されていた扉が開いた。迷いながら、私は階段を下りていく。


 そこは広い地下室。壁一面の写真。私の日常を切り取ったものばかり。驚きに息を呑む私の背後で、扉が閉まる音。

 振り返ると、そこには見知らぬ老人が立っていた。


「よく来たね。君こそが、この街を救うのだよ」


 老人は微笑み、私に一冊の本を差し出した。表紙には『蝉の秘密』の文字。開くと、そこには驚くべき真実が記されていた。


 私たちの街が、実は……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ショートショート500字チャレンジ 湧澄嶺衣 @wakizumi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ